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覚醒

四条院瑠璃が覚醒した際の記憶。その回想。
たぶん語る事無いと思うので、ここで消化していきます。こっから絶対幸せに導くぞー!目指すはハッピーエンド!!!


以下のBGMを聞きながら書きました!
https://youtu.be/yHFX8f4192M

思春期という言葉を正しく、子供らしく乱用する術を覚える前に、私は人生のレールを敷かれた。
数日前から、学校が休日に入る度に同流派の弟子さんが家族ぐるみで頻繁に遊びに来ていた。
けれど、それがまさか相性の良しあしを探るためとは。彼も私も気づけるわけがない。
同年代だから良くしてあげて。こっそり、そう母が言わなければ愛想よく子供のように遊ぶことも無かった。無かったのです。お母様。
酒を酌み交わし、大人たちが笑いあうその意味を、私はまだ理解できるほど大人のフリが上手くない時期で。

「お前の将来の旦那は優しい男だ。安心しなさい」
「ありがとうございます。瑠璃は嬉しいです!」

けれども、その意味を理解して拒めるほど、子供らしく自分を大切にはできなかったのです。お父様。
男児の居ない私の家を、産めずに嘆き自罰する母を、古い伝統に狭められて未来を切り拓く改革性を持てなかった父を、繋いできた舞を、私はそれでも愛していたから。

中学生になり異性というものを互いに理解した頃。
相手の彼はというと、意外にも乗り気だったらしい。母同士で飯炊きをしている時分に、朗らかに色よい返事をもらったと彼の親が告げたそうだ。
瑠璃の柔らかな笑みが好きなのだと、彼は語った。私は胸の内で嗤った。それは本当の私じゃないのに、と。
可愛らしくあればいいだけなら、そう難しい事でもない。蝶よ花よと愛され、隣に居るだけなら簡単でしょう。
そう私は思っていた。

1年たったころ、笑えなくなった。鏡の前で笑い方を稽古した。舞の稽古よりも苦労はない。
2年たったころ、わからなくなった。クラスメイトを観察して、私なりの『可愛さ』を身につけた。
3年に差し掛かった頃、声が出なくなった。

「■■」

その言葉を吐こうとして、空気が肺からひゅうと出るだけ。限界を超えて体が異常を覚えたのを、しっかり認識する。
その直後、私のかわりに世界が叫んだかのような風が吹いた。
レネゲイドウィルスが、歪みでねじ切り空いた心の孔から、びゅうびゅうと吹きすさぶようにして暴れ出す。
この覚醒は、私の心の悲鳴だ。敷き詰めらたレールを吹き飛ばさんとする風。否と叩きつけるために、詰まる喉を拡げる衝撃。
心と体がこんなにも未来を拒絶しているのに、私は今も皆が求める愛らしい子を演じ続けている。
それが、私に注がれた愛への応えかただった。

「じゃぁね! 次のお休みの日、もっと電話しよーね?」
可愛らしく、甘えた子猫のように声を転がしてから電話を切る。ベッドに投げ捨てる。ため息をつく。これが私の夜のルーチン。
ため息をつけるだけ、まだマシな環境に身を置かせてもらっている。覚醒しなければ、親元を離れて心を休める時間は来なかっただろうから。
「どうしたものかしら……
アカデミアに入って1年が経っても、夜のルーチンは変わらない。
むしろ離れた分だけ、好きでもない彼の心を繋ぎ止めることへ躍起になっていく気すらする。
明日からは2年生だ。余白の時間はじりじりと、確実に削れて私の安心できる足場を奪っていく。
「■■■■■」
「■■■■■」
唇からこぼれそうになったその言葉たちを、とっさに手のひらで蓋をした。それを言えば最後、私はもう四条院家の瑠璃では居られなくなる。

「よーっし、ちゃちゃっと寝ちゃお!明日もパトロール忙しーもんねっ」
瑠璃ちゃんだけの部屋で、やる気を出して布団に飛び込む。
「おやすみなさいっ。御神楽先輩、寝坊したらバイク乗せてくれるかなぁ……ダメかもぉ……
よよよっとなりながら瞳を閉じて聞こえないふりをした。

──いやだなぁ

──誰か助けて