eto_hina
2025-08-31 12:42:38
1701文字
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ランキング一位

ニンニク食ってるレノクラのクラウドさんと食わせてるレノさん

 カチャ、カチ。
 皿の上の料理に止まることなく突き刺さるフォークが次々と料理を拐っていく。瞬きする間に消えて、次に瞬きすると料理が現れるのは最早怪奇現象ではないのか。
「なぁ」
……?」
 呼び掛けに目線で答える男。手と口を止めろ。お前この後予定あんじゃねぇのか自分で言ったよな。
……美味いの」
「んむぃ」
 飲み込んでから話せよ。そんでまだ食うのかよ。
 皿いっぱい、山盛りに出した唐揚げ。中身はニンニクをこれでもかと塗りたくった鶏肉。その隣に積み上がったのはガーリックシュリンプ、その横にペペロンチーノとアヒージョ、ガーリックトーストと、おまけのニンニクのオイル漬けぶっかけたチャーハン……が載ってた空の皿。
 二人分あったんですけど。こいつ一人で食ってんですけど。なんで? いや俺は別にもう予定ねぇし寝るだけだし良いよ。明日もオフだし。でもお前違うじゃん。今日はなんだっけ、どっかの――なんか依頼してくれたやつがお礼だかって誘われてんだろ、確か結構いい女だったろ。
「時間大丈夫かよ、と」
「んぃぁむ」
「は?」
……間に合う」
 そーですか。間に合っちゃうの。へーぇ、そう。俺の時は遅刻常習犯なのに。いいけど。
 勝手に予定入れるのは俺もだし。女とも会うし。こいつもなんも言わねぇし。だから別に好きにしていいんですけどね。なんか悔しいからせめて臭がられろとニンニク大量に使ったのに普通に食うのなんなの。デリカシーとかエチケットとかは?
「ご馳走様」
「ん」
 普通に食って、支度して。歯磨きしてるけど手遅れじゃね? むしろ歯磨き粉と混ざって最悪になってそう。ウケるんですけど。
「行ってくる」
「へぇい」
……レノ」
 玄関先まで見送るなんてしねぇよ、と。皿洗いながら返事してやると呼びかけられて顔を上げる。視線の先ではいつも通りセットされたツンツン頭のクラウドがなんか投げて寄越した。
「なにこれ……いつもの、じゃねぇな……?」
 キャッチした拍子に床に飛び散った泡と水に顔を顰めながら手の中の物を見る。なんだっけ。なんか……あれだ、俺が女と出かけた日にクラウドとセックスする時だけクラウドが用意する、いつもと違うローション。なんでか結局使わねぇでいつもの使うから封切っただけの新品だけど。これが何?
「食事して帰ってくるだけだ」
「ん? おう」
「だから、俺もそれを使わせたことは無い」
「ん、ん?」
 使わせる、とは?
「リッププランパーって知ってるか?」
「知らね。なに? なんの話ししてんの?」
「女が口に塗るらしい。ティファとユフィに聞いた。それのランキング一位がその中に入ってる」
「なんで?」
「あんたが女と出掛けて食事で済まなかった場合、セックスの時にあんたのに塗りたくってやるつもりだった」
「なんで?」
「仕置きだ。でも使ったことは無い。俺も、別にあんなもの食わせなくても何もしない」
「ん? ん?」
「プランパーのことは……あんたはイリーナにでも聞いたらいい」
 行ってくる。
 言うだけ言って出掛ける男。自由か。とりあえず食器を片付けてからリビングに戻ってローションを眺める。プランパー? 何それ。
「イリーナァ? まぁ、聞いてみるか?」
 スマホいじって、履歴から探し出した後輩に電話する。数コール後に聞こえる不機嫌な声。可愛くねぇー。
「なぁ、プランパーって何だよ、と」
『この時間に聞くのがそれですか?』
「何?」
『リッププランパーですか? 唇に塗って使うやつです』
「ほぉ」
『まさか使うんですか? ヒリヒリするから弱めのやつから始めないと痛い目見ますよ』
……痛いの?」
『弱めのやつならそれほど……最強とか書いてあると舌に付いた時死にますからね』
……あ、そぉ……あんがと……
 通話を切って手の中のローションを見る。よそ見する気はなかったけど、恐ろしいことしやがるなあいつ。
……ゼッテェ痛いやつじゃん」
 ランキング一位だせいぜい泣いて喜べよと聞こえた気がして、意外と気にしてたんだなと笑いながら危険物をゴミ箱にぶん投げた。