望月 鏡翠
2025-08-26 11:47:05
903文字
Public 日課
 

#1822 「塞げる」「ルーズ」「いちゃいちゃ」

#毎日最低800文字のSSを書く


 補助スタッフとはいうものの、実際の仕事はルーズな派遣員の監視である。油断を揺るとすぐにサボる。目的を脇に置いて、別のことに精を出そうとする。そういう連中を突き回して、手早く仕事を終わらせるのである。
 僕の担当は特に気が散りやすい性格のようで、少しも油断できない。どこに行ったのか、探すところから仕事が始まる。
 そして、社会性が欠如し人によっては識字能力が全くない彼らに変わり、報告書や申請書を認めるのも、もちろん僕の仕事である。一つの案件に時間をかけ過ぎれば、実績が低くなり給与も下がる。補助スタッフの能力が、派遣員以上に評価されることなどないのだ。
 ギャンブルに興じていようが、食事中だろうが、女とイチャイチャしていようが、問答無用で引き摺り出して働かせなければいけない。ホテルの一室に居ようと、個人の邸宅だろうと関係ない。
 こちらには、その権限があるのだ。
 鍵をもらうと扉を開くと、案の定、テレビを見ながらくつろいでいた。
「何をしてるんですか」
 まだ宿を取るには早い時間だ。一体全体、どうしてこんな時間からくつろいでいるのだろう。
「お、遅い」
 片手をあげて挨拶をする。遅いというなら行き先くらい知らせて欲しいものだ。ベッドでゴロゴロしている体から、シーツを引っぺがす。
「おい」
 思わず乱暴な言葉が出た。
「どうなっているんだ」
 体にぽっかりと穴が空いている。血が出ない体でなければホテルのシーツが大惨事になっていたところだ。クリーニング費用や始末書は書かずに済んだ。
「いや、だから早くきてくれて良かったなと思ったんだよ」
「大丈夫なのか?」
 このままでは活動に支障がある。派遣員として動くことができなければ、強制送還の措置を取る。
「大丈夫にしてよ。塞げるだろ? そうしたら仕事するからさ」
「塞ぐことはできるけど、体に穴は空いたままだからな」
 準備しやすいように個室をとっていたらしい。気が利くところもある。
 僕はため息をついて用意を始めた。
 どう考えても補助スタッフの負担が大きすぎる。上に改善要求を出しておこう。ともあれ、今は目の前の作業に集中だ。