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syanpon
2025-08-25 03:04:13
4529文字
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ゆるんでいるからしめられる
現パロ(大学生)
オトスバ
目を覚ますと見知った天井だった。
ゆっくりと体を起こすとオットーの体の動きに合わせて金属がシャリシャリと鳴り、四肢の違和感を訴えてくる。
手錠と足枷だ。
右手と左手をつなげる両手につけられた金属製のそれはオットー自身の体温でぬるくなっている。足につけられたものには長いチェーンがついておりドアの先へと続いていた。鎖のいく先を目で追っていると足音と共に見知った顔が現れる。
「ごめん」
開口一番彼から出てきたのは謝罪の言葉でオットーはふむと考える。その沈黙を非難と受け取ったのだろうかスバルが上擦った声をあげて謝罪を重ねる。
「ごめん、本当にごめん。こんなことしてダメだって、許されないってわかってる! でも、でもほんの少しでいい、少しでいいからここにいてくれ
……
」
「ナツキさん」
オットーの呼びかけにスバルはびくりと肩を揺らす。恋人を監禁しようとしているのだ。オットーが今自分に対してどんな目を向けているのか考えたくなくて、見たくなくてスバルは視線を足下へと落とすが自分が恋人に巻きつけた醜い執着が横たわっているのを視界に捉え、自分の勝手さにほとほと呆れる。
「ナツキさん」
もう一度名前を呼ばれる。
続く言葉はなんだろうか、こんなバカなことはやめろ、それとも早く解放しろと責め立てられるだろうか。どんな恨み言も聞くつもりで始めたことだが別れると絶交だけは聞きたくないな、なんてまた自分勝手な最悪な想像に思いを馳せる。
「いくらでも詰ってくれていいか
――
」
「この手錠、ゆるすぎません?」
スバルが顔を上げた先、そこには困ったような顔で自身の手錠に指を通すオットーの姿があった。
「
……………………
え?」
「この手錠ゆるすぎません? ほら指一本以上の隙間ありますよ」
人差し指を手錠の間に通してほらと言った調子で見せてくる姿はいつも通りすぎてスバルは口をパクパクさせ、謝罪と言い訳を詰め込んできた頭から必死に言葉を探す。手錠、手錠が緩すぎると言ったのかこの男は。
「い、いやきつくて擦れたらオットーが痛いだろ」
「思いやりですり抜けられたらどうするんですか。この足の鎖も長すぎません
……
な、なが、いや長すぎる引っ張っても引っ張っても鎖!!」
「家の中で行けないところあったら不便じゃないか?」
「玄関まで余裕すぎる!あんた僕が扉開けて助け求めるとか考えないんですか!?」
「うぐ
……
」
オットーの圧に押されてスバルは口をまごつかせる。叱られるのは仕方がないと思っていたが難癖の付け方が想像と違いすぎる。なんで監禁のやり方に対して被害者が文句をつけているのだ。しかもオットー自身が不利な方向に!
「なんでお前が意欲的なわけ?」
「いえ、ナツキさんの監禁の仕方があまりに杜撰で
……
」
「ずさん」
「あちこち穴がありすぎてつい
……
」
「冒頭の一瞬のシリアス返してくれない?」
調子を完全に崩されたスバルが文句をつけるのもお構いなしにオットーはゴソゴソと身を捩る。器用なものだなと見つめているとまたしても男の顔が険悪になった。
「なんで僕のポケットに携帯入れたままなんですか! バカなんですか!?」
「帰り遅くなったらオットーの親とか友人心配するだろ」
「警察呼んで一瞬で終わる可能性の方が高いだろ! 大学生の一人暮らし、そうそう心配されませんって。あと僕の友人はあんたしかいません」
腕を上下に動かしてコミカルに文句をつけてくる。鎖がその動きに合わせてじゃらじゃらと揺れた。「腕も長すぎるな
……
」なんて呟いた声には聞こえないふりをする。
監禁といったってほんのちょっと不安になったスバルがオットーのことを独り占めする時間が欲しかっただけなのだ。面と向かって甘えることができずにこんな関係性ぶち壊しの手段をとってしまっているが不自由をさせたいわけではなくむしろここにいる間、自由を奪っている分の埋め合わせにもならないができるだけオットーには快適に過ごしてほしいと思っている。
だから、ただまあ、オットーがこれではダメだと、なってないと言うのであればそれに倣う必要があるかもしれない、なんて思ってスバルは頭を掻いた。
***
「なんかこうも受け入れられちゃうと調子が狂うんだけどとりあえずお昼にしない?」
腹が減ってはなんとやら。
スバルはそう提案し、オットーを連れてリビングに移動する。大人しくスバルの後ろをついてきているのを足元の鎖が擦れる音で確認しながら「あのですねナツキさん」
「
……
なに」
「閉じ込めている相手にこうも簡単に背後取らせたらダメでしょう。殴りかかられたらどうするんですか。馬鹿みたいに長い鎖だって武器になるんですよ」
「善処するわ」
「いま!なおす!」
いうが早いかオットーは大股でスバルの横に並び立とうとする。
「あ」
「へ?」
と、鎖をギュッと踏んづけたオットーがバランスを崩してスバルの横でビタン!と倒れる。
「
…………
鎖、外す?」
「だからそれじゃあ意味がないでしょ
……
」
数秒の沈黙の後、のそのそと起き上がったオットーの額と頬をさすったスバルがそう提案すると痛みで目尻に涙を浮かべた男はまた、そうやってスバルにダメ出しをした。
「待ってください」
「今度はなんだよ」
「今何しようとしてます?」
「え、ご飯食べるから手錠を外そうとしてる」
「僕の言ってることが何にも伝わっていない!」
「うお、あんま暴れんなって次はカレーの皿に顔面ダイブする気か?」
指先で手錠の鍵をいじりながらスバルが困った顔をして首を傾げてくる。その姿と危機感のなさにオットーは今日何度目かわからないため息を吐いた。
「ゆるゆるの手錠な時点でダメですけどそれでも一定の拘束力はあるわけですから。これ外して僕が鍵奪って逃げ出したらどうするんですか」
「え、でもカレー食べにくいぞ」
「あんたが食べさせてくれればいいんじゃないですか?」
そういうなりオットーはあ、と口を開け餌を待つ雛鳥のように食事をねだる。その姿を見たスバルはピタリと固まると指先から額までじわじわと身体を赤く染めた。
うぅ、と難語のような唸り声をあげながら震える手でオットーの口元にスプーンを運ぶ。
「あ、あーん
……
」
「んむ。
……
辛口だ。ナツキさんこの辛さ食べられるんです?」
「お、俺の分は別に中辛で作ってある
……
」
「別に僕もそっちで良かったのに。ナツキさん、次ください」
「ぐ、ぐぐぐ」
ふたたびぱかりと口を開けたオットーにスバルは照れ隠しでスプーン山盛りにもったカレーを突っ込んでやることにした。
***
「だから携帯はあんたが持っててくださいよ!」
「お手洗い行くだけで手錠と鎖を外すなー!」
「僕がいる目の前で窓を全開にしない!!」
「連絡取らせるなら中身もちゃんと確認する!」
「あ、クッキーは食べたいです食べさせてくれますよね?」
「お風呂に入れてくれるなら着脱の時だけ手錠外してくれればいいんで」
「だから手錠をほいほい外そうとするな!!!!」
「お前、注文多い」
「某楽曲みたいにまとめないでもらっていいです?」
オットーの髪をシャンプーで泡立てながらぶすりとスバルは男の頭のてっぺんに角を作る。扉の前で待ってるから入ってこいよと送り出そうとしたら「逃げたらどうするんですかあんたも入るんですよ」と言われ、言われるがままにオットーの身体を洗っている始末だ。
下履きも取り上げちゃえば万が一逃げられる格好じゃなくなるし足枷を一々外す必要もなくていいですよなんてアドバイスまでもらってしまった。
これじゃあちょっと装飾の多い同棲みたいなものではないだろうか。
「ナツキさん?」
「
……
ながすぞ〜」
「うぶぶっ!?」
照れも恥ももやつきも全部洗い流すかのようにシャワーを全開でオットーにかけ、流れる湯と泡をじいと見つめていた。
***
「穴だらけなんだよなあ」
「え、パジャマ穴空いてた?」
「あんたの監禁が! 夜になるまであんたが迂闊すぎて僕10回は軽く逃げられると思いましたね」
「
……
なんで逃げなかったの」
ぽつり、とこぼせば手錠のかかったままの腕で頬をするりと撫でられる。ほんの少し眉を下げて慈しみをたたえた青い瞳がスバルを見つめていた。
「逃げる必要がなかったですし。逃げたらあんた、泣くでしょう?」
「
……
ごめん」
「矛盾ばっかで素直じゃなくて、悪い子」
そのままぎゅうと抱きしめられる。
その温もりがどこまでも優しくて、ここまできてもオットーの優しさに縋り付いてしまう自分のことが情けなくてスバルの目からボロボロと涙が溢れ、ぐすぐすとしゃくりあげる。
「ごめんなさい
……
。俺、勝手に不安になってお前のこと考えずに傷つけて、おれ、おれ」
「ああもう泣かないで。
……
まぁこんなにぬるくても監禁は犯罪ですけど」
「通報して、いいよ」
「馬鹿な人、可愛い恋人の癇癪を通報するわけないでしょう」
もう一度強く抱きしめられてから身体を離される。温もりが離れていったことが寂しくて泣き顔を見られるのが恥ずかしくて顔を伏せるとオットーの大きな手のひらがスバルの両の腕を握りしめた。
「ちなみに手錠はいっそ隙間がない方が擦れたりしなくていいですよ」
ガチャン、とスバルの両腕の近くから音が鳴る。
「
……
ん?」
「プレイのとかだとファーがついてたりしますけどあれこそ長時間つけるとなると蒸れますし」
「あの、オットー」
「なんですか?」
「お前、手錠」
右と左を繋ぐ鎖の音が聞こえなくなったのはいつからだっただろうか。
指摘すれば美しい男は可愛く首を傾げてくすぐったそうにわらう。
「言ったじゃないですか、10回は軽く逃げられると思ったって」
「足枷も両足を繋げて歩けなくしちゃえばいいんですよ。動きたかったら僕が抱えて運んであげますから」
「え、え」
「やったことは犯罪ですけどせっかく人一人の自由を手に入れたんだから何したって良かったんですよ。なのにナツキさん、ここにいてくれればいいそれだけでいいって文字通り何にもしてこないし
……
」
混乱している間に足枷も嵌められ、足先に一つ口付けを落とされる。
「本当に可愛い人。1人で悩んで困って怯えて色々飛び越えて強硬手段にでて。でも全部ぬるくて甘さを捨てきれてない」
ころりとソファの上に転がされ、ギシリと乗り上げられてくすくすと笑い声が降ってくる。
文字通り形成逆転。
身動きが取れなくなったスバルの顔を覗き込んでオットーはとびきり綺麗な笑みを浮かべた。
「だから次があるかは知りませんがちゃんとした監禁、教えてあげますね」
そこまで話し、腕の下に囲った男の表情をみてオットーは呆れたように眉を下げた。
「
……
あんた本当監禁する方向いてないですね」
そんなに嬉しそうな顔して、本当に隙だらけ!
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