i_cho_co
2025-08-25 04:53:03
1330文字
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黄泉の国へ連れ去って!

DC🦁死亡ifのれめしし
死んでなお😈に手料理を食べさせようとする🦁
若干ホラーかもしれない

「おら、食えよ。腹減ってんだろ?」

その言葉と共にテーブルに並べられたのは、いつにも増して手の込んでいそうな料理の数々。相変わらず凄いな敬一君、一つも料理名が分からない。礼二君あたりが喜びそうな美味しそうな肉と、スープと、他にも色々。あ、ローストビーフのサラダは流石の俺でも分かる。これら全てが晨君たちの為でなく、俺の為だけに振る舞われている。ああきっと味付けも俺好みなんだろうな。俺のことだけを考えて、俺が喜ぶように、敬一君が心を込めて作った料理。

「あー、ごめん。今日は食欲ないかも俺」

それら全てを我ながら酷すぎる嘘で断って、帰るね、と席を立つ。誰の目にも分かりやすい拒絶の合図をしたというのに、敬一君は俺の手を掴んで引き止めた。

「いらねえのか?叶」
「ごめんね敬一君、外で食ってきたからお腹いっぱいでさ」
「お前がこの前食いたいって言ってたやつもあんぞ」
「ごめんもう何も入る気しなくて」
「一口くらいは入るだろ」
「ごめん」
「食えよ、なあ」

ぎりぎり、と俺の手首を掴む手に段々と力が込められていく。振りほどこうにも流石に鍛えてるだけあって敬一君の身体はびくともしない。

「しょうがねえな。おら、口開けろ」

俺の手首を押さえつけた手に今度はスプーンを握って、スープを一口装って差し出してくる。あーんなんて、今までしてくれたことあったっけ?そこまでして俺に手料理を食べさせたいのなら、と思わず受け入れたくなる衝動になんとか抗って、俺は差し出されたスプーンを止めるべく手をかざす。

「ごめんな、敬一君」
「何でだよ、冷製スープだから熱くねーぞ」
「ごめん、そういうことじゃなくて」
「なあ叶、どうして食ってくれねーんだよ」

こちらに食べることを強制する言葉は食ってくれよ、お願いだから。という懇願に変わる。切なげな表情の敬一君からまた言葉が漏れる。お前が食ってくれないとお前のこと、連れて行けないだろ。
その言葉を聞いて俺の予想は間違ってなかったことを悟る。
あの日死んだ敬一君が化けて出てきて、俺に手料理を食べさせたがる理由。あの世の世界の食べ物を生者が食べることでこの世に戻れなくなるという言い伝え。

……確かに幽霊になれたら会いに来いとは言ったけど。けどさあ、連れて行けとは言ってないしヨモツヘグイなんて幽霊通り越して悪霊だろ、もう」
「ただ会いに行くよりはオメー好みだったろ?」

さっきまでの切なげな表情はどこへやら。一転して得意げな顔で敬一君は笑う。ああもう、お前ってやつは本当に、

……俺を魅せるのが上手いな、敬一君」

最高に俺好みだよ、死ぬつもりなんて更々なかったのに、今すぐ連れてってほしいくらい。
ああでもちょっと待って、敬一君の思いが詰まった俺の為だけの最後の晩餐だ。どうせ食べるなら味わいたいし、さっきあーんもしようとしてくれてたよな?

「食べさせてよ、敬一君」
「おう、しっかり味わえよ」

すっかり悪霊に魅入られてしまった俺は敬一君の手に握られたスプーンから一口、スープを飲み下した。
ああ、結婚式のファーストバイトもこんな感じなのかな、とふと思う。結ばれる為の儀式という点では同じだろ?