たくとろ
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ワンライ「一途」

1h10min
一途って聞くと、King Gnuの曲が浮かんできます。
「永遠なんて必要ないの」ってフレーズが印象に残るんですよね…

朝陽が差し込んできて目が覚めた。隣のラウドボーンはまだまだぐっすりお腹を丸出しに仰向けになってた。いつもラウドボーンと一緒にいる火の魂もちょっと困ってる感じだ。うつ伏せにしてやってもまだ寝てる。仕方ないから布団をかけ直して僕は一人で廊下に出た。

「お、おはよう、ロイ」

出てすぐにそう言われた。いつもよりちょっと高くて、ちょっと焦ってるみたいな感じの声。僕も声がした方に振り向いて言った。

「おはよう、リコ」
「う、うん!」

リコの顔はいつになく真っ赤っかいや、昨日の方がすごかった。正直、昨日のことは僕も心臓がうるさすぎてちゃんと覚えてないことは多いけど、あの時のリコの照れて、笑って、嬉しそうにしてくれた顔はしっかりこの目に焼きついてる。なんて考えながらリコの顔を見てたら、リコは目を逸らしちゃった。

「あ、あのロイ

両手の指を重ねて押し合いながらリコは話を切り出した。少し歯切れが悪い。不思議だから、とりあえず「なに?」って聞いてみた。

「え、えっと昨日のって夢じゃないよね?」
「え?」
「私たち付き合ってるってことで合ってるよね?」

すっごい照れてる。かわいい。声が少し震えてる。きっと不安だったんだろうな。気持ちは分かる。僕も朝起きたら、隣にラウドボーンがいて、ダメな寝方してて、いつも通りだったから。でも、リコが聞いてくれて、ちょっと安心した。

「ああ。夢なんかじゃない。改めて言うよ。リコ好きだ」
!うん!私もロイが好き」

リコはやっとほっとした顔になった。僕もちょっと口元が緩んでる気がする。それにしても、リコは今部屋から出てきたって感じにも見えない。足音もしなかった。

「リコ、もしかして僕が起きてくるの待ってた?」
うん。朝起きたら昨日のことが現実か分からなくてロイの口から安心できる言葉が欲しかったんだ。ごめんね、朝から
「そんなの気にしなくていいよ。リコの気持ち、確認できて僕も嬉しいよ」

そう言ったら、リコはまた笑ってくれた。まだ朝ごはんには早い時間だ。多分マードックはもう起きてるけど、他のみんなは寝てるだろうし、せっかくだから二人で甲板に出て話すことにした。

「リコ、手つなご」
「うん」

リコの手は、僕の手より小さい。昔からそうだったけど、今はけっこう差を感じる。きっと僕が握ったままにしたら、リコは逃げられないだろうなあとか、ちょっと意地悪なことが浮かんだ。いつそんなことするのかなんて、分かんないけど。
歩きながら、ひそひそ声で少し話してみた。「マスカーニャは?」って聞いたら、まだ寝てるらしい。「ラウドボーンもだよ」って言ったら、なんか自然と笑っちゃった。リコも一緒で、二人であんまり声を立てないように笑った。
甲板に着いた。高い崖の近くに船を停めたから、朝陽でキラキラになった海がよく見える。今まで色んな海を見てきたから、こんな感じの海も何回だって見たことがある。そのはずなのに、どの海より綺麗に見えた。海だけじゃない。今、リコと歩いてきたなにげない船の廊下も、なんだかすっごく輝いて見えた。そう振り返ってたら、リコが少し強く手を握った。

「ロイさっきから私、目に映るもの全部キラキラしてるんだ。きっとロイと一緒にいるからだって思う」

そっか。リコも同じなんだ。一緒に見て、一緒のこと感じてる。

「うん僕も」

リコの方を向くと、ばっちり目が合った。どんな宝石より綺麗なリコの青い瞳が、星空みたいに見えた。また、二人して口角が上がった。
それからは昨日の話をした。リコもドキドキしすぎてよく覚えてなかったみたい。でも、お互いに言葉にした気持ちと、今みたいに手を繋いで歩いたことはちゃんと覚えてる。告白の前、どんなことしてたかはやっぱりまだぼんやりしてる。昨日からお互い、全然落ち着けてなかったんだ。話してると、段々リラックスするような、やっぱりドキドキするような。不思議な感覚がずっと続いてる。
話してる間に、空が段々青くなってきた。もうそろそろみんな起き出す頃だ。十分くらいしたらみんなミーティングルームに集まるだろう。そんなことを思って、言葉にしてまだ僕たちの足は止まったままだ。二人きりの時間は、ずっとは続かない。分かってるから、少しでも長く一緒にいたいって思うんだ。ポケモンたちの足音や鳴き声が聞こえ始めたところで、リコが言った。

「ロイこういう時間がずっと続いたらいいのにって思う?私はわがままって分かってても思っちゃうな」

僕の手を握るリコの力がまた強くなった。小さい手で、僕のことを離さないようにしてる。そんなことしなくても、今は全然離れる気なんてないのに。それでもリコは「ずっと」がいいからこうしてるんだろう。僕も同じ気持ちだ。

「そうだね。ずっと続いたらすごく幸せだよ。でも、みんなとの時間も好き」
「うん。私も」

やっぱりリコと気持ちが重なってる。だから話してるうちに自然と笑顔になる。リコのことが、もっともっと好きになる。

「私たちがずっと一緒ならどっちの時間もできるね」
「確かに」
「ロイ、私ロイとずっと一緒にいたい」
「ああ。僕も同じ気持ちだよ。でも

ラクアで戦った後、僕たちは一度離れ離れになった。それでも、みんなライジングボルテッカーズへの想いが残ってたからこうしてまた集まって一緒に旅をしてる。だから、僕はこうも思う。

「もし、一緒にいられないようなことになっても僕は君を一途に愛すよ。何かが途切れても、この気持ちだけはずっと変わらないから」
うん。私も、ずっとずっとロイのこと愛してる

リコが言い終えたら、自然と僕たちの顔は磁石みたいに引き寄せられてた。リコが目を閉じて、僕らの唇が後少しで、重なる。

「おい!ロイ!リコ!そんなとこでなにやってんだ!飯だぞ!!」

上から、ウルトの声が響いた。多分あいつからは何してるとこだったか分かんなかったんだろうな。僕らの唇はひっつかなかった。

「今行くよ!」

僕が顔を上げて叫んだら、ウルトは展望室の中に戻っていった。ため息をついてスマホロトムを見たら、朝食ができたってグループトークに連絡が来てた。

「リコ行こっか」
「うんえ、えとさっきの続きはまた今度
「うん

気恥ずかしさがいっぱい胸に残った。自然と解けた手を握り直すことはせず、僕らはみんなのところに向かった。