三毛田
2025-08-21 22:02:00
1076文字
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91 091. 目がさめるように

91日目
緩やかに

 緩やかな覚醒。
 珍しく、悪夢も見なかった。
 腹に回された腕の重みで意識が浮上したのかと勘ぐるものの、証拠はない。
 ただ、スマホを見れば、悪夢を見て飛び起きた時以外の起床する時刻と差異はなかった。
 自然と目が覚めたと考えていいだろう。
 悪夢を見なかったのは、普段と寝床が違うからか、それとも。俺の腹に腕を回し、気持ちよさそうに眠る青年が隣にいるからか。
 原因を突き止めようにも、難しい。
 何故か。
 彼が、今はそれを許してくれないから。
『やっぱさ。丹恒用のベッドも俺のベッドの隣に置くべきだと思うんだ』
 やけに真剣な表情で、ラウンジに集まっていたみんなの前でそんなことを口にした。
 反応は、三者三様。
 またなんか言い出した。という反応の、三月とパム。
 あらあら。と言いながらも、止めない姫子さん。
 何か言いたげな表情を浮かべつつ、でも何も言わないヴェルトさん。
『なんでみんなそういう反応なんだよ』
 俺も呆れて何も言えないでいたら、不満そうな顔をする穹。
『だって、丹恒はアーカイブ作業に熱中してちゃんと寝ないじゃん。だから、いいところで切り上げて寝かしつけられるようにって』
……お前が使っている布団だと、柔らかすぎて上手く寝付けない』
 俺がそう口にしたら、三月の眉間にしわが寄った。彼女にしては珍しい表情だ。
 とはいえ。今の俺の発言で、俺たちはよく一緒に寝ているというのがバレてしまったように思える。
 その事実に気づいたのか、穹はすごく嬉しそうに笑っていて。
 失言だったと気付いた時には、既に遅く。
 俺はため息をつくことしか出来なかった。
 穹の提案は、そんな場所はない。というパムの一蹴により却下されて。
 それ以降俺が遅くまで作業をしていると、眠そうな顔の穹が資料室まで来るようになり。
『丹恒、寝るよ~』
 間延びした声で俺を呼び、自室へと連れて行くようになった。
 抵抗しても、どうしてか勝てず。
 気づけば、昨夜のように寝かしつけられるのであった。
「ふがっ」
 変な夢でも見ていたのか、涎を垂らしながらビクンと体を揺らし。
「涎が出ているぞ」
 そっと指でよだれを拭うと、目を開いて俺を見る。
「うそ」
「本当だ」
 唾液で濡れた指先を見せると、眉を下げ。
「わあ……丹恒、ごめん。手を洗ってきて」
「洗いに行きたいが、お前に抱きしめられていて不可能だな」
「ご、ごめんっ」
 慌てて腕を離してくれ。
「おはよう、穹」
「おはよう、丹恒」
 キスをしてこようと顔を近づけてきたので、逃げた。