三毛田
2025-08-30 21:40:30
1074文字
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100 100. 開いた手のひら

100日目
手のひらへと口づけを

「ん」
「なんだこの手は」
 俺が手のひらを差し出すと、呆れつつもポンと己の手を乗せる。警戒心なさすぎ。
 そういうところも嫌いじゃないけど、もう少し警戒してほしいという複雑な気持ち。
 重ねられた手を、数回握ったり離したりして。
「っ」
 指先にキスをすれば、真っ赤になって手を引っ込める。遅いってば。
「丹恒。俺だから、これだけで済んでるんだ」
「し、知らないっ。ふ、普通は、こんなことをしないっ」
「うん。普通なら、しないな」
「ならっ」
 耳まで真っ赤にし、詰め寄ってくるように。
「好きだから。好きな相手には、こういうことをしたいんだ」
 もう一度手を取れば、ビクッとこちらからでもわかるほど肩を揺らし。
「指先から、頭のてっぺん。爪先まで、一通り舐めて味見したいくらい好き」
「お、まえっ」
 わなわなと唇を震わせ、信じられないものを見るような瞳。
 でも、相変わらず顔は赤いまま。
 可愛い。
「さっきみたいにキスされたくなければ、あんな無防備に俺に触れさせるなよ?」
「お、お前が自分からそういう、ことをしなければ、済むだけの話だっ」
「それは無理だ」
 俺が即答し、断言するとこいつは馬鹿なのか。という視線を向けられ。
「言っただろ? 丹恒が好きなんだよ」
 手を掬い上げ、指先にキスをする。
 俺の行動が想定外だったのか、反応が遅れて。慌てて手が引っ込められようとするけれど、逃がさない。
「丹恒」
 漫画で見かけた、イケメンだけに許されるきりっとした表情を真似てみる。
 赤みが引いていたはずの顔は、再び同じ色に染まっていって。
「俺が好きだと、迷惑か?」
「べ、つに。迷惑と、いうわけじゃ……
 灰緑の瞳は、せわしなく上下左右に動いていて。俺と視線を合わせたくない。
 そんな様子が伺える。
「嫌い?」
「嫌いなわけ、ないだろう……
 今度は消え入りそうな声。
 これは、押して押して押しまくれば、コロッと落ちそうだ。
 でも、そんなことをしたらちょっとでも嫌われてしまいそうで。それだけは避けたい。
「じゃあ、丹恒が俺と同じ好きを俺に向けてくれるようになるまで、ちょっとだけ我慢する」
「ちょっと、だけなのか?」
「機嫌を設けていないんだから、良心的だろ?」
「そこは、はっきり我慢するべきだろう」
 むすっとした表情。
 少しだけ、赤みが引いてきている。
 普段のクールなところも好きだけど、こうして俺に翻弄されている姿も……とてもいい。
 好きという気持ちばかりが、募っていって。
「丹恒。待っているから」