アカ
2025-08-02 00:53:19
3473文字
Public 8/9のイベント展示小説
 

キミの代わりはいない

黎IIの侵食で仲間を傷つけたことに悩むリゼットさんとそんなリゼットさんを支えるカトルくんのお話。カトリゼだけど、親愛的な感じで書きました。

リゼット・トワイニングは、アークライド解決事務
所の書類を整理しながら溜息を吐いた。
リゼットは、自分がまた溜息を吐いていることに
気が付き、そんな自分に嫌気が差した。全ては
自分が招いたことなのに。まるで被害者で
あるかの様に考えているそんな自分に。

侵食騒ぎから数日が経ち、暫くは様子を見ていた。
だが、何も起こらなかったことから「今のうちに
休んでおいて、いざというときに動けるように
しよう。」という話になった。それぞれが
好きなことをして休暇を満喫している中、
リゼットが選んだのはアークライド解決事務所の
書類の整理だった。そう言い出したとき、
雇い主であるヴァン・アークライドは反対して
きた。
「侵食のことを気にしてんのか?」
「それは。」
「言っただろう、気にするなって。」
「ですが、わたくしの気が済みません。」
ヴァンは、溜息を吐きながら言ってきた。
しょうがねぇ。分かった。無理のない範囲で
頼む。無理しているって分かったら何がなんでも
やめさせるぜ。」
リゼットはヴァンにお礼を言ってアークライド
解決事務所の仕事をすることにした。

そんなわけで、アークライド解決事務所の仕事に
取り掛かっていたのだが1人でいるとどうしても
考えてしまう。いくら侵食で思考が侵されていた
としてもアークライド解決事務所のみんなに
襲い掛かったのは事実であり、もしかしたら命
だって奪っていた可能性を。ヴァンにそこを
聞いたら、上手く誤魔化された。だが、リゼット
はなんとなく察した。ヴァン様は優しい方だから。
わたくしを傷付けないために嘘をついた。
カタカタとキーボードを鳴らしている間はいい。
仕事があるってことはその間は思考を停止
出来るから。きっとヴァン様も理解している。
わたくしが何故仕事を引き受けたのか。
だからこそ「無理しているって分かったら
止める。」なんて言ってきた。ふと時計を見たら、
深夜になっていた。流石にやり過ぎか。
そう思ってリゼットは仕事を終わらせようと思い、
立ち上がった。すると、足元がふらついた。
あり得ない、この身体になってから
疲れるなんてー。ああ、そうか。通常より
飛ばしすぎたから。そう思った途端にリゼットの
意識は途絶えた。

なんだろう?暖かいものが掛けられている?
目を開けると、毛布が掛けられていた。
いったい誰が?そう思って辺りを見渡すと、
見知った声がした。
「リゼットさん!?よかった。 
目が覚めたんだね。どこか変な場所ない?」
そう言ってリゼットを心配そうに見てきたのは、
リゼットの仲間であるカトル・サリシオンで
あった。リゼットは混乱した。
なぜ、カトル様がいるのかと。
どうやら顔に出ていたらしい。カトルは
苦笑いしながら、説明してくれた。
「事務所にまだ電気が付いていたから、
心配になって。」
リゼットは時計をチラリッと見ながら言った。
「ですが、随分と遅いー。」
「うん、アーロンさんが「裏解決屋最強は誰だ!
セブンスハーツ戦を開催するぜ!」って感じで
いきなり開催し始めてアーロンさんとヴァンさんの
勝負付かなくてさ。最終的に腕相撲で決着を
付けようとした結果、時間が長引いた感じ。」
その様子が思い浮かび、リゼットは思わず
クスリッと笑った。カトルはそんなリゼットを
見て安心したように微笑んだ。
「よかった。」
「えっ?」
「最近、リゼットさん思い詰めていたから
心配で。」
そう言うカトルは、心配そうな瞳をしていた。
リゼットは、それを見て申し訳なさでいっぱいに
なった。
すいません、カトル様。ご心配を
お掛けしました。ですがー。」
だが、リゼットが全てを話し終わる前にカトルは
話を切り出した。
「大丈夫な筈ないよ。リゼットさん、
倒れていたから出来る限りのメンテナンスをし
たけど無茶し過ぎだよ。」
「カトル様?」
「リゼットさんが倒れてるのを見て、血の気が
引いた。なんでいつも無茶するの。僕を庇った
ときもそうだよ!!もっと自分を大事にしてよ!!」
カトルは、目を潤ませながらリゼットに言った。
リゼットはそんなカトルの手を取り、
両手で包み込んだ。
「ありがとうございます、カトル様。」
「えっ?」
「わたくしのために、泣いて下さって。」
「そんなのそんなの当たり前だよ!!」
だが、リゼットは首を横に振りながら言った。
「当たり前ではありません。作り物のわたくしは
ある意味、代替が効く存在なのです。」
。」
「もし、ザイファが壊れてしまって使えなく
なったら?別の機種に変えますよね。わたくしは
そのような存在なのです。
だからこそわたくしのためにー。」
そんなリゼットを睨みながらカトルは言った。
「リゼットさんの代わりなんかいない!!」
「えっ。」
「例えば見た目も中身もリゼットさんそっくりの
人がいたとするよ。でも、それはリゼットさん
じゃない。僕が大好きなリゼットさんじゃない
んだ!!頑張り屋さんで、努力家で、どこまでも
前向きに向き合える。僕が尊敬してなりたいって
思ったリゼットさんじゃない!!」
リゼットは、困ったように言った。
まさか告白されるとは思いませんでした。」
カトルは首を傾げていたが、何かに気付いたように
焦ったように捲し立てた。
「いやこれは!違くて!!違くないけど!!
なに言ってんだろう!?僕!!」
リゼットは、イタズラっぽく笑いながら言った。
「冗談です。カトル様は仲間として大事に
思っていることを伝えたかったのでしょう?」
「う、うん。そんな感じ。」
リゼットは肩の力が抜けたのか話すことにした。
「わたくしは、侵食でみなさまを傷付けました。」
「でも、それは抗えなかったし。」
「ですが、僅かな違和感を感じながらわたくしは
戦うという選択肢を取ってしまった。」
「それは。」
「だからこそ悩んでしまいました。
どうしたら償えるのかと。」
カトルは、悩んでいたがやがて口をゆっくり
開けて言った。
それならさ、僕と一緒に考えない?」
「えっ?」
「アニエスさんが言っていたよね。『知った以上は
支え合えるはずです。』って。だから、
リゼットさんが悩んでいる事情を知ったからには
支えたいと思うんだ。もちろん僕だけじゃなくて
ヴァンさんたちも同じことを言うと思う。」
リゼットは、悩みがちにカトルに聞いた。
悩んでもいいのでしょうか?」
「いいんだよ、それを許して一緒に歩むのも
仲間だって思うから。リゼットさんたちが
僕の正体を知っても普通に接してくれたように。」
リゼットは気が付いていたら目を潤ませていた。
ずるいです。カトル様は。」
「心配させた分ってことで。」
「ふふっ。」
「あははっ。」

そんな笑っている2人を見守る影があった。
人気役者でもあるアーロン・ウェイはヴァンに
耳打ちをしていた。
おい、オッサン。お前行けよ。」
「らしくないな、アーロン。《麒麟児》の名が
泣いているぜ?」
「ここは、アークライド解決事務所の所長としての
力をだな。」
ヴァンとアーロンは、どっちが行くか想像以上に
騒いでいた。当然こうなる訳でー。
「ヴァンさん、ヴァンさん。」
「なんだ、アニエス。
俺はコイツに所長としてー。」
「カトルくん、見てますよ。」
アークライド解決事務所の助手である
アニエス・クローデルのその言葉にヴァンは
動きが止まりゆっくりと首を回した。そこには、
冷ややかな目をしたカトルがいた。
「あー、カトル。これはだな。」
どこから見ていたの?」
「『リゼットさんの代わりなんかいない!』
辺りから。」
カトルは、うずくまりながら声にならない叫び声を
あげていた。
「あぁぁぁっ!!」
そんなカトルをアーロンは、ニヤニヤしながら
見ていた。
「いやー、熱いね〜!『僕が大好きな
リゼットさんじゃないんだ!!』だっけ?」
「!!」
フェリは、カトルをフォローしようと頑張って
いたが逆にトドメを刺していた。
「落ち込むことないと思います!
情熱的で素敵でした!カトルさん!!」
アーロンは、呆れた風にフェリを見ていた。
むしろすげーわ、ここまで
的確に刺せるとか。」
「?」
カトルがリゼットに言った内容は暫くいじられ、
迂闊なことは言わない方が
いいと思ったカトルであった。