たくとろ
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ワンライ「おまじない」

作中に出てくる配信者は子どもの魔女っぽいイメージ。

自室でぐるみんの最新動画を見終えたリコはマスカーニャが目を背けるほどに眩しい笑顔をしていた。ぐるみんがぐるみん型のぐるみんクッキーを作るという内容で、少し焦げてしまったがそれがまた愛らしいと、リコは高速でコメントを叩き込んでいる。一通り打ち終えて、満足げに笑っているリコを見てカルボウは首を傾げた。まだリコのぐるみん愛への理解が追いついていないようだ。テブリムがそれとなく伝え、パゴゴもよく分からないまま楽しんでいる。コメント欄を閉じたリコは動画をもう一度流そうとしたが、誤タップで次の動画を再生してしまった。すぐに戻そうと思ったが、タイトルを見たリコの手は止まった。

「気になるあの子もイチコロ♡ラブラブクッキー?」

リコがタイトルを読み上げている間に、紫色のウェーブのかかったロングヘアーが特徴的な女の子が画面の中のキッチンに現れた。背丈はリコとあまり差が無さそうだが、顔立ちが少し大人っぽい少女は得意げに笑って動画の概要を話し始めた。

『今回は、意中の相手をオトしちゃう素敵なクッキーの作り方を、特別にみんなに教えちゃうよ!』

語尾にハートがついてそうな小悪魔的な話し方をする少女の言葉に、リコは自然と画面に釘付けとなった。動画が進み、どうやらチョコチップクッキーを作るようだ。キッチンに一つずつ材料が置かれていく。しかし、いたって普通のものばかり。バターに砂糖、卵や薄力粉に刻んだ板チョコ。これだけなら簡単に作れるし、普通のチョコチップクッキーができるだけだ。そう思っていたところ、とんでもない材料が飛び出してきた。

『ここからが特別だよ?まずはイルミーゼのしる!イルミーゼは甘い香りでバルビートを誘うんだあ』

そんなもの食べ物に入れて大丈夫だろうか。リコは少しハラハラしながら動画を眺める。だが、当然出てくる材料はこれだけではない。

『続いてグレッグルのどくそ!実は漢方薬にも使われるんだよ〜?きっと体にいいね!』

それはちゃんと薬になるように配合してるからじゃと、リコは渋い顔でツッコむ。もちろん本人に届くわけではないので、画面の中の少女は笑顔で続ける。

『最後に!ムウマージのなみだ!ムウマージはこわ〜い呪文を唱えるポケモンだけどのろいとおまじないは表裏一体!恋を叶えてくれるかも〜!!」

涙にも呪文の効果があるものなのかな?リコが真剣に考えていると、早速調理が始まった。といってもこれも特徴と言えば先ほどのおかしい材料を入れている部分くらいで、基本は普通のチョコチップクッキー作りの様子だ。できあがったものも、どくそのせいか少し不穏なオーラを放っているがいたって普通の見た目をしている。すると、最後の仕上げを少女が始めた。

「一番大事なことをするよ。好きな人のことを思い浮かべて手を合わせるの。美味しいって思ってほしい好きになってほしいしっかり祈ったら、両手の指先をクッキーを置いてるお皿の頂点に合わせてきゅるんっと!指先を離して手首をつけてハートが描けたら恋のおまじないはオッケー!絶対忘れないでね!」

リコはその様子をまじまじと眺めた。その表情は真剣そのものだ。テブリムが何かを察知して声をかけるも、リコはじっとしている。画面の中ではできあがったクッキーを少女が食べて、みるみる顔が青くなっていく様子が映っている。最後に『よい子は真似しないように』という注意書きが出て動画は締められた。ポケモンたちが不思議そうに見ていると、リコは突然立ち上がった。

「よし」

なにかやる気に満ちたリコの顔。まさか。マスカーニャは扉の前に立ってリコを足止めする。毒入りクッキーなんて作らせてたまるか。とても険しい顔だ。

「え?マスカーニャ?どうしたの?」

強い声でマスカーニャは威嚇する。リコは少々困惑しつつ、マスカーニャの顔の下を撫でた。気持ちがいいのかマスカーニャの表情が緩み、体勢も両手がぶらーんと落ちて前屈みになったので、リコは扉を開けて廊下に出た。

「キッチン行ってくるね」

そう言い残してリコは部屋を後にした。気のいい返事をしてしまったマスカーニャだったが、リコが去ってしばらくして正気に返った。が、もう面倒だしいいかとベッドに寝転がった。
数十分後、リコの目の前にはいくつかのお皿に仕分けられたチョコチップクッキーがある。見た目は普通で、不穏なオーラも発していない。本当に普通のチョコチップクッキーだ。そしてリコは目を瞑って両手を合わせた。想いと祈りを込めてリコは目を開けて両手を一つのお皿に上に持っていく。

「指先を合わせてハートを

動画の通り、リコはお皿の上でハートを作った。ほっとして息をつくと、入り口に足音がして、すぐに名前を呼ばれた。

「リコ!なにしてるの?」
「ロ、ロイ!なんでここに」
「美味しい匂いがしてさ。あ、クッキーだ!たくさん作ったんだね」
「うん。みんなで食べようと思って
「じゃあもらっていい?」
「うん。これ、ロイの分
「ありがとう」

リコはおそるおそるおまじないを込めたお皿を手渡した。しっかりいただきますと言って、ロイは一枚食べた。味は大丈夫なはずとリコが考え出すうちにロイは元気な声を出した。

「んー!美味しい!やっぱりリコってお菓子作り上手だよね!」

キラキラと光っている笑顔。それを見た瞬間、リコはさっきしたおまじないのことがどうでもよくなった。

「えへへ。ロイが喜んでくれたならよかったよ。ありがとう」

恋はいつか自分で叶えるから。ロイの笑顔をたくさん見れたら、今はそれで満足だ。
いつの間にかリコも笑顔になって、しばらく二人で話した後にみんなを呼んだ。マスカーニャはみんなが食べてしばらくするまで食べなかった。お腹空いてなかったのかな?とリコは首を傾げた。