アカ
2025-08-02 01:15:14
5210文字
Public 8/9のイベント展示小説
 

アニエスの願い

1人で行動しようとするヴァンとそれに気が付いて、ヴァンの4spgを手伝う話。ヴァンアニです。

ヴァンはいつものようにアニエスと一緒に首都
イーディスを回っていた。4spgを確認するために
掲示板を見たが、特に何も貼られてなかった。
「今日は依頼がないみたいですし、このあとは
どうしましょうか?」
そうアニエスは言ってきたが、ヴァンは気が
付いた。気付かれないようにこっそりと
貼られている紙に。こういう貼り方をする奴は
大抵碌な依頼を持ってこないことを理解していた
ヴァンはアニエスに気が付かれないように紙を
そっと剥がし、中身を確認した。内容は地下水路に
来ること。そして、その際ヴァン1人で仲間を
呼ばないこと。人質を取っていること。そのような
ことが書かれていた。名前は書かれて
いなかったが、ヴァンを指定してきたことから、
ヴァンに何か恨みがある人物だとヴァンは
文面からも察した。だから、1人で
行動することを決めた。
ヴァンさん?どうかしましたか?」
何がだ?」
「今、何か真剣な顔で読んでいたので。」
アニエスは鋭い。このことがバレたら、手伝うと
言って聞かないだろう。そう思ったヴァンは紙を
ポッケに隠して大袈裟に演技した。
「ふっ!よくぞ聞いてくれた。これを見ろ!」
そう言ってヴァンは隠し持っていたチラシを
アニエスに見せた。
「スイーツコンテスト?」
「近いうちに開催するみたいでな。
いやー!楽しみだな!試食もあるみたいで
たくさんの名店が来るらしい!」
あの、そのチラシ、ずっと持ち歩いて
いたんですか?」
「まぁな。これを見ると、明日も頑張ろうって
気持ちになってくる。」
ヴァンがチラシを持ち歩いているのを発見した
アーロンは「ちょっとキモぞ。オッサン。」
なんて言ってきたが、今はそのアーロンの評価
を無視して持っていたことに感謝した。
そのおかげでアニエスの目を誤魔化せる。
なるほど。それで本当は何を隠したんですか?」
ヴァンはアニエスを甘く見過ぎていたようだ。
ヴァンの目論見は一瞬で看破された。
何のことだ?」
ヴァンさん、さっき紙を右ポケットに
隠しましたよね。それを誤魔化かすように
チラシを左ポケットから出した。そんな面倒
くさいことをする理由は一つです。本当に
バレたくない目的から目を逸らさせるため。
違いますか?」
誤魔化せないとわかったヴァンはため息を吐いた。
たっく。成長しやがって。」
「ヴァンさんに鍛えられていますから。」
どんどん成長しやがって。いつか自分を超える
日がー。いや、もう超えているか。
そんなことを思いながら、ヴァンはアニエスに
協力を要請することにした。
1人でやるつもりだったがー。
協力して貰うぜ。」
そう言ってヴァンは隠した紙をアニエスに渡した。
「これは。」
「掲示板に隅っこに貼ってあった。」
「そうなんですね。でも、どうして
教えてくれなかったんですか?」
こういう貼り方をする奴はロクな依頼を
持ってこないし、1人で解決するべきだと
思ってな。」
ヴァンなりの気遣いだと思っているし、
人を頼るのも苦手なのもわかってはいるが、
また1人で何とかしようとしていたヴァンを見て
「困った人だ」とアニエスは思った。
そこも含めて愛しい人なのだが。
「2人で行ったら、人質に危害を加えられる。
嘘の可能性もあるがー。ま、本当のことだと
思って行動することにしようぜ。」
アニエスはヴァンの意見に賛成のようで頷いた。
「俺が1人で来たと相手に認識させる。その間、
アニエスはステルスを使って隙を見て人質を
解放してくれ。」
相手はヴァン1人を指定してきた上に人質も
取っているような危険な人物だ。そう思った
アニエスはザイファで概要を事務所で待機して
いるアーロンたちに伝え、指定された地下水道に
向かうことにした。一応あの人にも連絡して
おこう。

地図を頼りに進んで行くと暗闇の中、黒い
ジャケットを着た男性が待ち構えていた。
男性の側にはロープで手足を縛られ、動けない
老人と子供がいた。ヴァンはアニエスに目配せをし、
ステルスで姿を消したアニエスは人質の元に
駆け寄った。それを確認したヴァンは人質を
解放する隙を作るため、演技し始めた。
「おいおいいくらなんでも大人げなさ過ぎ
じゃねーか?」
なんとでも言え。」
そう言うと、隠し持っていたナイフでヴァンを
攻撃してきた。アニエスが人質のロープを切った
のは確認したが、出口までは誘導出来てなかった。
仕方ない。人質のロープを切ることが出来たし、
上出来だ。まだ時間を稼ぐ必要があるな。
そう判断したヴァンは黙って攻撃を受けた。
斬り付けられた痛みで顔が歪んだが、必死に耐えた。
それを見たアニエスは一瞬動きが止まったが、
人質を逃すことがヴァンの助けになると判断し、
人質を逃すことを優先した。それでいい。
やっぱりアニエスは頼りになる助手だ。居なく
なった人質に気が付かれないため、ヴァンは
演技をし続けた。
「いきなり斬りつけてくるなんて物騒だな。
で?なんか理由があんのか?」
「なんかだと。ハハハッ!!」
男は狂ったように笑い始めた。
「アンタが!邪魔したせいで!こっちは
人生めちゃくちゃなんだよッ!!」
そう言って憎悪に染まった顔を見て思い出した。
コイツは確かー。
「あのときの半グレか?」
ヴァンがアニエスたちに出会う前に護衛を
頼まれたことがある。あるお嬢様を送り届けて
欲しいといった依頼を。その際、襲ってきた
半グレが目の前にいる男だった。
「アンタがあのとき、邪魔したから!
全て失ったんだよ!!」
襲ってきた半グレは依頼主の方から処遇は
任せて欲しいと言われた。
その結果、彼は全てを失ったのだろう。
「ヴァンさんのせいにしないで下さい!!」
人質を逃すことに成功したアニエスはヴァンを
守るようにヴァンの前に出てきた。
「お前、助っ人を呼んだのか?人質がー。」
そう男が言ってから気が付いた。側にいた筈の
人質が1人もいないことに。
ちょっと油断し過ぎたんじゃねーか?
人質なら、全員逃したぜ。」
「く、くっそ!!こうなったら!!」
そう言って男は、軍用魔獣を呼び出した。
「は、ははッ!!高い出費だったけど、
コイツはいい!!」
「軍用魔獣!?」
「全てはお前に復讐するためだ!」
男の執念を甘く見過ぎでいた。ヴァンは
自分の見通しの甘さに舌打ちしながら、
何とか場を切り抜けるために行動することにした。

戦い始めて数分ー。ヴァンたちは苦戦していた。
男だけだったら、勝てる可能性はあっただろう。
だがー。倒しても倒してもキリがない。
「チッ!どんだけ用意してあるんだよ!
アニエス、大丈夫か!?」
「はい!まだいけます!!」
アニエスの顔には疲れが滲んでいたが、
諦めるという選択肢はないようだった。
諦めが悪い2人を見て、男はイライラして
きたようだった。
「なんで諦めねーんだよ!!さっさと諦めろ!」
昔なら、諦めていたかもな。」
「ヴァンさん?」
そうだ。昔ならこの状況に立たされたら仕方ない、
ここまでの人生だったって諦めていた。けどー。
「俺が諦めようとしたら、許してくれねー奴らが
いるんでな!」
フェリにアーロン。リゼットにカトル。
ジュディスに師父。諦めて全てを投げ出そうと
する度に駆けつけてくれる大バカな仲間たち。
それからー。
「俺は諦めたくねーんだよ。
こんなどうしようもない奴の手を取ってくれた奴が
いるんでね。」
そう言ってアニエスを見た。アニエスは
そんなヴァンを見て力強く笑ってくれた。
アニエスが側にいるから、もう少し頑張っても
いいって思える。だから絶対に諦めない。
ヴァンたちの強い気持ちを見て、男はたじろいた。
「ふ、ふん!!今だけだ!!そんな強気なことを
言えるのは!行け!奴らをー。」
そう言って軍用魔獣をけしかけようとしたが、
一瞬で消え去った。
「はっ?」
「なんだ?それだけか?」
そう言ってアーロンは軍用魔獣を次々と倒して
行った。周りを見ると、ヴァンを守るように
アークライド解決事務所のメンバーが集まって
いた。軍用魔獣が次々と消えていくのを見て
ビビった男は逃げようとしたがー。
「Xeros!!」
その掛け声をカトルがかけるとXerosは走り、
男を取り押さえた。
「離せッ!!離せよ!!」
暴れる男をアークライド解決事務所のメンバーは
取り囲み、言った。
「で?どうする?コイツ?」
「CIDかマルドゥックに引き渡す?」
そうジュディスが言った途端、男は青ざめて
必死になって懇願してきた。
「た、頼む!!許してくれ!!
な、なにが望みなんだ?ミラか?女か?
何でも用意する!!」
救えないわね。」
「なら、あとはこちらに任せて貰おう。」
そういってきたのはヴァンの幼馴染でもある
ルネであった。
「お前、どうしてここに。」
「そこにいるお嬢さんに頼まれたのでね。」
驚いてヴァンはアニエスを見つめた。
「あはは。一応、保険は掛けておいた方が
いいって思って。」
そこから先はルネの指示で素早く事態は
解決していった。

そして、ヴァンは説教を受けていた。
「もう!酷いです!呼んでくれなかったなんて!」
バカは死んでも治らないってのは
このことだな。」
よくないよね。」
言い返せなくて黙るしかなかった。
「ま、あたしたちの説教はこれぐらいにしてー。
アンタ、アニエスにちゃんとお礼言って
おきなさいよね?」
ああ。」
あのタイミングで来たということはアニエスが
事前に連絡をしてくれていたのだろう。
ルネに連絡を入れてくれたことといい、
アニエスに命を救われたようなものだ。
そう思ったヴァンは屋上にアニエスがいると聞き、
屋上に向かった。ヴァンが来たことに気が付いた
アニエスは心配そうにヴァンに駆け寄った。
「ヴァンさん、身体の方は大丈夫ですか?」
「俺は大丈夫だ。アニエスは?今日、 
沢山戦って大変だっただろうが。」
「大丈夫です。体力はある方というより、
ヴァンさんの元で鍛えられましたから。」
そう言って笑うアニエスは嘘を付いているようには
見えなかった。
ありがとうな。」
ヴァンさん。」
「お前がみんなに連絡してくれたんだろ?
おかげで助かった。」
「私がしなくてもみなさんなら、来
ていたような気もしますけど
助けになったようならよかったです。」
「それでもだ。お前が俺に手を
差し伸ばさなかったら、1人でまた無茶して
もっと酷い目にあっていたかも知れない。
だから、ありがとな。」
思えば、アニエスに何度も助けて貰っている気が
する。1人で去ろうとしたら、その度に迎えに
来てくれて。何度感謝しても足りないぐらいだ。
「なんか願いとかあるか?」
「どうしたんですか?いきなり。」
「いや、今回ー。今回だけじゃねーか。
いつもお前に助けて貰っているからな。
なんかお礼をしたいって思っただけだ。
俺に叶えられる範囲でお願いするぜ?」
お願いですか。」
アニエスは暫く考えた後に言った。
「考えたんですけどー。特にないみたいで
すいません。」
なんか無いのか?映画を一緒に観たいとか
スイーツを食べたいとか。」
「もう叶っていますから。
だから、思い付かなくて。」
「叶っている?」
「はい。ヴァンさんと一緒にいるってことだけで
充分なんです。」
「ーッ。」
そう言って笑うアニエスは、とても魅力的で目
が離せなかった。
ヴァンさん?」
アニエスに見惚れていたなんて恥ずかしくて
言えないので、誤魔化すことにした。
「たっく。欲が無さ過ぎだろ。」
「そうかも知れませんがー。
私にはこれで充分です。」
「ま、お前が充分ならそれでいいぜ。」
「はい!」
そう言って笑うアニエスと夜空を一緒に
眺めていたら、アーロンたちがきた。
「様子が遅いから見にきたがー。何してんだ?」
アーロンから見れば、ボーッとしているように
見えたらしい。
「何にも。強いて言えば、空を眺めていた。」
「空?」
そう言って空をアーロンが眺めたら、流れ星が見えた。
「今の流れ星か?」
「本当ですか!?」
「今日は空が澄んでいるし
天体観測にはいいかも。」
「じゃあみんなで天体観測しましょう!」
ワイワイと賑やかになったのを見て、
アニエスは言った。
「私の願いはー。みなさんとこういう風に
変わらない日々を過ごすことなんです。」
悪くねー願いだな。」
そう言ってヴァンはアニエスと空を眺めながら、
笑い合った。