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黒羊ユク
1886文字
Public
二次創作
怪奇 まわるミミッキュ
ポケモン。
ある廃屋に、回るミミッキュ二匹がいるらしい。
そんな噂の真相かもしれない。
1
2
一人の青年の命が尽きた。
青年はある時病に倒れ、余命も短いものを宣告されていたという。しかし周囲の人々は、一つの事実から多大なる疑念を持つ事となる。
青年の傍らにいたポケモン、ミミッキュが姿を消したのだ。
窓からは曇天が見える。光は身を焼くので、外を眺めるには好都合だ。寝台にある身の重々しさは天気に劣らず、体へかけているブランケットでさえも体を潰しにかかるようだった。
「きゅう」
目覚めを察知して傍らのミミッキュが鳴く。此処のところ食べ物さえ満足に用意出来ていないが、ミミッキュが不満げな態度を取った事は無かった。
この家は町から少々遠く、人は殆ど来ない。様子を見に誰かが来ているのかもしれないが、疎らな意識では解らなかった。
食事の準備も難しくなり、寝台も汚物で惨たらしいものに変貌している。人が住む家の形を留めているのかも確認出来ない。
「きゅっきゅきゅっ、きゅっきゅきゅっ」
ミミッキュはその場で回る。口ずさむように鳴きながら、被り物の耳を揺らし、踊る。
いつもの光景だった。
見ていた映像を覗き込み、ミミッキュが首を傾げた。
「これはね、ロンドっていうんだよ。みんなで輪になって、歌って踊るんだ。歌には同じ音楽が何回も出てくるんだよ」
するとミミッキュはその場で回り出す。
「きゅっきゅきゅっ」
「もう覚えたの?」
「きゅっきゅきゅっ」
笑い混じりの声にミミッキュはやはり同じように歌い、目が回るのにも構わず踊り続けた。
晴れの日、ミミッキュは屋根の上で陽に当たる。少しでも清潔でいたいと、青年を想っての行動だった。
もう少し経てば、青年が午後の間食を持ってくるだろう。ミミッキュの腹の虫が期待にざわめく。
「おーい、おやつだよー」
期待通り、木の実を盛った皿を手にした青年を見付け、ミミッキュは降りようと歩を進めた。踏み締めた部分は僅かな重みにも耐えきれず、剥がれる。ミミッキュの足が滑り、体が宙に投げ出されたか否かの時に青年は走り出していた。
皿が落ち、木の実が転がる。
青年の手が無事に腕へ収まったミミッキュを軽く揺さ振る。ミミッキュの意識は無かった。
「あー
……
」
声にミミッキュは動きを止める。その久しい事に、その変わり果てた枯れように、驚いて固まった。
「ごめん、ね」
謝罪へミミッキュは全身で否定を示すが、次の言葉にまた止まった。
「あの時、君に、嫌な事を、した」
衝撃にミミッキュの記憶が奔流となる。いつの事かと思い出そうとして、思い出せない箇所にある答えへと辿り着いてしまった。
ミミッキュが決して見せたがらない、被り物の中身を見た者は皆命を落とす。噂はいつしか、人の作った図鑑に載る程の危険性となった。真相は解らないが、あくまで謎の存在であるポケモンのする事、不思議としか言いようのない事だと、少なくとも人々は否定せずにいる。
「でも、ね、僕は、気付い、たんだ」
今にも尽きそうな声を止めさせるべきか、此処まで来て尚もミミッキュは葛藤していた。そうして時は過ぎ、声は続いてしまう。
「死んだ人、は、みんな、言いふらして、いた」
ミミッキュの中身を見た人間が死んだ。それは、第三者が事実を知らなければ記せない。秘めてしまえば、中身を見た事実は死と共に闇へ消えてしまうだろう。
「でも、君に、言ったから、駄目、かな」
ミミッキュの足元には小さな水溜まりが出来ていた。
青年は微笑みたかったが、少し瞼が下りてきただけに終わる。
「
……
ねえ。また、踊ってよ」
「きゅ!」
ミミッキュは再び回り始めた。
「きゅっきゅきゅっ」
小さな飛沫を撒き散らしながら踊る。
「きゅっきゅきゅっ」
旋律を繰り返して歌う。
「きゅっきゅきゅっ」
しかしある時、目が回り転んでしまう。
起き上がると、白いがらんどうがミミッキュを見ていた。
ある廃屋にて、二匹のミミッキュが鳴き声を上げながら、くるくると円を描いて回り続けているらしい。
確かに見た、その言葉だけが一人歩きする。噂はゴシップ紙をも賑わせ、やがて消えてもいつかに復活するのを繰り返していた。
何かの儀式なのか、二匹の関係性は何なのか、目まぐるしく様々な憶測が飛び交う。
そして今日に至るまで、巡り続けている。
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