墨色
2025-08-31 16:47:21
3092文字
Public れめししお題
 

ホラーゲームは前フリです

れめししお題企画参加
「初見」「幽霊」お借りしました。
お題の使い方が間違っている気しかしないよね\(^o^)/

「ゴキゲンよう、観測者の諸君!こちらレイメイだ」
いつもの挨拶で始める配信チャンネル。
オレの手元には、ゲームコントローラー。
「今日はゲストがいるぞ。ケイイチ君だ!」
……どーも」
「ほら、ケイイチ君。スマイルスマイル」
「やめろ、王冠はいらねえっ!」
固い表情の敬一君の頬を摘み、頭に王冠を載せようとするけど、手を払われる。二人の姿が映し出させると、コメントが秒で流れ、投げ銭が飛び交う。
「早いぞ、オマエら。まだゲーム始まってないんだからな」
相変わらず、敬一君や他のみんなと配信すると盛り上がり度が違うな。面白くないとも思うが、オレの世界は価値があるから仕方ない。
「今日は夏のゲーム実況第一弾だ。ゲームは……ほら、ケイイチ君」
タイトルコールを促せば、コホンと咳払いをして敬一君が口を開いた。
「ルイージマンション3だ。……って言っても、オレはどんなゲームか知らないんだけどな」
チラリとこちらを窺う視線に、笑みを返す。
「オレも、初見プレイだ。初代と2はやったことあるけど、3は協力プレイが面白いらしくてな」
シングルプレイも出来るけど、マルチの方が撮れ高ありそうだからな、とは黙っておく。
「そんじゃ、よく見てろよ。観測者の諸君」
画面を切り替え、タイトルが映し出される。
「ケイイチ君はグーイージな」
「なんだ、そりゃ?」
「オレの分身みたいなもんだ。……初見なのになんで知ってんのか?トレーラー映像くらい見てんだろ」
「おい、かの……レイメイ、そんで何するゲームなんだよ?」
つまんねえこと言うヤツに腹を立てたが、敬一君の貴重な『レイメイ』呼びで機嫌が直るオレって、ホントチョロいな。
「あぁ~……ゴーストバスター?幽霊マンションで幽霊倒す系」
端的にゲームの目的を説明すると、
「なっ?!幽霊っ!?」
ガタンと敬一君が椅子から立ち上がった。
「聞いてねえよっ!!」
「言ってないし。ケイイチ君には、完全初見でやってもらいたかったしー」
「そうじゃねえよっ!!」
「ほらほら、始まるよ」
話してる間に、オープニングムービーが進んでいく。
チラリと画面に視線を送る敬一君の喉がゴクリと鳴る。しかし、映し出されたムービーは、国民的キャラクターたちが楽しく旅行に出発するものだった。
「なんだよ、面白そうじゃねえか」
「ねー、楽しそうだねえ」
明らかにホッとした様子の敬一君に、オレはニヤける口元を抑えつつ、敬一君に2Pのコントローラーを渡す。
「じゃ、始めよっか」
「おうっ!」


そこからムービーはさらに進み、和やかから一転、高級ホテルが某ランドのホーンテッドな雰囲気に変わった。
「え?なんだよ……これ」
「だから、言ったじゃん。幽霊マンションだって」
とは言うものの、所詮CEROAのゲームだ。怖さなんて子供だまし。
「そんじゃ、サクサク行くぞ!」
動きが割とモッサリしてるので、サクサクとは見えないが、緑色のヒゲのオッサンを操り、幽霊を倒していく。
「コレが掃除機で、ココに吸っていくわけ」
「へぇ、オレはまだ操作出来ないのか?」
お、ちょっと楽しくなってきたかな?
「割とすぐ二人でプレイ出来るはずだけど……
「そっか、だけどやっぱりオメエのプレイ見てると楽しいな」
配信には映っていないが、ニカッと笑う敬一君。いや、配信に乗せてなくて良かった。こんな顔、誰にも見せたくないし。
そうこうしているうちに、敬一君が操作出来るグーイージを手に入れた。
「なんだ?スライムみたいなのか?」
「そうみたい。狭い場所とか、入れるっぽいな」
「よし、そんじゃ早いとこ進めようぜ」
あーあ、子どもみたいにはしゃいじゃって。オレに誘われて、もっと高難度のゲームだってプレイしてるのに、いつでも反応が新鮮で堪らない。
もっともっと、オレの見てる世界を見せたくなる。一緒に見たくなる。
「あ、そこ。ケイイチ君じゃないと行けないっぼいな」
柵の向こうを示せば、
「わかった、任せろ!」
張り切った声が返ってきた。あー、もうホントかわいい。
「そんじゃ!ケイイチ君の腕前見せてもらおうか」
ニヤけきった口元だけど、敬一君が気づいてないから、もうイイや。
とにかく二人で楽しむかっ!!


「そんじゃ、今日はココまでだな。観測者の諸君」
「あー、最後のボス!もうちょっと早く倒せねえかなっ?!」
序盤の難敵とされるエリアボスを倒したところで、ライブ配信を終了することにした。
「今度はDLCのマルチを、みんなでプレイするのも楽しそうだな」
「いやいや、オレとのクリアが先だろうがっ!!」
全クリしてないのが悔しいみたいだな。
「ウレシイ言葉だなっ!でも、次は夏のホラーゲーム第二弾で、ユミピコとSIRENやるぞ!」
「はっ?!ホラーゲーム?!」
「そう、今日は第一弾だな」
「いやいや、コレはホラーじゃねえだろっ!!」
「一応、ホラージャンルになってんだよね」
ウソじゃないぞ。
「オレがケイイチ君とホラゲーしたくて、ケイイチ君でも怖くないホラゲーを探したんだぞ」
「なっ?!怖っ……?!」
オレの心のこもった気遣いに、敬一君は(感動の余り)言葉を失い、
『えっ!?待って?!』
『ケイイチ君、ホラー怖いの?!』
『かわいい〜♡』
観測者達は、ざわめき立つ。
「怖くねえっ!!」
流れるチャットに反応する敬一君を置いておいて、
「それじゃ、また会おう、観測者の諸君!」
ライブ配信を切った。


「叶っ!!」
あー、すぐに叶呼びになるんだから。その辺り、もう少し余韻があってもイイもんだと思うんだけどな。
「誰がっ!いつ!!ホラーが怖いっつたよっ?!」
「あー、確かに言ってはナイな」
うんうん、それは正しいよ、敬一君。
「でも、言わなくても敬一君の反応見てたら分かるし」
耳は塞ぐし、ジャンプスケアタイプのはいちいちビクッと反応してるし。気付かないヤツなんていないと思うんだけど?『よくそれでギャンブラー出来てるな』って言ったのは、礼二君だったかな?
「び、ビビってなんてねえよっ!」
「はいはい、強がるのはイイけど」
よしよしと頭を撫でると、乱暴に払われた。ヒドい。
「敬一君のねえ……ビビってるときの声が、放送出来ないよねぇ」
「は?」
オレが嫌そうに零すけど、敬一君は何のことか分からないらしい。
「だから、敬一君が怖がってるときの声がさあ、色っぽ過ぎて聞かせられないわけ」
「なっんだ、そりゃ!!」
いやあ、ホント困るよね。普通男って怖いとき、野太い声になんない?なんなら、女の子でも。
それなのに、敬一君ってば高い声出すんだよね。跳ねる声。
「そんなの、オレとのベッドの中だけでしか出しちゃダメなヤツだから!」
敬一君の肩を抱き、真面目な顔で見つめる。
ジッと視線を合わせていたら、敬一君の頬が、耳朶が、眦が朱に染まっていった。
「そんな顔も、誰にも見せちゃダメだぞ」
耳元に顔を寄せて囁やけば、
「見せねえよ」
ふいと顔を背けられた。
……オメエだけだろ、こんな言うのは」
ニンマリとオレは瞳を細めた。
「そんな顔させるのは、オレだけだからな」
頬に口付け、こちらを向くように促す。
綺麗な瞳がこちらを向いて、長い睫毛が降りていく。
やっと辿り着いた唇を重ね合う。
「じゃあ、敬一君の声を聞かせてもらおうか」
……オヤジ臭えよ」
悪態をつきながらも、拒まない敬一君の腰に手をやり、オレ達は配信部屋を出るのだった。
ここから先は配信出来ないぞ、観測者の諸君。