冬牙
2025-08-23 15:41:50
1769文字
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スバイカ『星空の旅人』 ※『昴』の続きになります

貴方と共に、夢を見る。

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※こちらの文章はVOIDS - Patterns ft. ‪@vallyexe‬という曲から着想を得て制作したものです。
作業用BGMにしていたのでよければ聴いて見てください。
https://youtu.be/B0uSLgW9o7E?si=-AzFDX5ytLuHDXWb

※使用サムネイル(フリー素材)
AIPICT(https://aipict.com/)

 貴方のそばにいられるのなら、オレはこの使命と運命を与えられたことすら幸福に思う。
 辺境にある極寒の地で生まれた。寒い場所は嫌いだ。
 それでもオレはあの人に会うためだけに毎日冬の里に通った。
 閉ざされた世界で育ったオレが死ぬまでに出会う人の数なんて、空に浮かぶ星々のほんの一握りだろう。
 それでも貴方に会えたことを、オレは誇りに思う。

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 2人で並んで星を見ていた。
 白い息を吐きながら、冬の里の夜空を見上げる。誰にも邪魔されるのことのない、静寂に包まれた恋人との優しい時間。
 こうして身を寄せ合えるなら、寒いのも悪くないと思った。

___寒いですか?

 愛しい人がオレを見て心配げにこちらを覗き込んだ。その仕草もいちいち愛しく感じて、自分がすっかり弱くなってしまったのを感じた。

いいえ、大丈夫ですよ。イカルガさんがいてくれますから。

 笑って返すと照れくさそうにそうですか、と返してくれる姿が好きだ。
 寒いのが嫌いだなんて言ってしまうと、気を使わせてしまうかもしれない。こうして星を見たいと言ってくれた貴方の気持ちを害したくない。
 ああ、このままこの星空の中に閉じ込めてしまえたらいいのに_______。

イカルガさん。

 名前を呼ぶと星空を眺めていた瞳が不思議そうにこちらを見る。

愛しています。

 それだけ言って微笑むと、尖った耳の先まで真っ赤にして目を見開いた。
 本当に都では感情を表に出さないのか不安になるくらいいちいち変わる表情が、オレだけに見せるものだと思うと胸が高鳴った。

口付け、していいですか。

 答えを聞く気は最初からなかった。それだけ言ってイカルガさんの帽子を外して、口付けを送った。
 星の輝く夜空の下。暗闇に包まれた2人を邪魔するものはいない。
 永遠にこのまま。貴方のそばにいたい。

_スバル。

 唇を離した時、急に名前を呼ばれてどきっとした。

なぜ、私が貴方と星を見たいと言ったか。話を聞いていただけませんか。

 イカルガさんはゆっくりと語り出した。

貴方と出会う前_。まだ都にいた頃のことです。
不思議な夢を見ました。遠い宙の果てで、数多の星々が輝く宙を旅する夢です。
そこには、私の手を引く光に包まれた人物がいました。
数多の星々が集まって成したその姿を、私は『昴』のようだと思ったのです。

『昴』、オレと同じ名前ですね。

ええ、昴とは数多の星が集まる様子を指します。あの夢だけは、今でも鮮明に_いえ、貴方に出会ってから、思い出したのです。
そして、私は思いました。

なにを、ですか?

あの時、夢の中で出会ったのは本当に貴方だったのではないかと。
貴方は私を過去の悲しみから救ってくれた。哀れな私を許し、共に戦ってくれた。
復讐に囚われた私の心を癒してくれた。
_あの夢の光のように。

 イカルガさんはただ星を眺めながら語った。
 ずっと昔にも貴方に会った気がしてならないのです。そういってオレに照れくさそうに笑ってみせた。
 オレはその言葉が嬉しかった。
 ただイカルガさんが好きだったから助けたいと思った。そう思うことすら運命だったのなら、オレは自分の運命に感謝するかもしれない。

素敵な夢ですね。
もしその夢の光がオレなら、もう一度連れて行ってあげたいです。

 オレの言葉にイカルガさんがふふっと笑う。

ええ。ぜひ、連れて行ってください。

あ、でも今度は連れ出したら返してあげないかも。ずっと一緒にいたいですから。

 イカルガさんの笑顔が愛しくて、つい咄嗟に意地悪なことを口走ってしまう。

構いませんよ。私も、貴方と同じ気持ちなのですから。

 イカルガさんのその言葉が嬉しくて、気がついたらその手を取っていた。

じゃあ今から行きましょう。2人で一緒に、星空の旅に。

 オレの言葉に驚いた様子のイカルガさんに、またすぐ微笑みが戻る。

そうですね。今度は勝手に消えたりしないでください。
私のそばで、いつまでも輝いていてくださいね。

 そういって解けないように指を絡め、額を合わせて互いに目を閉じた。
 誰よりも愛しい貴方を感じながら。
 今宵オレたちは星空を渡る旅人の夢を見る。

END