shizuku0797
2025-08-27 22:38:11
3242文字
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水ヨーヨー

木田さんから「ジンベエと一味の誰か」のリクエストをいただきましたので、ジンベエ、チョッパー、ブルックで夏祭りを楽しむ一コマ

ピュードロロロ ドンドコドン

どこからともなく甲高い笛の音と心地よい太鼓の振動が聞こえてくる。上陸した島で今日はお祭りが開かれていた。

麦わらの一味は各々思い思いに祭りを楽しんでいる最中で、たまたま合流したのは、わたあめを片手に持っているチョッパー、口の周りをたこ焼きソースで塗りたくっていたブルック、誰から貰ったのか天狗のお面を頭にかけているジンベエだった。
合流した3人はそのまま一緒に屋台を見てまわっている。

「すげーいっぱいいろんな屋台があっておれ楽しいぞー!」

「私もずっと胸が高鳴ってますー!高鳴る胸、ないんですけど」

「それよりお前さんは口のまわりをどうにかしたらどうじゃ」

と、ジンベエは腰巻きに下げていた手ぬぐいをブルックに渡す。
ブルックが口元を拭っていると、ふと「水ヨーヨー釣り」の看板が目に入った。

「チョッパーさん、ジンベエさん、あれなんてどうですか?」

「水ヨーヨー?」

「ほう、風船に水を入れて遊ぶ玩具じゃな」

「えー!なんだその楽しさしかねェ玩具ー!!」

「ね、ちょっとやってみましょうよ」

チョッパーがとびっきり目を輝かせたので、3人は意気揚々と水ヨーヨーの屋台へと足を運んだ。

「へいらっしゃい!1回200ベリーだよ!」

陽気なハチマキを巻いた兄ちゃんが3人に声をかける。お祭りだからか、相手がトナカイだろうが、ガイコツだろうが、魚人だろうが特に気には止めていないよう。

大きな桶には水が張ってあって、そこには赤青緑オレンジ色鮮やかな水ヨーヨーがぷかぷかと浮かんでいる。

「じゃあ3つお願いします」

ブルックはこの水ヨーヨーをすぐにもらえると思い人数分注文をすると、

「あいよ!3回だな!」

単位がいきなり変わり、手元に届いたのは紙を捻って先に針金がつけてある『こより』。

「なんじゃこれは?」

これにはジンベエもブルックも首を傾げる。水ヨーヨーにしては姿形が違いすぎる。

「何って、水ヨーヨー『釣り』だよ!その『こより』を垂らして、水に浮いている輪っかにひっかけて吊り上げるんだ」

「釣り上げたら水ヨーヨーを持って帰れるぞ」と付け足す陽気な兄ちゃんはニマニマと笑っている。

そんなことよりも、水ヨーヨーを手に入れるのに遊びも交えて楽しめることに感心するジンベエと、好奇心に目を光らせるブルックとチョッパー。

「おお!なんだそれ!おもしろそうだな!よし!頑張るぞ!」

ならばと我先に名乗りをあげたチョッパーが、こよりをポトンと桶に落として「えーっと、えっと」と左右に首を振りながらお眼鏡にかなう水ヨーヨーを探す。そして目についたのはピンクと水色のグラデーションがかかった色鮮やかな水ヨーヨー。

「あ!おれこれがいい!」

そう言ってチョッパーは勢いよくこよりを水につけたまま移動させてゴムの輪に引っ掛ける。

「えい!」

と勢いよくこよりを引っ張るが、何も釣れた感触はそこにはなく。
それより何より持っていたはずのこよりはいつの間にかチョッパーの手には根本しか残っていない。

「え!?なんで!?」

「残念だねえ、お客さん。この紙は水に溶けやすいからずっと浸けてると簡単に切れちゃうんだよ」

なんて陽気な兄ちゃんはカラカラと笑う。
それならそうと言ってくれと思う気持ち半分、釣れなかったショックが半分でチョッパーは瞳をうるうると潤ませる。

くっそォ!と悔しさが滲み溢れる声を聞いたブルックは、ならば私がと、ずいと名乗り出て真剣な表情で水ヨーヨーと対峙する。

やがてお目当ての水ヨーヨーにつながっている輪ゴムが水に流れてプカリと浮かんだ。

「ここ!」

その一瞬をブルックは見逃さなかった。

勢いよく素早く針金に輪ゴムを引っ掛けて吊り上げる。すると水ヨーヨーがわずかに水面から浮かんだ。

「おー!!」

ぷつん

が、そう思ったのも束の間。

次の瞬間には勢いがよすぎたのか、完全に上がり切る前にこよりはちぎれてしまい、ぽちゃんと虚しく音を立てて何事もなかったかのように、水ヨーヨーはまたぷかぷかと桶の中を漂い始めた。

「あ、切れちゃいました」

「えー!惜しかったのに!!」

「ハハッ、そんな勢いよく引っ張っちゃあ、ねえ」

「ヨホホ、私もまだまだですね。もっと見極める目、養います。あ、私養う」
「お前養う目ないもんな!」

「あ、チョッパーさん、私に全部言わせて

そんな二人のやり取りを見て「やれやれ」とため息をひとつついたジンベエが最後に前に出た。

「なら、わしが二人の無念を晴らそう」

「おー!ジンベエー!!」

「ジンベエさん、お願いします!」

「任せておけ」

そしてジンベエはどかりと桶の前で胡座をかき、膝に片手を添えながらじっと桶を睨みつける。


しばらくそこだけ静寂が流れた。


ゴクリと喉を鳴らしたのはチョッパーかブルックか、はたまた陽気な兄ちゃんだったか。

ジンベエはそんな陽気な兄ちゃんをチラリと見ると「なるほど」とひとつ納得したように頷いて、針金に触れるギリギリのところでこよりを持った。
そして水の流れを見極めてカッと目を見開くと、目にも止まらぬ速さで一瞬だけこよりを水につけて輪ゴムを掬うように引っ掛けた。

たぷんと音を立ててピンクと水色のグラデーションがかかった水ヨーヨーが持ち上がる。

「おおおお!ジンベエすげー!!」

「さっすがジンベエさん!」

「なーに、水の流れを読んだまでよ」

それに、とジンベエは少し声を落としてまさか本当に釣り上げるとはと、目を丸くして驚いている陽気な兄ちゃんをチラッと見た。

「この『こより』、一段と水に弱いものを使っとるな。だから水に触れる面積を減らして、丁寧に扱う必要があったみたいじゃ」

そこまでタネを明かされてしまってはと、彼は降参だと言わんばかりに両手を上げた。

「さすがだなお客さん!そこまで見抜いたのはあんたが初めてだよ」

「伊達に海で生きてきてないからのう!」

「そこまで見抜かれちゃ、おまけしちゃうぜ!一人ひとつ好きな水ヨーヨー持っていきな!」

「え!いいのか!」

「なんてお優しい!」

「チョッパーはこの水ヨーヨーがよかったんじゃろ?」

「うん!ありがとうジンベエ!そしたらおれがジンベエの分の選んでいいか?交換こしよう!」

「交換こ……よし乗った!」

「えー!私も入れてくださいよー!私とチョッパーさんでジンベエさんの選びましょう!」

「じゃあわしがブルックのを選ぶとするか」

「おう!」

そう言ってワイワイと3人はさまざまな水ヨーヨーを指差ししながらあれこれと吟味する。
やがてブルックとチョッパーは二人同時にこれだというものに辿り着いて

「チョッパーさん!」

「ブルック!」

と思わず声を合わせる。

ジンベエも「これがいいかのう」と水ヨーヨーを一つひょいと掬いあげた。



「まいどあり!」と陽気な声を背にして、その場を後にした3人はさっそく水ヨーヨーを交換した。

「わしはブルックにこれがいいと思ったんじゃが」

とジンベエが出したのは、光がたくさん込められたようなキラキラと光る金色が散りばめられた黄色いヨーヨー。

「おれたちはジンベエならこれかなって」

「ええ。ジンベエさんみたいだったので」

と、二人が出したのは半透明の青色の水ヨーヨー。まわりに白い波が描かれていてまるで海のようだった。
3人はそれぞれ嬉しそうに水ヨーヨーを受け取る。

「で、これをどうやって遊ぶんだ?」

「この輪ゴムに指をかけて弾くそうじゃ」

「へー!楽しそうですねー!」

なんて3人でそれぞれとびっきりの水ヨーヨーを指に引っ掛けて、まるで子どものようにぱしゃぱしゃと弾きながら足取り軽く屋台巡りを再開するのだった。