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望月 鏡翠
2025-08-20 23:16:42
916文字
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日課
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#1818 「ワンメーター」「引きこなす」「あるもの顔」
#毎日最低800文字のSSを書く
今日も一週間に一度の大仕事を終えた。
あらゆる楽器を引きこなすことができる才覚を認められて、今の役目を賜った。祠に楽を捧げ、封じられている神を鎮めるのが最も重要な役目である。
目覚めれば、国どころか世界が滅びると言われている邪神が、この指先に乗っているのだ。
終わったあと業務の内容を報告をして帰路につくのだが、報告の内容は常に決まっている。
つつがなく、終わりました。先週と変化はありません。
そうでない答えを述べたときの返事など、彼らは想定していないだろう。邪神が目覚めることなど、あってはならないのだから。
それゆえに、本当のことを知ったら震え上がってしまうに違いない。
実のところ、もうとっくに封じるべきものなどなくなっているのだ。祠の中は空っぽだ。ただ役目を受けたものが、それを報告する勇気がなく、あるもの顔でやり過ごして、今日まできてしまった。
ここには空っぽの祠と、毎週音楽を聴かせるという習慣だけが残っている。
私は今週も祠の前に行き、タイマーをセットし、きっちりワンメーターの間、演奏をする。
「うん、なかなかうまいじゃないか。次は雅楽でも演奏してくれ」
ニヤニヤと笑いながら、必死に役目を取り繕う私を見ている男がいる。
「古臭い音楽は聴き飽きたのでは?」
「いや、百年以上も経つと、逆に新鮮に聞こえてくる。楽しかろうと思ってな」
ここには楽を演奏するものと邪神の祠しかない。つまり、そこでニヤニヤと笑っている男は、邪神ということだ。封印を解かれて抜け出たあと、こうして気まぐれに戻ってきては音楽を聴きにくる。
代々のものが、封印が解かれたことを誤魔化しながらやり過ごしてきたのは、これが理由でもある。
結局、邪神が復活したとして、世界が滅んだりはしなかったのだ。国も、自分の生活を何事もない。であれば、性格の悪いニヤけた男として、世の中をうろついていたとして、なんの問題があるだろうか。
いい神様であれば、自分の目的や理念や約束を破ったりはしないのだろう。しかし悪い神は気まぐれであらゆる決まり事を反故にする。
だから世界を滅ぼすという約束も、あと回しにしてくれたらしい。
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