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Hizuki
2025-08-31 23:16:52
1937文字
Public
あんスタ[零薫他]
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ちいさな嫉妬のお返しに
【あんスタ】零薫。ささやかなとあることに嫉妬する零の話。近い意味でも言葉が違えば。
前半のソロでの撮影を終えて、戻ってきた楽屋には誰もいなかった。どうやら俺の方が早かったらしい。後半はペアで、と聞いていて、相談したいこともあるから、ひとまずその相手を待つことにする。ソファに座ってSNSにざっと目を通していると、楽屋のドアが開く音がした。
「
…
昨日、天城くんと何を話しておったんじゃ」
背後からぬっと伸びてきた手が俺の胸の前で組まれたかと思うと、のしっと背中から体重をかけられる。絶対に外向きでは表に出さない、明らかに不機嫌を纏った低い声が耳元で聞こえた。入りの時間も微妙にずれていて、今日顔を合わせるのは今が初めてのこと。挨拶も抜きにその言葉が出てきたことに、思わずくすりと笑ってしまった。
「
…
薫くん」
名前を呼ぶ声が俺に答えを急かしている。さっき零くんの口から出た名前から不機嫌な理由は察している。昨日たまたま会った天城さんと少し話をしていた。その様をたまたまどこかから零くんが見かけていた、ということだ。まさかこんな分かりやすい反応をされるなんて思わなかった。要は、嫉妬だ。俺と天城さんが話しているのを見て、もやもやとしていた、と。
「え〜?最近うちの零くんがお世話になってます〜って話してただけだよ?」
手にしていたスマートフォンを置き、笑み混じりに零くんの問いに答える。本当にどうということはない、ただの世間話だった。天城さんから呼び止められて話しただけ。
お酒が解禁されてから、ちょこちょこ彼と飲みに行っていることは知っている。最近はそこに三毛縞くんも混じっているとか何とか。何せ零くんの方から先に連絡をくれるのだ。それは俺に余計な心配をかけないように気遣ってくれているのだと理解している。そもそも零くんが誰と飲みに行くのも自由だし、特に気にしてはいない。相手が分かっているなら、なおさら気にする必要もないのだから。
…
トラブルに巻き込まれないか、ということだけはちょっぴり気にしているけれど。
「
…
そうかえ」
話を聞いて気持ちも落ち着いたのか、零くんは手を俺の前から解いた。まだ若干不満げではあるけれど、一応は納得してくれたらしい。かけられていた重みが消えたかと思うと、今度は俺の隣にぼすんと座った。
「ところで薫くんや」
「ん?」
話題を切り替えるように呼んだ俺の名は、いつも通りのトーンだった。
「さっき何と言ったかのう?」
「お世話になってます、って話?」
…
いや、いつも通りじゃない。
どことなく嬉しそうな声で尋ねられたことに首を傾げる。大体さっきのやりとりが今日初めての会話で、何か零くんが気になることを言った覚えはない。
「いいや、その前じゃよ」
零くんは首を振って俺の答えを否定する。もちろんそれが零くんに引っかかるとは思っていないし、改めて自分の言葉を思い返した。
…
もしかして。
「
…
うちの零くんが?」
はっきりと答えはしなかったものの、どうやらこれが当たりらしい。嬉しそうに目を伏せて零くんが頷いている。『同じユニットの』という意味合いで言っただけではあるのだけれど、それなら『うちのリーダーが』でも問題はなかったわけだ。
「
…
ふふふ。いい響きじゃのう」
おまけに『うちの零くん』というワードが相当お気に召したようだ。それを見て、一度立ち上がると零くんが座っているすぐ側に片膝をついた。そして、顔の輪郭に手を添わせて、額を合わせる。
「
…
『俺の零くん』の方がよかった?」
「えっ!?」
そう問いかければ零くんの目が大きく見開かれた。赤い瞳には俺しか映っていない。何も言わないまま、ただ目を瞬かせている。
「あはは!な~んてね」
大抵のことでは動じない朔間零が、俺の一言でこんなにも動揺している。多分これが逆の立場だったのなら、きっと『我輩の薫くんが』と言っていたのだろう。しかも自慢げに。
「
…
薫くん、それはズルくないかえ
…
」
「ふふ、いつものお返しだよ」
絞り出すような小さな声で零くんが言った。口元を覆って視線を俺から反対の方に向けている。顔を見られたくないらしい。白い肌がほんのりと赤く染まっているのが見える。零くんの世間のイメージとしては大体『格好いい』が最初に出てくるだろうけれど、かわいいところも結構ある。ライブ以外の場所で見られるのはほんの一部。それ以上のものをみんなは『知らない』だけで。
めったにない珍しい姿が見られたことに満足して、元の場所に戻った。外でこんなことは言えないけれど、二人きりなら話は別。いつもは俺の方が零くんに翻弄されているけれど、たまにはこんな日があってもいいよね、なんて思いながら、テーブルの上のペットボトルを手に取った。
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