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yn
2025-09-01 11:05:27
1490文字
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movie100
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059:御冗談でショ
映画タイトル100題で再録。
昔書いた拳コユ。
背中を丸めて自動ドアをくぐる。口布の下で詰めていた息を吐いた。
早く閉まれとのろまなガラス戸に舌打ちしつつ、空いている洗濯機の前に年季の入った籠を置いた。千円札を両替機に食わせて小銭を作り、ポイポイと洗濯機の中へ着替えを放り込む。籠の底に残った布袋から、あらかじめ下着を仕込んでおいた洗濯ネットを取り出す。勝手に触ったことがバレたら怒られるかもしれないが、今は考えないようにした。こちらは放り込まずにそっと中へ。
慣れた手順でボタンを設定して、ゴウンゴウンと回り始めた低い音を聞きながらラックに刺さった新聞を手に取った。
ビニール張りの椅子に座り、既に誰かが読んだ皺が走る紙面を斜め読みする。
今年の有馬は順当だった。やっぱり一番人気は伊達じゃない。大穴狙いは外したが、これでもキッチリ三連複をいただいた。大儲けとは行かずとも、トリガミもなくちょっぴり黒字。文句はない。
トオルは浅く広く買って微妙にトリガミしてたなあと思い出して笑う。
足を組み替えると、尻ポケットに入れていたソフトケースがくしゃりと歪む感触があった。煙草が吸いたい。灰皿を探すが、銀の円筒は無慈悲にも外に鎮座していた。温められた室内から出る気力はなく、唇を尖らせて深く尻を落ち着ける。ぎし、と椅子が悲鳴をあげた。
同時に、煙草とは逆の尻ポケットに突っ込んでいたスマートフォンが震えたので、取り出して画面を見ずに通話ボタンを押す。
「ハイよ」
『今どこですか?』
間髪入れずに聞こえた小さな声に苦笑する。新聞をまた一つめくり、次のレースの注目馬の項に目をやった。
「コインランドリー。ライン入れといたろ?」
『えっ』
次いで、声と吐息がが少し遠くなる。数秒待つと、居た堪れなさそうな声が見てませんでしたと呟いた。
そんなことだろうと思ってはいた。
布団の中で健やかな寝息を立てる娘には、一応声をかけたのだ。それでもむにゃむにゃ言うだけであったので、ラインを入れてから出てきた。帰りの見込み時間もきちんと送っておいたはず。
大方目が覚めたら誰もいないものだから慌てて連絡してきたのだろう。様子が目に浮かぶ。
慌てず騒がず、体を捻って洗濯機を見る。乾燥が終わるまであと三十分ほどかかるだろう。
「まだかかるぞ。帰りになんか買って帰ってやるから、いい子にしてな」
『お洗濯なんて、別に今じゃなくたって』
「お前さんがタオルをああも沢山使わなきゃあ別に」
『ヤダ!』
あなた外にいるんでしょう、と言外に嗜められる。喉の奥で笑うと、不満そうな呻きが聞こえてきた。
スピーカーからはかすかに風の音がする。寒いだろうに、窓を開けているのか。
「帰りコンビニ寄るよ。何がほしい?」
『そうですねえ
……
』
「ダッツ買おうか、期間限定のがあったろ?」
話しながら、目ぼしい記事を全て読み切った新聞をたたんだ。椅子から立ち上がり、皺の増えた新聞をラックへ放り込む。
はてさて、あと三十分、どうしようか。上の弟曰く犬小屋のような狭さのオンボロワンルームアパートの畳の上で待つ娘と通話をしていても構わないが、疲弊した上に寝起きの体では辛かろう。
ちゃんと帰るからオネンネして待ってなさい。そう言いかけたところで、自動ドアが開く音がした。
〝ねえ、雪見だいふくにしましょ、ケンさん〟
「
……
お、おま」
〝二人で一つずつ、なかよくわけっこ。きっととっても美味しいですよ〟
絶句するケンに気づいていないらしい。
娘は乱れた髪の毛と呼吸を整えながら、未だ腫れぼったい目でにっこり笑った。
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