三毛田
2025-08-24 21:37:07
1091文字
Public 1000字4
 

94 094. 通り過ぎる風の匂い

94日目
迫りくる雨の匂い

94 094. 通り過ぎる風の匂い
 通り過ぎた風が運んだ匂いがなんだか嗅いだことのあるものの気がして、足を止め鼻を動かす。
「穹?」
 立ち止まった俺を、遅れて足を止めた二人が振り返る。
「この匂い、なんだっけ?」
「どこかの地域で雨が降っているのだろう。草や土の匂いが混ざっている」
「え? ど、どういうこと?」
 若干の青臭さ? っていうのかな。それが草の匂いなのかもしれない。と思っていると、なのは懸命に鼻を動かして。その後、困ったような顔。
「わかんないよ~」
「わからずとも、生活に支障はない」
「でも、二人はわかってウチだけわからないの、むずむずする!」
 そんななのを、丹恒は珍しく優しい表情で見て。
「知りたいというのなら、スパルタで教えるが」
 なかった。そんなことなかった。
「うぐぐ……
 知りたいけれど、スパルタは嫌だ。そんな感情が、見て取れる。
「俺と丹恒がわかっていれば大丈夫だから、諦めろよなの」
「わかった。諦める」
 ちょっとむすっとしているけれど、納得してくれたようだ。
「丹恒は水の匂いがするよな」
 腰に腕を回して抱き寄せ、首と耳の裏を嗅ぐ。
「いてっ」
「ここ、列車じゃなくて外だよ」
 ちょっと怒りを滲ませたなのが、俺の頭をひっぱたいたのだ。
「いちゃつくなら、列車に帰りなよ』
「お前一人に任せられないからな。俺は残るが」
「俺だって、丹恒と一緒がいいから帰らない」
 丹恒の背中にしがみつくと、またなのに頭を叩かれたのだった。
「やっぱり三人だと早く終わるね!」
 あの後、ちゃんと三人で依頼者の元へ向かい。
 手分けをして探索、購入、戦闘をこなした。
 依頼を終えて、チェックをもらって。ウキウキでお店巡り中。
「丹恒、あーん」
「あーん」
「美味い?」
 咀嚼をして飲み込んだのを確認してから問いかけると、彼は無言で口を開ける。
 どうやら美味しかったようで、催促してくれた。
「あんたたち、懲りないね」
「だって、美味しいものは分け合いたいじゃんか」
「わかるけど、食べさせるのは違うじゃん」
「でも、丹恒が素直に食べてくれるの珍しいだろ?」
「それはそう」
 と、なのが自分の手元にあるものを丹恒の口元へ持っていくけれど拒否されてしまう。
「ほら、食べてくれるのあんただけだよ」
「それは、俺が恋人だからですよね~?」
「ああ。それに」
「それに?」
「穹が変なものを俺に食べさせるわけないからな」
「信頼~!」
 嬉しくて飛びつくと同時に、鼻先にぽつりと雫。
「三月、ほら」
 丹恒は素早く傘を広げ、なのに手渡す。