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梶間
2025-08-25 13:19:16
2755文字
Public
カブライ
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週ドロ週ライ「初めてのキス」
カブライ週ドロ週ライ用に書いたSS
ライオスと付き合い始めて早半年ほどがすぎた。お互い忙しい最中、それなりに順調で良い関係を築けていると思う。
恋人らしいことと言えば職務の合間を縫って二人きりで今日あったことを報告したりだとか、普段なら大勢での食事を二人でとったりしている。その時ばかりはお互い時間を気にせず過ごしているのだけれど、話したいことが多すぎて気づけば半年が経ってしまっていた。
ライオスは指先を触れ合わせるだけでも満足げに、普段見せないような柔らかい表情で微笑んでくれるので自分たちにはきっとこれくらいのペースでも良いのだろと思っていた。
でもそれはそれとしてそろそろキスのひとつでもしたいなと機会を伺っているが、いつもいつもタイミングが合わない。
職務を終えた後、二人きりで休んでいたらふと顔が近づいたときには真面目な顔でこう断られ。
「すまない、さっきスライムを使ったゼリーを食べたんだ」
夕食後、ライオスの私室で談笑していたら、会話が途切れたので側に寄ったときは気まずそうにこう断られ。
「実は夕食にちょっと
……
イヅツミとセンシが歩きキノコを採ってきてくれて
……
」
食後はダメだと悟り朝起こしにいったときに顔を寄せれば、眠そうに呟かれた一言。
「深夜に腹が減ってついコイン虫を食べてしまって
……
」
「俺の何がダメだと思う?」
「国を背負う人間が隙あらばキスしようとか助平なこと考えてるところじゃない?」
ホルムに用事があったのでついでに悩みを打ち明けたところばっさりと切られてしまった。
「忙しいんだから用事終わったら早く出てってよね。宰相補佐様もそんな暇じゃないでしょ?」
「それはそうなんだけど」
「しかし流石の悪食王。毎日そんな魔物食べてるんだ」
「
……
ない」
「なに?」
「俺はそんな許可出してない」
「うわこわ、王様は部下の許可が出ないと食事もできないの?」
「だってあの人食べたら食べた分だけ太るから、全員で食事制限かけてるんだよ」
「ふーん、偉くなると大変だね」
そこで会話は終了させられ、ホルムにはこっちだって忙しいんだから、と追い出されてしまった。
帰り道を歩きながら、ライオスとの今までを思い返す。告白して付き合い始めて、お互い立場もあるし忙しいけれど周囲の目を伺いながらライオスは随分自分を大切にしてくれていると思う。
毎回毎回、魔物を食べたからと断られるのは、自分が魔物全般が苦手だということを気遣っているからこその発言だ。
健康のためにも一食くらいは控えたらどうかとは思うが、王として国を背負う彼の数少ない楽しみならばすべてを邪魔するのも気が引ける。
もしかしてこのまま一生ライオスとはキスの一つもできない関係で終わるのだろうか。
日々忙しいからもしかして数年はこのままかもしれない。
まあ顔を覚えてもらうまでが長かったし、今は側にいられることを思えば数年くらいは待ってもいいのかもしれない。
仲間には懐に潜るためならなんでもする男と言われていたのに、ライオス相手にはそこまでするのに躊躇してしまうのは、魔物への忌避感故だろうか。
竜の肉を食べたときは多少吹っ切れたと思えたのに、幼いころの光景はいまだ脳裏から消えたことはない。毎日の忙しさで思い出さない日が少し増えたくらいだろうか。
頭の奥底からあの時の人々の叫びが聞こえたところで被りを振る。今は思い出している場合ではない。耳鳴りのように響く記憶に蓋をしながら、今夜は久々に寝酒でもしようかと思案する。
こういう夜には少しキツいくらいの酒が良い。喉が焼けるような酒を少しだけ煽って、考えることすらあやふやになって気がついたら朝になっているくらいのやつを。
確かまだ部屋に酒はあったよな、と多少散らかした自室の様子を思い返していると、なぜか部屋の前にライオスがいた。
今日はとくに約束もしていないし、いつ帰るかも伝えていなかったはずだ。
部屋の扉の前に座り込んでなにか本を読んでいたライオスは、こちらが声をかける前に本を閉じた。こちらが何かをする前に向こうが気がついてくれる。たったこれだけで頰が緩みそうになるくらい嬉しいのだから、自分は相当惚れ込んでいるのだろうな、と実感する。
「おかえり」
「ただいま戻りました。なにかありました?」
特に約束はしていないのだから、彼がこうして待っているということはなにか直接伝えることができたのかもしれない。そう思って尋ねたが、ライオスは少し気まずそうに頰をかいた。
「いや、何かあったわけではなくて
……
ただ、君の帰りを待ちたくて」
その、恋人として。
小さく呟かれたその言葉を聞いて、咄嗟に口が動かなくなる。
ライオスがなにか理由がなければ自分のことを待っているはずがない、そう思い込んでいた。それが伝わってしまったのか、すぐに返事を返せないでいるとライオスがますます自信なさげになっていく。
「
……
め、」
後に続く言葉は『迷惑だっただろうか』辺りかもしれない。
私事でかけられる迷惑ならいくらでもかけてくれて良いし、そんな遠慮なんかして欲しくない。
でもそんなところの線引きがいつまでも上手くできないのが、なによりライオスらしい。
とにかく自分の帰りを待ってくれていたことが嬉しくて嬉しくて、ライオスの首元にすがりついて飛び上がるようにキスをした。
不意にされたからかこちらを引き剥がそうとするライオスに、情けないぐらい必死に力を込めていたらふと力が緩んだ。そのままなにも言わずに受け入れてくれたが、やがて息苦しそうに顔が真っ赤になっていくので唇を離す。
「
……
嫌でしたか?」
「や、嫌ではない、ないんだが、その、さっき
…
」
先ほどとはまた違う気まずそうに言い淀む様子に、ああこれはいつものやつだったか、と思いながらライオスの胸ぐらを引き寄せて再度キスをした。
今度は唇の隙間から舌を差し入れ、歯を一本一本確かめるように舌で辿る。上顎も、頰の内側も余すことなく舌先でなぞるとライオスは喉の奥で、ぐう、と唸った。
「ちゃんと磨いてくれてるじゃないですか。なんも残ってませんでしたよ」
にこり、と笑って告げると、ライオスは呆気にとられたようにぽかん、と口を開けていた。
初めてのキスは、少しだけ泣きたくなるような温かさだった。
「いつも食べた後は磨いてはいたんだけれど、それでも君は嫌がるかもしれないと思っていて」
「別にあんたが食べた後くらいはもう気にしませんよ。そんな気にしてたんすか」
「もう君には食に関することで嫌な思いをさせてくないな、と」
「その一言で今の俺には十分ですよ」
「そうなのか?じゃあ魔物食も少し」
「それとこれとは話が別ですが」
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