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匣舟
2025-08-31 20:38:34
3236文字
Public
RKRN
昊の透く硝子
ワードパレットリクエストにて頂きました綾乱です。
夏でも穴掘りに勤しむ綾に休憩を促す乱の話です。
リクエストくださってありがとうございました🫶
ワードパレットリクエストこれにて完です!
夏の太陽が容赦なくギラギラと照りつける中、青空には夏の風物詩である白い入道雲が浮かび上がり、汗ばんだ肌に熱い陽射しが容赦なく降り注いでいる。蝉のミーンミーンという大合唱が聞こえる中、四年い組の天才トラパーである綾部喜八郎は日課である穴掘りに勤しんでいた。
「喜八郎せんぱあ〜い、そろそろ休憩しましょうよ〜。」
喜八郎が堀った穴の上から覗いたのは、一年は組の保健委員で喜八郎の恋人である猪名寺乱太郎だ。
夏の時期になると、いつもこうして熱中症予防のためにということで保健委員が忍たまたちがちゃんと水分を取っているかを確認するために見回りをしている事がある。
その見回りでいつも喜八郎を確認しているのはいつも喜八郎の恋人である乱太郎だった。乱太郎の掛け声にはぁ〜い。と気の抜けた声を返しながら、じりじりと照りつける太陽を少し睨んで汗で顔にへばりついた髪を拭って喜八郎は穴の中でうんと背伸びをする。そして自分が無我夢中で掘った穴の高さを見上げる。
「
…
だいぶ掘ったな
……
。」
あともうちょっと掘りたかったなあ。と上を見つめると、喜八郎のかわいい恋人が自分を見つめていた。
「喜八郎せんぱーい、はやく〜!」
「
…
はいはい。」
いつものようにおそらく用具委員会から借りてきたであろう縄梯子を喜八郎がいる穴に下ろした乱太郎。
まだ穴掘りをしていたかったけれど、恋人の乱太郎に言われたので渋々穴から抜け出すと、喜八郎の目に飛び込んで来たのは広大な青空だった。穴から顔を出したまま涼し気な風を感じながら遥か彼方にある太陽を眺めていると、乱太郎が水の入った竹筒を渡してきた。
「はい、お水です。」
「
……
ありがとう。」
喜八郎は乱太郎から受け取った竹筒に口を付けてゴクゴクと水を飲む。冷たい水が喉を通っていくのが心地いい。
「せんぱい、少し日に焼けたんじゃないですか?」
「
……
そうかな。」
乱太郎に言われて喜八郎は腕や足を見る。確かに連日外に出て穴掘りに勤しんでいたためかいつもより肌が焼けている気がする。
「はい。」
「
……
乱太郎も日に焼けたんじゃない?ほら、こことか、ここも。」
放課後いつもきり丸やしんベヱをはじめとしたは組のよい子たちと元気で外に遊びに行く乱太郎だから、まじまじと乱太郎を見つめると喜八郎より焼けている。
喜八郎は自分が日焼けしたのと同じ場所を指でつついた。首や手そして顔など。すると乱太郎は顔を真っ赤に染めて、もうっ!と喜八郎の肩を軽く叩いた。
そんな恋人が可愛いくて、思わず顔がにやけてしまう。なんだかにやけている顔を乱太郎に見られたくなくて喜八郎は俯く。すると乱太郎が不思議そうな顔をして喜八郎の顔を覗き込んできた。
「喜八郎先輩?
…
どうしました?疲れましたか?も、もしかして体調悪いですか?」
「ううん、なんでもなあーい。」
「本当に
…
?なにか隠してません
…
?」
「
……
大丈夫。ちょっと乱太郎のこと好きすぎて困ってるだけ」
「へっ?!」
喜八郎の口から出た突然のあまーい告白に顔を茹でダコのように真っ赤にして口をパクパクとさせる乱太郎。その姿を見て愛おしくなり優しく抱き寄せた。そして耳元で囁くように呟く。
「
…
ほんとにきみはかわいいねぇ、」
「ひうっ
…
!」
乱太郎は恥ずかしさのあまり黙って喜八郎に寄り添っていた。真っ赤に染まった顔を見られたくなかったからだ。普段は淡白で表情にも表れない喜八郎だが、時折こうやって自分への愛を口に出してくれる瞬間がある。
それは突然訪れるものなので恋人になった今も未だ慣れることができないけれど、喜八郎からの愛を感じることが出来るこの瞬間が乱太郎はだいすきだった。喜八郎から来る愛情に応えたくて、乱太郎は喜八郎の背中に腕を回した。
そしてふと、ぱちぱち、と目を開けると視界に入った喜八郎の汗をかいた髪がきらきらと眩しいくらいに光っているのが目に映った。
それを見た瞬間、乱太郎は喜八郎の髪がとても美しく見えて、しばらく見惚れていた。すると喜八郎が口を開く。
「
…
どうしたの?なんかぼーとしてるけど
…
。」
ねぇ、乱太郎の方が体調悪いんじゃないの?大丈夫?と乱太郎の額に手を当てる喜八郎。さっきまで穴掘りをしていたはずなのに彼のひんやりとしていて、ひんやりとした掌が気持ちいい。乱太郎は顔を赤らめながら、喜八郎の質問に答えた。
「
…
えっと、喜八郎先輩の髪の毛が太陽に反射してきらきらしてたので
…
綺麗だなぁって!」
ニコリと満面の笑みを浮かべながら言う乱太郎に今度は喜八郎の方が照れてしまったようだ。乱太郎から少し目線を逸らした喜八郎はぽつりと言葉をこぼした。
「
…
ふぅん、じゃあもっと近くで見てもいいよ?」
喜八郎のその言葉に乱太郎はぱあっと向日葵が咲いたような笑顔を見せて勢いよく飛びついた。その衝撃で喜八郎は尻もちをつく。
「いたた
…
もう、しょうがないなぁ。」
「へへ
…
。」
喜八郎が尻もちを付いて呆れているのにも関わらず乱太郎は喜八郎の頭を抱きしめて優しく撫でる。そしてそのまま首筋や頬にも触れていく。喜八郎は黙ってされるがままになっていた。乱太郎がひとしきり堪能すると喜八郎は少し拗ねたように言った。
「
……
それだけで満足なの?」
「
…
っえ?」
キョトンとする乱太郎に喜八郎はため息を一つ吐いたあと真剣な眼差しで乱太郎の瞳を見つめる。そしてゆっくりと唇を重ねた。一瞬何が起こったのか理解できなかったが徐々に状況を把握していくにつれて乱太郎の顔は再びゆで蛸のようになった。
そんな初々しい反応をする乱太郎を喜八郎は愛おしそうに見つめてもう一度口付けをする。何度も繰り返される甘いキスに夢中になっているうちに乱太郎の思考は蕩けていった。
「ねぇ、乱太郎。」
「
……
なんですかぁ
……
?」
「僕のこと好き?」
「もちろん
…
すきで、だいすきです〜。」
「ふふっ、そっかぁ。良かった。」
喜八郎は嬉しそうに微笑んで乱太郎を抱きしめた。先輩、もう穴掘りはしなくていいんですか?と乱太郎が喜八郎に問いかける。すると彼はその質問にキョトンとしつつもふわりと笑って当たり前のように答えた。
「うん、穴掘りもいいけど
…
」
「
…
いいけど?」
「きみとの時間も大切だし
…
、それにね、暑いから穴掘りはもうやめる。」
あと、それに今更乱太郎も僕から離れちゃいやでしょ?なんて喜八郎が意地悪そうに言ってきたので乱太郎はまた顔を赤らめながら喜八郎に抱きついた。
「
…
やです。先輩とずうっと一緒にいたいです。」
乱太郎の答えに喜八郎は満足げに笑ったあと乱太郎の頭を撫でてやった。まるで猫みたいだと思ったのだ。乱太郎は気持ち良さそうに目を細めて喜八郎の手を受け入れている。喜八郎はそんな乱太郎を見て思わず吹き出してしまった。
「
…
なに笑ってるんですかぁ
……
。」
「だって
……
乱太郎が可愛いすぎるのがいけないんだよ?」
「むぅ
……
。」
頬を膨らませて怒るポーズをとるものの全く怖くはない。寧ろ可愛さ倍増しているように見える。喜八郎はクスクスと笑いながら乱太郎の顎に手を添えて、くいっと自分の方に向かせる。そしてそのまま再び唇を重ねた。
「
…
日が落ちるまでここにいようか?」
「
…
はいっ!」
「嬉しそうだね
…
?」
「
…
だって喜八郎さんを独り占めできるから!」
喜八郎の言葉に乱太郎は満面の笑みで答えた。その笑顔があまりにも眩しくて直視できないほどだ。喜八郎は思わず眩しそうに目を細めて乱太郎の頭を優しく撫でる。
「
…
おやまぁ、嬉しいことを言ってくれるね。」
喜八郎は乱太郎をぎゅっと抱き寄せて胸に顔を埋めた。乱太郎も喜八郎を抱きしめ返してふたりでくすくす笑い合う。そのまましばらくふたりは誰にも邪魔されることなく、幸せな時間を過ごしたのだった。
ワード:思わず・眩しいくらい・きらきら
了
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