和泉 小夜
2019-08-16 22:14:53
1143文字
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バレンタインデー(貞と光忠)

初出 19/02/14 21:40 Caravel
貞が光忠にチョコレートをあげる話です。うちの本丸成分が多大に含まれております。どうぞよろしくお願いいたします。

今日は2月14日。つまりはバレンタインデーというやつだ。
みなは各々、好きな奴に貯古齢糖とやらを渡している。
俺も、あのひとに作った。しかし調理に失敗した。何たる無様な。だからあげない。

「貞ちゃん、僕にチョコレートくれないの?」
それ、本刃に聞くのか。だが、 あげない。とは言えぬわけで……
何故なら他の奴等に配っているところを目撃されて今に至るからだ。
愛する相棒への贈り物を、用意していないわけがない。
そう考えているのだろう。実際、俺も華美な装飾の箱を貰っている。

『あぁ……。作った、よ?飾り付けを失敗してさ。作り直すから待っててよ』
「チョコのデコレーションかな?僕は別に気にしないよ」
俺が気にするんだ、察してお願い。
……いや、これは恐らく察しているんだろう。
だから、<僕は>なのだろうと容易く想像がつく。しかしなぁ。

「長谷部くんは、僕の目前で溶かしたチョコを、面倒だからとボウルごと渡してきたよ」
へし切、お前は何をしているんだ。せめて型に流し込んで冷蔵庫で固めろ。

「貞ちゃんのチョコ、美味しいし、華やかで綺麗って評判なんだよ」
『そうか、それは有り難いな』
「で、僕にはチョコくれないの?」

振り出しに戻った。正確に言えば戻された。
会話の主導権は向こうにある。此方の分が悪い。
こうなったら腹を括れ。
調理してある分、へし切よりマシだ。

……失敗したものだけど、いい?』
「もちろん!貞ちゃんが、僕の為に作ってくれたものだもの」

腹を括って小さな箱を渡す。
『料理と菓子作りっていうのは、違うんだな』
『少しでも分量が違うと盛大に失敗するのが菓子作りなんだと、改めて思ったよ』
 
作ったのはガトーショコラという菓子なのだが、まぁ色々と失敗してしまった。
失敗した部分は主に分量だ。
料理は得意だが、菓子作りはどうにも駄目だ。
菓子作りが得意な小豆長光を尊敬する。

『他の奴等には、溶かして固めただけの貯古齢糖なんだ、旨いのは当然だよね』
『これはね、あなただけに作ったんだよ』
それで失敗しているのだから、駄目なんだよな。

「ありがとう、貞ちゃん。大切に食べるね」
……俺も。あなたがくれた箱の中身、大切にするね』
『食べ物じゃないんでしょ?耳飾りかな?』
「よく分かったね、ピアスだよ」
『ふふっ、あなたのことなら何でも分かるよ』
「ちゃんとピアス付けてね?」
『うん。薬研通にでも、付けてもらうよ』

ピアスの意味は<離れていても常に自分の存在を感じてほしい>らしい。
存外と独占欲が強いんだな。

そんな相棒が今日もいとおしい。




……でも、俺ならピアスを選んだりしないかな。