焦げる前に捕まえて

レノ✕シスネ

 カーテンのない小さな窓から、淡い朝の光が静かに差し込んでいた。森の向こうで鳥がさえずり、葉を揺らす微かな風の音が聞こえる。ゴンガガ村の朝は、まるで夢の続きみたいに穏やかだ。
 その柔らかな光に照らされながら、シスネの背中が静かに動いた。ベッドの中から抜け出そうと、そっと身体を起こす気配。寝息を乱さないよう気を使っているのが分かる、やけに静かな動きだった。
……おっと、どこ行く気だ?」
 半分眠った声でそう言いながら、腕を伸ばしてその腰を捕まえる。細い肩がびくりと揺れ、シスネがこちらに振り向いた。
……朝ごはん、作ろうと思って」
「へぇ?」
 妙に真剣な口ぶりと、ちょっとだけ誇らしげな表情。毎度このテンションのときは、だいたい何かが焦げる。いや、それどころか、前回は煙が出た。
「今度こそ、失敗しないと思うの」
 ──それ、何度目だっけな。
 胃袋の危機を思い出しかけたが、今は黙っておく。代わりに、ゆるく笑って引き寄せた。
……じゃ、成功祈願ってことで、あと十分な」
 腕の中に戻したシスネの耳元に唇を寄せ、柔らかく首筋にキスを落とす。温もりが指先から伝わってきて、ほんの少し呼吸が深くなった。
……ちょっと」
「まだ早ぇだろ、と」
 くすぐるように唇をすべらせながら、昨夜の続きをちらつかせる。シスネは小さくため息を吐いた。
……なんだか、いつもこの展開ね」
「気のせいだろ?」
 とぼけながら髪に顔を埋める。すぐ間近に感じる鼓動が、ゆっくりと落ち着いていく。小さく睨むような視線を寄越したが、シスネは結局身を預けてきた。
 ──あとで一緒に作ればいい。そんときは火加減も味見も、全部俺がやる。そしたら火事の心配もない。……完璧なチームワークだぞ、と。
 とにかく今は、この温もりを手放す気なんて、これっぽっちもなかった。