三毛田
2025-09-01 22:03:49
1081文字
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2 002. たった一つの約束事

2日目
君との約束

2 002. たった一つの約束事
『指切りげんまん、嘘ついたら針千本飲ます』
『それ、すごく痛い……
『そのくらい、約束を破って嘘をついたら大変なことになる。痛い思いをするということだ』
『破らない! 嘘つかない』
 絡めた小指と小指の上から、手をかぶせて握ると驚いたように目を丸くして。
 でも、すぐに微笑ましそうなものを見るようなまなざしを向けてくる。
『そうだな。俺も、お前との約束は破らないようにしよう』
 少しだけ大人びていた彼との約束は、だけど大人たちの手により呆気なく破られてしまい。
 俺は約束を破ってしまったことで、針を千本飲まないといけないんだと泣きじゃくった。そんなことはないと言われたけれど、信じられなくて。
 でも。それよりも。彼との約束を破ったことで、会えなくなってしまうであろう不安のほうが大きく。
 どんなになだめられても、慰められても、数時間涙が止まらなかった。
「今思うと黒歴史だ……
「突然どうした」
 机と丹恒のお腹との間に体をねじ込み、寝転がって漫画を読んでいた俺は、ふと幼少期のことを思い出して苦い顔になる。
「あー……そこ。ん。気持ちいい……
 爪を立てないように、優しく指先が頭皮を揉む。
 俺を見下ろす丹恒の視線は甘やかで、俺の胸に愛しさが広がっていく。
 紆余曲折あり、大人の事情で一度別れてしまった俺たちは、高校生になって再会した。
 再会したことで、愛しさと恋しさが爆発し。
『丹恒! 恋人になって!!』
 保護者達がバチバチに火花を散らしている横で、俺は彼に告白していた。
 それはもう、食い気味に。
 困惑したように、差し出した手を見る丹恒。
 若いわね。と呟くカフカ。ちょっと呆れていた姫子。
 何ともカオスな空間が出来上がったのだった。
『よ、よろしく頼む』
 戸惑いの強い色を宿した瞳のまま、ほんのり頬を赤く染め。
 だけど、嬉しそうに。
 そうして俺と丹恒は恋人になった。
「それで、さっきの台詞の意味は?」
「ほら。幼少期に指切りしたことがあっただろ?」
「あったか?」
「あった、あった。ずっと一緒に居ようって約束したのに、お互い引っ越すからって、約束を破ることになるって気づいてビービー泣いたんだよ」
「その時のお前を見たかったな」
「趣味が悪い!」
 頬を膨らませると、クスクス笑って。それから、優しくその頬を撫でてくれる。
「俺も……実は、静かに泣いた」
「そ、そうなんだ」
 丹恒の泣き顔、見たかったな。と口にしてしまいそうになって、それを誤魔化すようにどもってしまう。