宵宮星楽
2025-08-20 22:22:44
1379文字
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星見の宴(身内三次創作)

いつめんをキャラ化して遊ぶ流れの一環

 精霊の森は、寒冷地帯に位置する禁足地である。
行くことも入ることも厳しいこの地だが、そこに住まう者たちがいる。季節を変え、人々に実りをもたらす妖精だ──

 ある夏の夕方。
藤色の髪を持つ小人妖精コロポックルが、ご機嫌に出掛ける準備をしていた。
青葉を思わせる服を身にまとい、背には桜の花弁のような薄い翅を生やしている。
「おにぎりと〜、水筒と〜、上着と〜、ノートとペン……これだけあれば大丈夫かな」
彼女は葉っぱを縫い合わせた鞄に荷物を詰め込むと、フキ製の傘を手に取り、自宅である樹のうろを後にした。
「いってきまーす!」

 集落の入り口には、見上げるほどのリクガメが待っていた。
「来たよー!」
手を振って呼び掛けると、彼は顔を上げて微笑みを返す。
「やあ。会えて嬉しいよ」
甲羅の後ろから白蛇が現れ、こちらに擦り寄ってきた。彼の正体は、玄武と呼ばれる霊獣である。
「こっちの顔は甘えんぼさんなのね」
「そうなの?そんなつもりは無かったけども」
「そうだよ〜」
蛇の頭を撫でていると、甲羅の上にいくつか果物が乗っているのに気が付いた。
「あ、それみんなから貰ったの?」
「うむ、いつも門番してくれるお礼にって。私は入り口に立ってるだけなのにね」
「あなたは立派に仕事してると思うけどな」
「なんだか申し訳なくて」
「何言ってるのさ。正当な仕事の対価だよ」
いつものような会話をしながら、果物の間をかき分けて甲羅に腰掛ける。
「今日はあなたの故郷まで連れて行ってもらおうかな」

「揺れてない?」
「快適快適〜」
ほぼ亀の姿をしているとはいえ霊獣故か、見た目からは想像も付かない速さで森の中を走る。
結晶質の木々を抜ければ、じきに彼が生まれた北の山に着く。
「夏でもちょっと冷えるね」
「大丈夫?」
「うん。上着持ってきた」
荷物で一杯の鞄から、コスモスの花弁で織られたカーディガンを取り出す。その拍子におにぎりの袋が甲羅へと転がった。
「あっ」
コロコロと滑り落ちた袋は、甲羅の淵に跳ね上げられ……
「あたしのおにぎりがー!」
……白蛇に咥えられた。
「たすかった」
おにぎり袋をこちらに渡した蛇は、少し頭を下げて静止する。ねぎらいを待っているらしい。
「これはありがとうの気持ち〜」
わしゃわしゃと頭頂部を撫でると、彼の半身は嬉しそうに目を細めた。

 北の山からは、星がよく見える。
少し開けた岩場にやってきたふたりは、各々の食事を取り出して小さな宴を始めた。
「うむ、やっぱり森の果物は美味しい」
「良き恵みは良き地の証、今年も森は豊かで平和な場所でいられたってわけだ」
「それは良かった」
「あなたが護ってくれるおかげだね」
「そうなの?」
「そうだよ〜」
星見の宴は、どちらかが眠くなるまで続く。
「ん……寝ちゃったかぁ。じゃ、あたしも」
柔らかそうな葉っぱを、木からいくつか拝借する。
「甲羅の上は……うーん、自分の寝相を信じるかよね」
悩んだ末、甲羅に乗るのは諦めて下に葉っぱを敷くことにした。寝冷えを防ぐために大きめの葉っぱをもう一枚持ってきたら、簡単な布団の完成だ。
「おやすみ〜またあした」
玄武は亀と蛇の二種が一体となった姿であるが、ふたりが「背中に妖精もいる三位一体型の玄武」だと巷で言われ始めているのは、また別のお話。