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果南(カナン)
2025-08-18 21:10:13
1352文字
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さめしし
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夢の続き
さめしし。一緒に眠っている二人の小話です。
真夜中にふと、目が覚める。
一瞬、自分が何処にいるのかわからなくなる。夢の世界から分断されて、脳の切り替えが追いついていない。そうして夢の中の出来事も、もう思い出せなくなっている。確か、何かの乗り物で移動していたような
——
そんな感触だけが残っている。
眠りに就いてから、それほど長い時間は経っていない。時計を確認せずとも、様々な感覚がそう告げてくる。まだ眠っていて良い時間だ。
眠らなければ。
そう思って瞼を閉じたが、いったん覚醒した脳は睡眠が足りないにも関わらず、活動を始めようとしてしまう。当直やら何やらで、短時間で叩き起こされることに慣れてしまった弊害だ。
今日は、そんな必要はないというのに。
そう、今日は
——
「ん
……
」
隣で、小さく甘い音がした。
眠っている獅子神が身じろぎし、軽く眉を寄せる。逞しい体がごろんと半分寝返りを打つように動いて、しなやかな腕が私の体に被さり、抱き寄せた。
「
……
ししがみ」
とくとくと、パジャマの布越しに鼓動が聞こえる。規則正しい寝息、ぴくりと動いた瞼。
乱れた金色の髪が額に落ちかかり、暗い寝室の中で淡く光るのを、しばらく私は飽きずに眺めた。美しい薄青の瞳は、今は閉じられた瞼の奥に隠れていて、獅子神は安らかな眠りの中にいる。行為の最中には薔薇色に上気し、汗と涙を伝わせていた頬も、当然のことながら既にしっとりと落ち着いていて、パジャマの胸元に覗く私のつけた痕だけが、甘い交わりの名残りを留めている。夜が明ければきっと何事もなかったかのように早起きをし、日課のジョギングに出かけ、戻ってきて私に朝食を作ってくれるのだろう。
健やかで、優しく、寛大な獅子神。
そんな彼が、私を愛してくれている。
あたたかく、こうして隣にいる。
「
……
ふふっ」
私は満足して、眼を閉じた。獅子神の腰に腕を回し、パジャマの胸元に顔を埋める。慣れた甘い、芳しい香りをゆっくりと吸い込むと、脳の隅々まで行き渡って、包むように神経を鎮めてくれる感じがした。
これならきっと、うまく眠れるだろう。
ひたひたと、空白が打ち寄せてくる。意識が少しずつ、波に攫われていく。
獅子神の体温に包まれて眠りに落ちながら、目の前に別の景色が開けていく。小さな飛行艇に乗って、窓から外を眺めていた。絵に描いたような碧い海、大きな環礁。白い砂浜に囲まれた緑鮮やかな島は、きっと静かなリゾート地なのだろう。その椰子の木が、海の波が、ぐんぐんと近づいてくる。
怖くはなかったが、重ねられていた大きな手をぎゅっと握った。すぐに温かい手のひらが、しっかりと私の手を握り返してくれる。
盛大に水しぶきをあげて、飛行艇が着水する。波止場へ向かって進む機体は何故か窓が開いていて、私は手を伸ばして指先を水面につけてみた。冷たい感触があって、指先で分かれた水が新しい波を立てて後ろへ流れていく。隣に座る彼も面白そうに、反対側の窓から手を出して波を生んだ。
きらきらと輝く水面に、白い波が走る。私と獅子神、ふたりの手で。
夢の続きの場所に、あなたがいて良かった。
飛行艇が止まり、私たちは席を立つ。そうして知らない島の幸せな場所へ、手を繋いだままで歩いていった。
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