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望月 鏡翠
2025-09-01 14:38:17
885文字
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日課
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#1828 「ほうれん草」「物語」「龍」
#毎日最低800文字のSSを書く
大好きな昔話がある。
おばあちゃんは私がいる時にだけ、よくその話をしてくれた。
温かい暖炉は、手入れを人に頼まないといけなくて、手間がかかると言っているのに、いつまで経っても使っていた。その薪や燃える匂いが大好きだった。古くて遠くていろんなものが不便な家に好んで遊びにくる親族は私だけだった。
だから映画の中に登場するような素敵な家を独り占めすることができたのだ。
晩御飯の定番はほうれん草とベーコンのキッシュ。ベーコンを炒めるときからいい香りがしていた。とろっとしたほうれん草とバターのいい香り。ふわふわの卵。
私はそれらが大好きだったから、子供が嫌いそうな野菜のことが昔から苦手じゃなかった。おひたしとかはあんまり好きじゃなかったけど、バターで炒めてキッシュに入っているのは美味しい。
ベーコンを炒めてから焼き上がるまでの間、私はずっと台所でおばあちゃんの周りをまだかまだかとうろついていた。完成したら、二人きりの晩ごはんが始まる。
そしておばあちゃんは、昔に体験した色んな冒険を物語にして聞かせてくれるのだ。私のおばあちゃんは冒険家だった。世界を股に掛けて色々なところを飛び回り、誰も見たことをないものを見て、発見してきた。
巨人の住む島。龍のいる山。地底の国。そういうところの大冒険。そのときに培ってきた体力が、あるから今もおばあちゃんをこんなに元気だ。でも顔に残る傷跡や片足がないところなんかは、やっぱり見るとびっくりする。
いつか自分でも旅に出てみたいけれど、きっとお父さんとお母さんは反対するに違いない。もしかしたら死んでしまうかもしれない旅なのだからと、おばあちゃんもおすすめはしてこない。でも冒険の日々はすごく楽しかったと、その語り口や表情が物語っているのだ。
私は特に、伝説の生き物が登場するお話が大好きだった。
この世界にはまだ不思議なものがあり、それに実際に触れた人がいる。その話を聞く度に心は温かい暖炉のあるリビングから、遠い遠い知らない国へと飛んでいく。
いつかきっと、私は物語の中に飛び出していくのだろう。
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