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awase
2025-08-29 22:14:22
3512文字
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オビカカ
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死んでもきみを愛してる
2026.10.25発行予定のオビカカ本の冒頭
私は、戦争でチームメイトを失くしてからできる限り真面目に生きてきました。
最後まで仲間を大切にした父に倣い、その父を尊敬していると言ってくれたチームメイトを想い、自分もそのようであろうと努めました。
それでも、リンを失ったこと、ミナト先生を失ったことに無力さを感じない夜はありませんでした。
今日まで私は彼らへの罪の意識と、彼らに生かされた命への感謝の狭間で生きています。なんとか。
そんななか、私の教え子がもうすぐ火影になります。
先代の五代目様から受け継いだ火影の称号は私には重かった。
やっと次の世代に渡せると思うと心からホッとします。長かったなあ。
この遺書を一番最初に見つけるのは、ナルトかな。
それとも働き者のサクラかな。サスケは
……
妙に勘がいいから、お前の可能性もあるね。
父さん、ミナト先生、リン、三代目、自来也先生、アスマ
……
たくさんの大切な仲間たちへ。オレもすぐにそこに向かいます。だけど会えはしないと思う。
あなたたちがいる天国にはオレは行けない。
どうか皆さま、天国でもお元気で。
愛する3人の部下も、どうか達者で。きみたちの成長だけが、かけがえのない生き甲斐でした。
ざく、と湿った土にシャベルを突き立てる。
蒸し暑い夏の空気が肌に張りつき、カカシは口布を下ろし生ぬるい湿った空気を吸い込んだ。
「暑くて参るね、ほんと
……
」
ひと気のない夜の森にカカシのひとり言が沈んでゆく。
手を止めることなく土を掘り返し、シャベルの先がこつりと硬いなにかにぶつかった感触にそれを後ろへ投げ捨て、湿った土のなかに両手を突っ込みひたすらに掻き分ける。
遠くで警報音が聞こえている。遠い背後にある木の葉隠れの里からだ。
カカシはその音に振り返ることなく、土を掘り続けた。やがて指先に触れた小さな箱を取り出し、封印札を貼り付けた蓋を開く。その中にある巾着を手のひらに包み、ジャケットの内ポケットに大切に忍ばせる。
昔コピーした火遁で外箱を燃やし、掘り返した地面を土遁で埋め、カカシは立ち上がりもつれる足で走った。
頭の冷静な部分で、火遁の匂いが犬塚家の忍犬に嗅ぎ取られること、不自然に盛り上がった土遁をナルトの仙術が見つけそこからカカシのチャクラを感知されることは理解できた。
しかし後には引けないところまできた。
走りながら変化の術で姿を変え、警報音から逃げるように森の中を走る。伸びた枝葉が頬を切り小さな切り傷をいくつも作ったが構っていられなかった。
「逃げよう」
カカシは内ポケットの巾着に手を当てる。
「逃げるぞ、オビト」
もう充分尽くした。
今度こそ誰も知らない地で自分の人生を生きる。
カカシが火の国の国境を越えると、背後でより大きなサイレンが鳴り響いた。振り返ると、燃えるような赤色灯が黒い空を照らしていた。
死んでもきみを愛してる
サスケが里に戻ってきた頃、木の葉隠れの里は緊張に包まれていた。
火影邸に群がる群衆を掻き分けなんとか入り口まで辿り着くと、サスケを見つけたシカマルが片手を上げ手招く。
火影邸にはシカマルのほかにもチョウジ、シノ、リー、ヒナタなど、サスケの同世代の忍たちが収集され、廊下を行き交うのも困難なほどの忍でごった返している。
「状況は」
足早に邸の階段を上がりながらサスケが言うと、シカマルが人差し指で上を指す。
「ナルトが屋上でチャクラ探知をしてる。あとは山中一族がA塔で感知と心転身を行ってるから、A塔には近づくな。邪魔になる」
サスケは頷いた。
「カカシが誘拐だなんて
……
」
「ああ。とんでもねえことになった。五代目の決定で、まだ火の国の大名や同盟国の火影にも公表はしてない」
「それがいい。余計な混乱を招くからな」
サスケが屋上の扉を開けると、ナルトの影分身が所狭しと坐禅を組み瞼を閉じている。里の自然エネルギー全てを集約しているのではと思うほどのチャクラ量に充てられ一瞬眩暈を起こしつつ、本体のナルトの肩を叩くと、赤い隈取のナルトが瞼を開けサスケを見上げた。
「戻ったか、サスケ」
「幸い里に戻る途中だった。カカシのチャクラは感じるか」
「火の国の国境で突然消えてる。今、サイと日向一族が国境周辺を飛んで探ってるところだ」
「他里に公表していないから、国境を越えてまでは探せんか
……
」
「ああ。だけど、この件を我愛羅には言っていいかと思ってんだけどよ」
ナルトが言うと、背後から「ダメだ」と声が届く。
サクラとシズネを率いた綱手だった。
「風影にもこのことは公表できない」
「でも、我愛羅の協力があれば感知を広げられる」
「だめだ」
綱手が首を横に振り念押しをする。サスケはその意味をよくよく理解していた。
戦争が終わりカカシが六代目火影に就任し、五里の協力関係はより強固なものになった。幾度となく戦争を経験したカカシは平和に固執していたし、地盤が揺らいでいた他里との信頼関係回復に血肉を注いでいたことをサスケも知っている。
そのおかげで、火の国とその他の主要国家の協力関係は平等に均された。というのも、かつて一尾の人柱力だった五代目風影・我愛羅と、九尾の人柱力であるナルトが親しい友人関係であることを危惧する他国の大名もいたからだ。
火の国・木の葉隠れの里は戦争大国ということもあり、戦力としての信頼が集中する一方で、注意深く驚異視もされる。次期火影候補のナルトがとりわけ風影と親密な関係であることが、五里のパワーバランスを揺るがすのではと不安に思う国があることはもっともだった。
それをカカシは長い月日をかけて均し、木の葉隠れはようやっとどの国に対しても中立な立場を主張できる里へと成長した。
だから、ナルトの独断で我愛羅に協力を仰ぐようなことがあってはならない。カカシが年月をかけ積み上げた信頼を崩すことになりかねないからだ。
ナルトは歯痒そうに唇を噛んだ。
「そうもいってらんねえだろ! 緊急事態だ! このままカカシ先生になんかあったら、それこそ木の葉の信頼が揺らいじまう!」
そしてナルトも、七代目火影に就任間近の身だ。まだ他里に公にはされていないが、火の国の大名たちも次期火影はナルトにと納得している。火影としての意識を強めているナルトが危惧しているのは、六代目火影誘拐による信頼の墜落と、未だ収まらない小さな諍いがこれを機に木の葉隠れの里に舞い込むことだった。
「お前がなんと言おうと今決定権は私にある。従ってもらうぞ、ナルト」
「でも、もう里内に先生のチャクラはない。これ以上の里内の探索は無意味だってばよ!」
「わかってる。シカマル、山中一族の状況は」
シカマルが無線を耳に当てる。A棟のいのと通信が繋がっているようだった。
「里の中のひとりが、国境付近で不審な男とすれ違った記憶があるようです」
「不審な男
……
? 昨晩、未登録のチャクラが里を出入りした形跡はないだろう」
「そうなんですが
……
」
綱手が眉を寄せる。
「その男の様相は」
「紫っぽい髪に、黒い服、それくらいしか
……
」
屋上の扉が強く開かれる音に一同が振り返る。
赤丸の背に乗ったキバが真っ直ぐ綱手の元へとやってきた。
「国境付近で、紙製のものが燃やされた形跡と、土の掘り返された形跡がありました。そこに微かにカカシ先生の匂いが残っていました」
「なに
……
」
綱手がナルトを振り返る。
「ナルト! どういうことだ! 里内にカカシのチャクラ反応はないと言ってただろう!」
「そんな
……
、キバ、国境って西の国境か?」
「ああ」
ナルトの額に汗が浮かぶ。サスケはそれを不審に思った。ナルトの仙術がチャクラを取り違えて認識することはないはずだからだ。ナルトの傍に座るフカサクも同様に困惑の表情を浮かべている。
「綱手よ、ナルトちゃんは嘘を言ってねえ。あそこにカカシのチャクラ反応はない」
「んだと
……
? オレと赤丸の探知にケチつけてんのか?」
「やめろキバ」
抑えろ、とサスケがキバの腕を掴むと、吊り上がった目が伏せられる。
シカマルが無線でいのに繋いだ。
「いの、その不審な男は国境のどこで見た」
『南よ』
情報が増えるほど混乱してくる気配に辺りが緊張に包まれる。
上空から落ちてきた影を見上げると、墨色の鳥で飛んで戻ってきたサイが屋上に降り立った。
「カカシ先生の死体が見つかりました」
場が凍りつく。
屋上に鎮座していたナルトの影分身が一斉に消え、人の少なくなった屋上に冷え切った沈黙が流れた。
「東の国境付近に、カカシ先生の死体が」
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