アカ
2025-03-27 04:21:10
2536文字
Public ヴァンアニ
 

素敵な誕生日

ヴァン生誕のときに書いた話。素敵な誕生日になることを祈って。

ー誕生日が嫌いだった。だって、自分が周りと違う存在だって自覚してしまうから。
「今、なんつった?」
モンマルトで朝食を取りながら、アーロンは聞いてきた。
「近々駅前で限定販売されるスイーツのことか?
そうか、お前も気になるのか。仕方ねぇ!
教えてー。」
「そっちじゃねぇよ。今日が誕生日だって話だ。」
そっちか。そういえば、先程誕生日で割引される
スイーツがあるから、利用する予定だと話したこと
をヴァンは思い出した。
「まぁな。」
「たっくそういうのは早く言えや。」
何故言う必要があるのだろう。そう思って
いたら、次々に誕生日を言わなかったことに
文句を言われた。
「まったく!なんで黙っていたのよ!」
「ヴァンさんってそういう場所あるよね。」
「おい、なんでそこまで言われなきゃ
いけねーんだよ。」
「誕生日ですし!盛大に祝いたかったです。」
フェリの純粋な眼差しを見てヴァンは言葉に
詰まった。
「あー、そのなんだすまん。」
「ま、反省をしているようだし、許してやるよ。」
なんでお前が威張っているんだとヴァンは思い、
口から出そうなのをグッと堪えた。
「では、さっそくケーキを手配しましょう。」
そう言ってケーキを手配しようとしたリゼットに
ヴァンは断りを入れた。
「そこまでしなくていいぜ。今からだと
大変だろうが。」
「ですがー。」
ヴァンは自分にそこまでして貰う価値はないと
思い、断ろうとした。
「では、ケーキをみなさんで作りませんか?」
そう発言したのはアニエスだった。
「賛成です!!」
「たしかにみんなで作ったら楽しいし、
思い出にもなりそうだね。」
「では、ビクトル様にお願いしてキッチンを
お借りしましょう。」
ヴァンは事態が知らない間にどんどん進行している
ことに戸惑った。
「作る方が手間だろーが。そこまでしてー。」
「どうせアンタのことだろうから「そこまでして
貰う必要はない」って思っているでしょうね。」
思っていたことをジュディスに看破されて
ヴァンは気まずそうに目を逸らした。そんな
ヴァンにジュディスは溜息を吐きながら、言った。
「いい?与えてくれぱなしは、イヤなの。」
与えぱなし?なんのことだ。
「はぁ。本当に自覚してなかったのね。」
だから、何の話だ?」
プレゼント。」
「はっ?」
「アンタ、旅先でいつも買ってくれたでしょ。」
だが、ヴァンはそれを与えたと思っていなかった。
買うのは当然。お返しなんて期待してない。
「だから、返させなさい。借りっぱなしとか性に
合わないのよ。」
そこまで言われたら、仕方ねーな。」
ヴァンは困ったように、嬉しそうに言った。

そうしてケーキを作ることになった。
ーヴァンがケーキの監督役として。
まさかこんな面倒くさい役割をやるとはな。」

ヴァンが監督役をやることになった理由は
アニエスの発言がキッカケだった。
「ヴァンさん、よかったら監督役としてケーキの
感想をくれませんか?」
断ってもよかったのだが、うまく断る理由が
思い付かず、引き受けてしまった。
「ヴァンさん、これとこれどっちがいい?」
右だ。」
「ヴァンよ、混ぜたのだがー。
これぐらいで充分か?」
ちょっと足りないので、もう少し混ぜて
頂けると。」
この監督役が以外にも大変だった。ヴァンは
引き受けた数分前の自分を呪った。
「ヴァンさん、楽しんでますか?」
ヴァンがこんな目に遭う理由になったアニエスを
恨めしそうに見つめながら、言った。
お陰様でな。たっくなんの嫌がらせってんだよ。」
「すいません、でもー。思い出を作るには
こうするのがいいって思ったんです。」
「え?」
ヴァンは驚いた顔でアニエスを見た。
ヴァンさん、誕生日嫌いですよね。」
そんなことねーよ。」
ヴァンは嘘をついたが、アニエスにすぐ嘘が
バレた。
「だって、誕生日の話をすると避けますし、
悲しそうな顔をしてます。」
そう真っ直ぐ言ってきたアニエスに誤魔化せないと
判断したヴァンは素直に話すことにした。
まぁな。誕生日って自分の誕生を祝う日だろ。
俺は生まれたときに孤児院に捨てられた。
だからー。嫌でも自覚しちまう。親に祝福
されなかったって部分で。」
ヴァンさん。」
そう言うと、アニエスはヴァンの両手を
包み込みながら、言った。
ヴァンさんは悲しい思いをたくさんしたんです
よね。でも、大丈夫です。ヴァンさんが誕生日が
好きになれるようにー。自分の誕生を祝えるように
私たちは協力しますから。」
周りを見ると、みんなが頷いていた。
随分とお人好しが集まったもんだな。」
「ふふ。ヴァンさんの人徳かと思います。
悲しい思い出は消えないけどー。あとから楽しい
思い出は継ぎ足せるって思います。だからー。
ヴァンさんに楽しい思い出を作って欲しくて
発案したんです。」
まったく、どんどん成長しやがる。」
「伸び盛りですから。」
「アニエスさーん!聞きたいことが
あるんですけど。」
「呼ばれているみたいなので、行きますね。」
アニエスが去った後に聞こえないぐらい小さく
ヴァンは呟いた。
ありがとな。」

完成したケーキを見てヴァンは感動した。
「出来たぜ理想のケーキが!!」
「えぇヴァンさん、泣いているんだけど。」
「クッソウゼェ。」
そんな会話をしながら、ヴァンはもう一度
ケーキを見た。みんな好き勝手に作ったので
バランスが悪い場所がある。几帳面にクリームを
塗っているカトルとリゼット。ケーキを焼く際に
時間を間違えて焦がしてしまったジュディス。
お互い対抗心を燃やし、デコレーションが派手な
アーロンとフェリ。職人のような技を披露している
ベルガルド。そしてー。素朴だが、家庭の優しさに
溢れているアニエス。全員が協力したケーキには
アークライド解決事務所らしさで溢れていた。
そんなケーキを見ながら、ヴァンは小さく呟いた。
ハッピーバースデー。」
子どもの頃は嫌いで堪らなかった誕生日が好きになれた気がしてヴァンは微笑んだ。