三毛田
2025-08-26 21:59:48
1084文字
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96 096. まだそこに君がいる気がして

96日目
君を探してしまう

「丹恒?」
 気配がして振り返るけれど、誰もいない。
 俺は現地調査。丹恒は聞き込みと資料探し。
 二手に分かれて過ごしているのに、直ぐ側に気配を感じてしまう。
 同行者は、振り返った俺を不思議そうに呼ぶ。
「何でもない」
 首を振って、それから先へ行こうと告げる。
 気の所為のはずだ。
 そう思っていたのに、現地調査が進めば進むほど、丹恒の気配を感じて。
 会いたくて、顔が見たくて、声が聞きたくて仕方ない。
 そこで、そういえば彼は昨日この場所を訪れたと言っていたのを思い出す。
 だからなのだろう。
 まるで残留思念のように、彼の気配を感じる。感じてしまう。
「よし、終わり! すみません。ここまででいいですか?」
 同行者は少々困ったような表情を浮かべたものの、俺が折れないとわかったのか、渋々頷いて。
 今度から、丹恒もつれていくか俺以外に頼んで欲しい。
「ただいま!」
「ん? ああ、おかえり」
 生返事が、ピュエロスから。
 バスローブを身に着けて、珍しく飲月姿で。
 寝そべるようにお腹側を水につけて、読書。
「俺がいないからって、だらけすぎ」
「バニオを終えた後すぐに、リクライニングチェア熟睡するお前には言われたくない」
「はいはい。で、何飲んでるの」
 手にした杯を覗き込む。氷たっぷりの、透明な液体。
「自分で出した水だ」
「お前って、意外とアレだよな」
「アレとはなんだ、アレとは」
 不満そうに、バシャッと尻尾が水面を叩く。
「ずぼらってこと。一緒に入っても?」
「水だぞ」
「じゃあ、出たらでいいや」
「これを読み終わるまで出ないからな」
「じゃあ、英雄のピュエロス行ってくる」
 アグライアに頭を下げれば大丈夫だろう。
『ご自身のルトロで入ればよろしいのでは?』
 初めて伺いを立てた時は、ちょっと呆れたように言われた。
 丹恒が水風呂で楽しんでるから、俺が入れない。と説明したら、ちょっとだけ哀れまれたのは、記憶に新しい。
「ただいまー。まだ入ってる」
「あと少しだ」
 俺がお風呂に入って、雲石市場へ行ってご飯を買って帰ってきても、丹恒は水の中にいた。
「今日は相性がよかったようだ」
「相性?」
「俺の問題だ」
 喉を動かしながら、キンキンに冷えた水を飲んでいく。
「ご飯は?」
「いただこう」
 するっと水から上がり、いつもの姿になる。
 もちろんだが、髪の毛も体も乾いている。なんと便利な雲吟の術。
「いただきます」
「いただきます」
 食べながら、今日のことを話す。
「俺には丹恒だけだから。うん」
「急にどうした」