ふじしろ
2025-08-20 06:02:10
1202文字
Public 浄皇
 

てめえなんか信じない

【ロストサマーイベストネタバレ】自分の覚書的浄皇小ネタ。

「いや、何だかんだと賑やかだったな」
氷で満たされたグラスにウイスキーを注ぎながら浄は思い出したように呟いた。
四年振りに開催された虹顔花火大会へ調査のために俺と浄は出向いたが、色々あってそれだけでは終わらなかった。
とは言え当初の目的はきちんと果たしたのたから問題はない。
「皇紀の浴衣を脱がせなかったのは残念だがね」
浄は炭酸水を注ぎひと混ぜしたグラスを俺の方へと差し出しながら溜息を吐いた。
「解体するか?」
「あはは。それは勘弁してくれ」
乾いた笑い声を上げると彼は自分の分のハイボールを口にする。
客として周りと馴染むようにと着せられた浴衣は店に戻って直ぐに脱いだ。
ああいう格好はどうにも性に合わない。
どこまで本気かは知らないが浄は浴衣を脱がすのが楽しみだとほざいていた。
だが浴衣を脱いだにも関わらず何故この男は家まで付いてきたのか、理由が分からなすぎてある意味ホラーだ。
「お前は人を信じることを躊躇わないんだな」
「何の話だ?」
突然浄はそんなことを言い出す。
その言葉に彼の方へと顔を向けるが、浄はぼんやりと壁を見つめているようだった。
そのまま彼は話を続ける。
「蒲生のことさ。煽れば正解に辿り着くと見てワザとヤツを焚き付けただろ」
……
「信用に足るかはお得意の骨格やら肉質でわかるのかい? ジャスティスライドの連中とはそう交流はないと思うが」
意味ありげに笑むと浄はグラスの中身を煽った。
「てめえが人を穿って見ているからそう思うんだろ」
「なるほど。そういうことにしておこうか」
浄は二杯目のハイボールを作りながら、ふふっと笑って言った。
正直、蒲生が犯人を殺してしまったところで俺には関係がない。
彼が相手なら俺に幇助の罪を着せることもないだろう。
自分を見失って感情のままに行動するのなら所詮それだけの人間だったと言うことだ。
別に浄が言うような大袈裟なことは何もない、むしろ試したと言った方が正しいのかもしれない。
だが、それを浄に言う必要はない。
「てめえのことは……
「ん?」
「てめえを信用することなんかない。覚えておけ」
ふんと鼻を鳴らし、残りが少なくなったグラスの中身を空ける。
浄のことをやすやすと信じることは出来ない、それは彼を知れば知るほど思い知らされる。
こいつと対等でいたいのなら疑って掛かるくらいでないと渡り合えない、こいつはそういう喰えない男なのだ。
俺の言葉に浄は何故か嬉しそうに笑った。
「いいね。そうこなくっちゃ」
そう言って片手をこちらに差し出す。
空になったグラスを渡すと浄は直ぐにお替りを作り始めた。
「お前といると本当に退屈しないよ」
お替りが出来ると浄はグラスを俺の前に置きながら楽しそうに笑う。
そういうところが信用出来ないんだ。
分かっているのかいないのか、笑顔で俺を眺める浄を横目にグラスの中身を飲み込んだ。