ortensia
2025-08-31 20:14:30
8377文字
Public 傭リ
 

傭がまたむかで食ってる(もしくは食われてる)傭リ。現パロ。

飢界ってホラゲが気持ち悪くて良かったと思います(←)※アプデ前のリリース当初では懐中電灯なかったみたいです。
災害の話ではあんまりありませんが避難所と言う言葉が出て来たりします。
ゲームで出て来るのは「ムカデ」ではあんまりないです。

 仕事が終わって帰ろうと思い、地下駐車場に来た。
 しかし自分が車を停めたのは地下駐車場ではなかったはずだった。
 奇怪だ。
 辺りを見回す前に、端末がけたたましく鳴り上がる。アラーム音だが、設定した覚えはない。
 画面のアラーム通知の内容は「タイムアップ!」とあって焦りを覚えるが、思い当たることもない。ただ虚構な焦りだけがこの身にある。
 その合間に別の通知が入る。
 一瞬だが、保護に関する情報「怪異の発生に注意。絶対に空を見ないこと。2020/08/07」とバナーが下りた。今日の日付はいつだったか。
 そう思うも考える間もなく直ぐにまた別の音を端末が上げた。今度は電話着信で、発信者は。
「ようこ、そ……?」
 思わず端末を取り落とした。
 どうしてか画面がが乱れて判別しづらいが、そう読めた。当然そんな名前で登録している知人はいない。名前と言うならば「YOUKO」と言う人名かとも思ったが、おそらく「YOUKOSO」だ。発信者名としては巫山戯たものである。
「ここは……どこだ……?」
 気味が悪く、また、どういうわけか必要だとも思えず、落としたそのまま置いて行く。
 それよりも、何故か持って来ていた懐中電灯が幸い役立つ。
 仕事終わりの空腹が、腹の音を低く鳴らす。
 この場は薄暗く、剥き出しのコンクリートの壁に描かれた各階が「空」と「満」の表記に分かれている。それに駐車料金の表記。
 駐車料金表示がおかしい。基本料金の深夜帯が30£50£、それ以外が10£50£、どういうことだ。時間表記がない。
 どうもおかしい。細い通路や階段などを見付けたものの、あちこち懐中電灯で照らしながらフロアを進んでいると、シャッターが下ろされたりしていてどこかで行き止まりに行き当たってしまう。
 うろうろしながら照らした壁の案内も、文字化けしていて現実味がない。その壁の向こうから何かざわめく声のような、逆に無機質な機械音のようなものが聞こえる気がするが、人の気配は感じられない。兎に角煩わしく感じた。気味の悪い所だ。
 別の壁での満車空車表記は文字化けを起こしていた。4F満が一番下で、その上が空F、貌、顔がなんだと言うのか、良く分からない、腹なら空いているが。文字の大きさもばらけて、コンクリートの壁なのに、歪んだ水面を見ているようだ。
 そして自動車駐車場に、何故か三輪車が置いてある。
「三輪車も駐車して良いですよね」
「え?」
 何か聞こえた気がする。
 たまに聞こえていたざわめきとは別の。しかしまたざわめきが耳に届き、有耶無耶になってしまう。
 とにかく、三角パイロンとそれに囲まれた三輪車、それしかない場所から離れる。
 電灯の光が届かない細い通路には、何故か懐中電灯の光も通らない。消火栓の赤い光だけが頼りのない頼りだ。
 細くて暗い道、広くて明るい道、かと思えば突然に勝手に点く電灯。
 それからたまに落ちてる細長い虫。こんな人っ子一人いない不気味な場所でも、蠢いて生きている命を、通りすがりに見下ろした。
 そのまま壁伝いに進んで、雨漏りのせいか、わきに置いてあるバケツを避ける。
 並んだ三角パイロン、倒れた三角パイロン。
 それからも進んで行くと、ぽつんと壁に設置されたレバーが、わざわざ明かりを向けずとも目立つような気がするくらい、一等奇妙にそこにあった。
 そのレバーに手を伸ばし、ごとりと下ろしてみる。
「おめでとうございます!」
「は?」
 何か言われた気がした。パソコンのポップアップウインドウが軽快な音を立てるような気安さで、奇妙でバグったようなアイコンがデータ軽めの拡張子で動いているような軽快さで。
 しかし直ぐに金属が響くような嫌な音がこだまして、それもどうでも良くなった。どこかの重苦しい扉でも開いたようなそれだった。
 だったら。
 下げたレバーの上、三つある内の一つに点灯したグリーンランプ。残り二つは元の赤いままだった。あと二つ。
 暗号機の解読だとか、手の込んだ機械操作でなくて良かった。そう思いながら他のレバーを壁伝いに探す。
……腹減ったな。」
 自分の腹の音のほうが、機械音のように唸っている。
 細い通路を進み、階段に足を掛け、二つ目のレバーを探す。剥き出しの階段の金属質な音。色のない世界。
 別の階でも料金表があったが、全体的にめちゃくちゃになっていて判読出来ないものとなっていた。
 今まで歩いて見た時には閉まっていたシャッターが開いている。そこを抜けて遠目にあれだろうかと思ったところで、何かいる。
 咄嗟に曲がり角に身を潜めた。
 レバーを見付けたと思った通路の突き当たりの、その壁に細く蠢く何本もの脚を影に見た。
「虫?」
 なんだ、あれ。
 恐る恐るもう一度覗き込むと、影も脚もなくなっていた。
 一先ずほっとして、しかし慎重に通路を進む。
 脚が見えた側の曲がり角ぎりぎりまで進んだところで、角の向こうを覗き込む。
 何もいない。
 漸くレバーに手を伸ばす。これで二つ目。あと一つだ。
 そのはずだった。
 耳の直ぐそばで鳴り上がる咆哮。背の高い、蠢く無数の脚。大きく開いたその口の中には、90°回転した人の目の瞬き、色のない世界よりも鮮やかな赤、それを最期の光景として、目が合った。
「暫くそのままでお待ちください?削除しますから。」
「削除……?」
「あなたが削除?あなたを削除?」
「は……?」
「わたしを見る時は部屋を明るくして崇目から離れて見てくださいね?」
「は?」
 全く想定外の事態に遭い、気付いたら、捨て置いた筈の端末が、目の前のコンクリートの床に落ちていた。
「は?」
 この駐車場に最初に気付いた場所にいた。
 腹が減ったと思っていたら自分が食われて、なのに元の場所に戻された。
 取り敢えず一つ目のレバーの場所に行くと、そのレバーは上がっていたので、それを下ろす。緑のランプの点灯は一つだけ、残り二つは赤い。
 しかし二つ目のレバーへの道を塞いでいたシャッターがこれで開いた。
 つまりまた二つ目のレバーの場所、自分が食われた場所に行かねばならない。
 敵がいると分かった以上、それに対応する警戒心を備えながら、また道を辿る。
 最初にあの何本もの脚を見掛けたところでは、その姿はなかった。
 先程よりも更に警戒を強めて進む。
 今度は遭遇せずに、二つ目のレバーに手を掛けることが出来た。
 下ろすとやはり一つの赤い色が緑に変わり、二つのランプが緑に点る。
 そして三つ目のレバーだが、この先に進めばまたアレに遭遇する可能性がある。いや、道を戻ったところでそれは同じだ。
「腹、減った……。」
 空腹に適当に手を突いた壁の方向へ進んでみることにする。
 先の通路には分かれ道もあり、レバーが見つからなければ後戻りすることも繰り返しながら足を進める。空腹のせいか、視界の色の判別がどんどんしづらくなっているような気がする。
 段ボール箱がわざと無造作に積まれたような、気にし過ぎかもしれないが、気味の悪さを感じるわきを通って、通路を進んで行く。
 途中、蒸気が出ていて熱くて通れないところがあったが、それよりも進んで行くと、赤いバルブがあった。それを回す。
 しかし蒸気が止まる様子はない。バルブも三つなのだろうか。
 考えていると、視界の端で蠢く脚。
 全力で通路を走って角を曲がって、走って、曲がって、通り掛かりにバルブがあった、力を込めて回転させながら走る。撒けた。
 そこは蒸気が出ていた場所に近かったはずだ。だが蒸気の噴き出る音がしない。その方向に向かってみると、蒸気は止まっていた。回すバルブは二つで良かったらしい。
 蒸気が熱くて通れなかった通路の先には、レバーがあった。
 それを下ろして、緑のランプを三つとも点灯させる。
「おめでとうございます!」
「は?」
「進捗を保存しました。」
「なんだって……?」
 また幻聴のような、パソコンのポップアップの幻覚のような。蠢く脚のアイコンが。
 しかし視界の横っ面を殴り付けるような明るい光が差し込んで、どうでも良くなった。
「非常口……
 そちらを見ると、非常口表示がぶら下がった扉が大口を開けていた。出口か。
 扉をくぐって出た場所は、駐車場とはがらりと変わった所だったが、駐車場の外と言う感じでもなかった。
 床や壁紙の感じと、それから近くにソファが並んでいる。壁に張られた案内図を見るに、ホテルのようだ。
 しかし案内図は図がめちゃくちゃで文字化けもしているため、利用するには不便そうだ。
 ソファの並んだ壁に、駐車場で見たレバーがあったので、同じように下ろす。やはり緑のランプが一つ点く。
 ここでもレバーを探して行く。
 それにしても腹が減った。
 空腹をなんとか宥められないかと思いながら足を進める。
 そこで気になるものを見た。
 奇妙なもの。
 いや、それが何か分かる。肉だ。
 生肉だが、テーブルの上に皿に盛り付けられている。
「食べますか?」
……え。」
「食べますか?」
……食べ」
 生肉が一番だ!
 ホテル内を彷徨うと、駐車場よりも施設内の告知が多いことに気付く。スタッフの巡回、しかしどこか熱でインクが溶けたように垂れている。それから子供の飛び出し注意、放置禁止、指定避難所。
 ここに子供の飛び出し注意を警告する張り紙があるのも違和感はあるが、指定避難所。このホテルは避難所の役割も担っているらしい。しかし、崇災時指定避難所とある。ここはタタリの際、ひなん場所になります。とある。けれど駐車場で遭遇したアレと似たものにはもう遭わないと楽観視することが、どうにも出来なかった。
 それと、怖いものを放置しないで。物品放置の警告。発生源となります、見付けた場合すぐに係員にお知らせください。なんの発生源になるっていうんだ。そもそも劣化した告知だが、読めない部分がそこだった。
 分からないものは仕方がないが、警戒心を拭えないまま、拭わないままに進む。
 それでも空腹を忘れることは出来ない。
……はあ、腹が空く。」
 ホテルの割に、駐車のように薄暗い。それとも自分の視覚がおかしくなってしまったのか、判断が付かない。それに虫もいる。そこも駐車場と同じ。蠢く細長い虫。
 通り過ぎて先を進む。
 豪奢な模様の壁紙であるはずだが、どうにも味気なく無機質に見える。ホテルでそんなはずないと思うのに、色味を覚えない。
 そして、いた。
 また。
 先の曲がり角から体が覗いている。
 体というより眼球が。
 眼球が幾つも突出してぼこぼことくっ付いている巨大な体、耳。
 しかしこれで気付かれなかったらしい。
 アレは曲がり角の向こうの通路に消えて行った。
 体の背後から伸びた胴体のようなものは、不気味ににょろりとして、脳幹を思い起こさせた。
 息を潜めて先に進む。
 駐車場の時のように階段に行き当たった。おかしなことに、階段の裏側までホテルの壁紙の、奇妙な模様が続いていて、気味が悪かった。
 階段を昇ると、警報器のけたたましい音が、上階に響いていた。
 煙もある。駐車場と違い蒸気ではないようで、熱くはないが、つまりバルブでどうこう出来るものでもないということだ。
 駐車場と違って消火栓や消化器の類いは、ホテルでは見なかった。けれどここは避難所であるとの表記は見た。なのにアレはいる。
 アレから避難することも出来ず、警報器がそれのせいで鳴っているのかも分からず。そしてアレ以外の火災か何か別の原因なら、それから逃れるために、避難所から避難しなければならないというおかしな話になる。
 煙で視界が悪い。
 無用な消耗で、空腹に拍車が掛かるように感じた。
 しかしなんとか壁に沿って進み、煙を抜けて警報音から離れた所に辿り着くと、二つ目のレバーを見付けることが出来た。
 階段を降りる。
 廊下の床に敷かれた絨毯の仕様が変わった。吸水性の高いマットのようだった。
 その先を進むとタイル張りの床に変わり、手摺が水中に続いていた。階段があるようだ。しかし水が張っていて進むことは出来ない。
 近くに青いバルブがあった。
 回してみるが、排水される様子はない。駐車場の蒸気のバルブのように、もう一つ青いバルブがあるのだと思う。
 水に濡れた床を進み、散策する。
 事務ロッカーがお行儀良く並んでいるかと思えば、迷路のように何故か惑わすように配置されているのが煩わしかった。
 しかし食べ物があった。
 今迄の見るからに生肉ではない。きちんと調理された皿だ。
 いや、そう見えているだけなのかもしれない。
 なんなのだろうかこれは。
「食べますか?」
 なんでも良い。
 腹が減った。
 食べると視界がジャミングしたみたいにノイズのようなものが見えるが、それよりも彩りが蘇るように視野が広がるから気にならない。そんなことどうでもいい。腹を満たせれば。
 しかしさっきから満たされる感覚に成って来ない。
 兎に角進む。
 二つ目のバルブを見付けた。
 回す。
 階段の場所まで戻る。
 咆哮。
 アレが来た。
 幾つもの大きな口が、歯が、迫って来る。
 急いで階段を駆け降りる。
 我武者羅に走っていると、アレを撒くことが出来た。そのまま進む。慎重に。
 しかし警戒心を弛めるように空腹感が襲って来る。アレだけでなく、自分の感覚からも襲われて食われてしまいそうだと思った。食いたいのはこっちなのに。
 だが先を進んでレバーがあったのは僥倖だった。
 レバーを下ろす。
 三つの赤いランプが三つとも緑に変わった。
「おめでとうございます!」
……なんなんだよ」
「進捗を保存しました。」
……保存って、どこに?」
 ポップなサウンドエフェクト。軽快なドット絵、なんだかそのイラストイメージが、駐車場で浮かんだそれと異なるもののような気がした。よくよく思い出すと、駐車場でのドット絵は駐車場で現れたアレ、今出たポップアップのものはこのホテルで見たアレの姿に似ている気がする。バグみたいな幻覚のイメージと荒いデータのドット絵では、定かなことは何も言えないが。
 兎に角戻ってタイルの階段を昇る。
 降りる時は追われていて気付かなかったが、浴用と思われるボトルが一つ落ちていた。皆底に沈んでいたものが、排水によってぽつんと顔を出したのだろう。
 タイル張りから絨毯の床に戻る。
 その先は行き止まりだったので来た道を戻る。振り返る気も起きない程、なんだか進む意欲が漲り足取りが軽い。
 道を戻った先、このホテルで最初に見た光景の場所の近くまで戻ったが、不思議と疲労は感じない。そこで、飛び出し注意看板のイラストが異常なキャラクターに変わっていた。
 顔に目が増えて、耳が肥大化していた。
 なんとなくアレの姿に似ている気がする。
 そこから目を逸らした先の通路を進む。
 非常口。
 開いている。
 明るく先の見えない非常口をくぐった。
 ホテルの外のはずが、どこかのオフィスフロアに出た。
 だがここも例に漏れず暗かった。
 それでももう直ぐ出られる気が、なんの根拠もなく、漠然とした。
 しかし空腹だ。
 空腹のために、レバーを探す。ここから出たい。
 オフィスらしく事務机が並び、その上にパソコンも並んでいる。
 それを辿るように進んで行く。
 するとレバーより先に肉を見付けた。オフィス机に似合わない組み合わせの調理皿。
「食べますか?」
……腹が減った。」
「美味しいですか?」
 それにはなんとも答えられなかった。どうやら味なんか気にしていられないほど、自分は空腹らしい。
 そして事務机とパソコンの群れを抜け、オフィスの通路を進む。リノリウムの床。
 通路を進み、曲がり、また進み。飢えを感じながらもながらも進んだ先にレバーを見付けた。
 下ろして引き続き最後のレバーを探しに行く。
 先ずは一つ目、まだ一つ目。
 次の通路を進む。
 蛇口のあるタイル張りの空間。
 節水を促す告知。
 調理皿。
「食べますか?」
「腹が、減った……。」
 食べている間に、自分が食べているもの不躾なは生肉なんかではなく、上等にきちんと調理されたもののように見えて来た。これは、魚のお造り。
「あんまり食べると、わたしみたいになっちゃいますよ。」
 食べ終わったあとに言われてもな。
 それともまだ、何か食べ物があるのか。
 それにしても、なんだか、節水の告知が、海の宣伝に変わったような。いや、どうだろう、どちらかが見間違いかもしれない。どうでもいい。
 オフィスフロアに戻って来ると、事務机が整然と並べられた部屋もあれば、ごちゃごちゃと積み上がっている部屋もある。
 かと思えば、開けたスペースで三角パイロンに囲まれた、今度は三輪車ではなく、倒れた事務椅子が転がっていた。
 机だけでなく、プロジェクターで部屋が照らされている所もあった。
 それから虫。
「食べますか?」
 蠢く細長い虫。
「食べますか?」
 虫、だろうか。
「食べますか?」
 また一時的に空腹を満たすことが出来た。
 それから少し、たぶん、少し進むと、またプロジェクターのある部屋。
 プロジェクターに移されているのは、顔の判然としない写真と「さがしています」の文言、人名。
「知ってる人でしたか?」
 知らない。はずだ。
 知らないと断言出来ることが、逆に違和感に思えた。
 部屋を出て、また順繰りに見て行く。
 そしてレバーがあった。
 下げる。
 先に進む。
 アレがいる。
 こっちを見ている。
 いや、目は無い。
 指が天井に向かって伸びた、いや、爪が。そしてその根本に口が。そこから歩行している。こっちに来る。
 走る。こちらを追い掛けて来る咆哮。
 走って撒いた先で、また現れる背の高いシルエット。続いて咆哮。
 また逃げる。
 さっきのアレが移動したのか、アレはそもそも複数いたのか、そんなことは分からないが、そんなことは考えられない。そんなことはどうでもいい。
 走り際にレバーがあった。三つ目だ。
 レバーを下ろす。
「おめでとうございます!」
 点灯する三つのグリーンランプをきちんと視認する余裕もなく走り去る。
「進捗を保存しました。」
 向かいから咆哮。
 手前に曲がり角があるのでそこへ入る。
 明るい光。
 非常口。
 違う。
 だけど走る。
 タイル張りとリノリウムが、蛇口と事務椅子が、交互に並ぶような、めちゃくちゃな通路を進む。
 その一番奥に、パソコンとデスク。
「起動しますか?」
 起動する。
 気が付けば、咆哮はもう、どこからも聞こえなくなっていた。
「再起動しています。コンピュータの電源を切らないでください。」
 なんだか頭がすっきりして来た。
「これであなたの世界が広がります20200807」
 起動したパソコンのブルーライト。
「これであなたの世界が広がります20200807」
 明るい光。
「これであなたの世界が広がります20200807」
 明るい光。
「これであなたの世界が広がります20200807……:(」
 明るい光。
「:)」
 明るい、液晶光。
「再起動しています。コンピュータの電源を切らないでください。」
 ブルーライト。
「再起動が完了しました。」
 視界がノイズが走ったようにバグを訴えている幻覚が見える。
 いや、ずっと幻覚だったのかもしれない。幻聴だったのかも。
 兎に角景色が歪む。
 それが治まると。
 「ここは……
 幻覚だろうとなんだろうと。オフィスを出たと思った所は、あの、見た光景。地下駐車場だった。
 しかし、横の鉄扉が開いている。
 ホテルに出る最後まで、開かなかったものだ。
 なんの疑問も抱かずそちらへ向かい、扉をくぐる。
 そして、それを当然のようにして外に出る。
 ずっと建物内部にいた、窓もなく外を見ることも長らくなかったように思う。
 外に出ると、いつもの景色が広がっている。晴れ渡る空。世界が広がっている。
 自分の車に向かう。
 車内の座席には、自分のノートパソコンが座っていた。
 そういえば、仕事を始める前に、避難所を確認していたんだった。
 あの世界がなんだったのかは分からない。
 運転席について、避難所へ向かった。
「良い天気ですね。道中お気を付けて。」


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いつもリアクション絵文字等ありがとうございます。