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A4
2025-08-19 23:46:48
1236文字
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助手2号のお兄ちゃんのイトアキ
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パンク / 助手2号のお兄ちゃんのイトアキ
雑な一面が出てきてたらいいなという話
新エリー都の公共ラジオ放送が今日の天気とともにニュースを告げる。
気温。湿度。天気予報。ホロウ活性の様子。行方不明者数。道路交通情報。
それを流しながら、アキラは巻かれていたケーブルを伸ばし、ソケットを車内のACアダプタに差し込んだ。
「ライトさん、差したよ」
後輪のそばでしゃがみ込んでいたライトが顔を上げる。口の端からはキャンディの棒が伸びている。髪の毛が揺れ、頷くと同時に親指を立てる。ケーブルの先にあるコンプレッサーが動き出し、振動音が郊外の道路に響き渡った。
アキラはライトの隣で同じようにしゃがんだ。一緒にパンクしたタイヤを見たところで、がんばるのは応急修理キットでどうにもならないのだが、見守っていると早く空気が入るような気がした。そんなことは絶対に、ないのに。
新エリー都でライトを拾ってブレイズウッドに行くところだった。パーキングから出るとき、アキラの運転する社用車は縁石に擦った。そのまま気にせず進んだのがよくなかった。
助手席のライトが「パンクしているだろう」と言い、薄々「パンクしただろうな」と考えていたアキラは路肩に停めてチェックした。その通り、パンクしていた。
アキラは車に載せていた応急修理キットを広げて説明書の通りに動いた。その間、ライトはアキラを見守っていた。
六分街のビデオ屋の店長で、裏の顔は伝説のプロキシ「パエトーン」の片割れという青年は、おとなしい雰囲気、物腰柔らかな態度と裏腹に、雑な一面がある。心配性で神経質なところもあるのに、それは今回は発揮されなかった。
「飴、いるか」
「うん。もらう」
「ぶどう味しかないが」
「いいよ、なんでも」
包装を剥いでライトは棒付きキャンディを渡した。アキラが口を開けるので、しかたなくその中に差し入れる。舌が伸びてきて、ぱくりとくわえた。
ライトは空咳をした。
「誰にでもするなよ」
「何を」
「口を開けるとか」
「必要があったらするよ」
キャンディをくわえながら喋る姿も行儀が悪い。
こんな姿は二人でいなければ見ることができない。
「できた」
手でタイヤの様子をチェックして、アキラは立ち上がる。そして、ライトに手を差し出した。ライトはその手をつかんで立ち上がる。わざと力を入れると、アキラの体は傾き、バランスを崩しそうになり、蹈鞴を踏んだ。なんとか踏みとどまって、アキラはライトをにらんだ。
「人が悪い」
「たまに、意地悪をしたくなるんだ」
「ライトさんは子どもっぽいところがあるんだねえ」
「無邪気だろう?」
「タチが悪い」
アキラはぼやいていたが、表情は笑っていた。
応急修理キットをしまって、二人で車に乗り込む。
「安全運転で頼む」
「走り屋の台詞とは思えないよ」
「あんたの運転はスリルがあるからな」
エンジンがかかる。
ライトがからかったせいかブレイズウッドまでの道のりは、それはそれは楽しいものになった。
後で、パイパーには「タイヤも大事にしてくれ」と苦言を呈された。
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