haru_haru0704
2025-08-19 21:54:55
4832文字
Public
 

クソ能力ソノラに閉じ込められた!

哥舒臨&カカロ&忌炎(CPなし) 全年齢

男子高校生みたいなノリの3人

経緯は省くが、哥舒臨、カカロ、忌炎の3人は『クソ能力ソノラ』に閉じ込められてしまった。
『クソ能力ソノラ』とはその名の通り、共鳴者の共鳴能力をクソ能力に変えてしまうソノラのことである。
脱出するための方法は、ただひとつ。
全員で話し合った上で能力のクソさ順を決定し、表彰台に登ること。そして見事1位になった暁には、『クソ能力王』という不名誉な称号が贈られることとなる。

*
3人はお互いに顔を見合わせ、それからお互いの頭上に表示されている文字列に目をやった。
哥舒臨の頭上には『任意の相手の目から涙を流させる能力』、カカロの頭上には『任意の相手の体の一番柔らかい部分を動かす能力』、忌炎の頭上には『任意の相手の語尾にハートマークを付ける能力』と表示されている。何ともクソな能力ばかりだ。
「・・・こんなもの、どう考えても忌炎の能力が一番クソだろう」
口火を切ったのは哥舒臨だった。普段は忌炎の味方をしがちなカカロでさえも、彼の言葉にうんうんと頷いている。
「そもそも、ハートマークを付けたからって何になるんだ?」
2人の言い草に、忌炎のプライドが疼く。
正直、分が悪いことは自覚しているが・・・このまま無抵抗で『クソ能力王』とやらに認定されるのは屈辱である。せめて一矢報いたい。
「実用性のない能力なのは認めますが、哥舒臨さんのも大概クソですよ。涙を流させたからって何になるんですか」
「む・・・」
まさか反撃されると思っていなかったのか、それとも自身の能力がクソすぎるせいか、哥舒臨は口ごもった。
彼にしては珍しく、視線をうろうろと彷徨わせて考え込み、やがて口を開く。
「・・・ほら、あれだ、敵の視界を悪くさせることはできるだろう。多少は役に立つ・・・はずだ」
「涙の量によるだろうな。少しだけしか出ないのなら、役には立たない」
「そういうお前はどうなんだ、カカロ?そもそも体の一番柔らかい部分とはどこのことだ」
哥舒臨に尋ねられたカカロは、こてんと首を傾げた。
「さあ・・・?試してみるか?」
「俺で試すつもりか?体のどこかも分からないのに?」
顔を顰めた哥舒臨に、カカロは得意気な笑みを浮かべる。
「怖いのか?なら俺の能力はクソじゃないってことでいいか?」
「誰もそんな事は言ってない。・・・いいだろう、俺と忌炎で試せ」
「えっ、俺もですか?別にいいですけど・・・」
忌炎が渋々頷くと、カカロはまず哥舒臨の前に手をかざした。「いくぞ」という声と共に能力が発動し──哥舒臨の体の『とある部位』がささやかに動く。
「・・・!」
哥舒臨はその感覚にかぱりと口を開いて固まった。忌炎はギョッとして声をかける。
「だ、大丈夫ですか!?まさか内臓が動いたんじゃ・・・」
「・・・が」
「え?」
「キ○タマがプルプルした・・・」
「えっ」
予想外の報告に、忌炎は思わず自身の口を両手で覆った。
まさかキ○タマが動くなんて。いやしかし、よくよく考えてみればここは『クソ能力ソノラ』なのだ。中に囚われた人間に与えられるのは、等しくクソ能力。
内臓を動かして攻撃できる可能性のある能力なんて、最初から与えられるはずがなかったのだ。
「プルプルする程度か。もっと全力でやってもよさそうだな」
「おいやめろ!俺のキ○タマが!」
カカロと哥舒臨はしばらくの間取っ組み合って、能力の出力がどうのこうのとやっていた。しかし哥舒臨が笑いながら崩れ落ちたことにより、終わりを迎える。
「ハハハハ!くすぐったい!もうやめろ!」
「仕方ないな、許してやろう」
「はあ・・・それにしても、フフッ、全力でやってもプルプルしかしなかっ・・・ンッ、フフ・・・!」
哥舒臨は言葉の途中で吹き出し、そのまま大きな声で笑い転げた。どうやら変なツボに入ってしまったらしい。
「ハッハッハ!何だよキ○タマがプルプルって・・・ぶはは!クソすぎる!」
その様子につられたのか、カカロもこみ上げてくる笑いに肩を震わせている。なんだか忌炎まで可笑しくなってしまって、3人はしばらくケラケラくすくすと笑っていた。

「はぁ~笑った・・・おいカカロ、次は忌炎のキ○タマもプルプルさせてやれ」
「え!?もうよくないですか!?」
「やる。面白いから」
カカロは半笑いで忌炎に向かって手をかざした。直後、忌炎の体の『とある部位』がささやかに動く。
「ん・・・?・・・胸が、プルプルしている・・・?」
「胸?キ○タマじゃなくてか?」
首を傾げた忌炎に近寄った哥舒臨は、彼の胸に手を当てた。なるほど、確かに胸全体がプルプルと震えている。
「タマより胸の方が柔らかいのか・・・」
カカロがぼそりと呟いた言葉に、哥舒臨はまたもや吹き出した。
「フッ、ン゛ン・・・そうだ忌炎、試しに胸筋に力を入れてみろ」
「力を?こうですか・・・?」
忌炎が力むと、彼の胸筋は強く逞しく盛り上がった。すると──何たることであろうか。カカロの能力の対象部位が変化したではないか。
「うわ!」
「今度こそキ○タマがプルプルしただろう」
「まあ・・・はい・・・くすぐったいですねコレ」

気を取り直して、今度は忌炎の能力の検証を行うことになった。彼はさっそく手をかざし、哥舒臨とカカロ両方に対して能力を使う。
「おい♡一気にやるなよ♡」
「・・・何だか声が変だな♡」
結論から言うと、2人ともやけに色っぽく艶めかしい声色に変わった。何という事だろうか。
忌炎はちょっと笑いそうになったが、なんとか堪えて冷静に分析を行う。
「ええと・・・声色が変わりましたね。確かに、語尾にハートマークが付いていそうな雰囲気です・・・」
分析もクソもなかった。この能力はそれ以上でもそれ以下でもない。クソだ。クソすぎる。
「カカロと比べるとな・・・♡どうも面白味に欠ける♡」
「すまない♡俺の能力が面白すぎたな♡」
「うーん・・・まあ、面白いかどうかとクソ度合いはまた別ですからね。とはいえこれ以上やることもないですし、哥舒臨さんの能力も見てみましょうか?」
「ああ♡・・・おい、まだハートマーク付いてるぞ♡早く消せ♡」
哥舒臨にそう言われ、忌炎は肩を竦めた。
「もう能力は使ってないです」
「は?♡お前ふざけて嘘ついてたりしないだろうな♡」
「そんなくだらない嘘つかないですよ」
忌炎はくるりと後ろを向き、髪をよけてうなじの音痕を見せた。音痕は安定しており、共鳴能力発動時特有の発光も蠢動も見られない。
「本当だ♡」
「じゃあ俺たち、いつまでこのままなんだ・・・?♡」
「まあ、このままでも支障はないだろう。ハートマークが付いたからって何になる、と言っていたもんな?」
挑発的に鼻を鳴らした忌炎を前に、哥舒臨とカカロはひそひそと囁きあう。
「なんか怒ってないか♡」
「怒ってるな♡」
「怒ってないです。ほら、次は哥舒臨さんの番ですよ。早くやってください」
「わかったわかった♡」
忌炎に冷たくあしらわれ、哥舒臨はやや拗ねながら能力を発動させた。対象は忌炎、それも最初から出力全開である。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
妙な間の後、忌炎が「あ」と声を上げる。彼の瞳には、じんわりと薄い涙の膜が張っていた。
「ちょっと目が潤ってます」
「涙というほど出てないな♡もっとこう、ポロポロ出るものかと♡」
「何だと♡この能力弱すぎるだろ♡」
「目薬をさしたくらいですかね」
ぱちぱち・・・と忌炎が瞬きをしてようやく、一粒の涙がぽろりと零れ落ちた。彼の言う通り、目薬をさしたのかなという程度である。あまりにもささやかすぎる。紛うことなきクソ。
哥舒臨は半ば不貞腐れながらカカロにも能力を使った。
「・・・目がじんわりする♡」
「たくさん仕事をして、目が疲れた時にはちょうどいいかもしれないですね」
「チッ♡もっと号泣させる能力だったら面白かったのに♡」
「やはり面白さでは俺の能力がナンバーワンだな♡」
ふふん、と得意げにするカカロ。哥舒臨はそんな彼の肩を掴んで、ゆさゆさと乱暴に揺さぶった。
「ずるいぞ♡お前だけ♡」
「フッ・・・♡あえてこう言おう♡ざぁこ♡♡ざぁこ♡♡クソ能力者♡♡」
「おいなんかハートマーク増えなかったか?♡今♡」
「なるほど、声質に合わせた煽り方か。さすがだなカカロ」
カカロと哥舒臨はハートマークを乱れ飛ばし、忌炎は妙な感心に頷く。そうしている間にも、カカロと忌炎の瞳からはほたり・・・ほたり・・・と涙が溢れていた。何から何までクソである。恐るべしクソ能力ソノラ。

「・・・で、結局どっちが『クソ能力王』になるんだ?♡」
当然のように話すカカロに、哥舒臨は不服の眼差しを向けた。
「お前のだってキ○タマ動かすだけのクソ能力だろうが♡」
「だが面白かっただろう♡」
「面白くてもクソはクソだ♡」
ハートマークを散らしながら言い争う2人を、まあまあ・・・と仲裁する忌炎。
「3人とも全員クソでしたよ。でも・・・冷静になって考えると、確かにカカロの能力が一番クソかも」
「忌炎、裏切ったな!♡」
「裏切るも何も、俺は最初から誰の味方もしていない。むしろ裏切ったのは哥舒臨さんの方じゃないか?」
「くっ・・・♡確かにそうだ♡裏切ったな哥舒臨!♡」
忌炎の言う通り、当初の哥舒臨とカカロは結託して、忌炎の能力が最もクソであるという流れを作ろうとしていた。それなのに、ここにきて哥舒臨はカカロに矛先を向けたのである。これを裏切りと言わずして何と言おうか。
「フン・・・♡そもそも俺がお前の味方だったというのが思い違いだ♡多数決でお前が『クソ能力王』に決定だな♡」
哥舒臨はそう言いつつ、内心「忌炎の奴、上手いこと俺を仲間に仕立て上げたな」と思っていた。
彼はカカロの能力をクソと言いはしたが、『最もクソ』とまでは言っていないのだ。だが、さも言ったかのように思わせて仲間に引き込んだ。ついでにカカロのヘイトを哥舒臨に向けるおまけ付き。大した手腕だ。
そんなことを考えていたら、カカロと忌炎の多数決で「二番目にクソな能力は哥舒臨の能力」ということになっていた。
しまった。俺もハメられた。

*
「・・・ということが先日あった」
哥舒臨からクソ能力ソノラの子細を聞かされた長離は、何とも言えぬ心持ちを誤魔化すように、ゆったりとした動作で茶を口に含んだ。香りと味を楽しんでから、こくりと嚥下する。
彼女は軽く頷きつつ、口を開いた。
「・・・そう。詳細な報告、ありがとう。そこまで詳しく語ってくれなくても良かったのだけど」
「なんでだ。面白い話だったろ。特にカカロの能力」
哥舒臨は首を傾げた後、長離に振る舞われた茶をごくごくと一気に飲み干した。そして茶瓶から勝手に茶を注いで、またごくごくと飲む。
長離は彼にどう返答するか迷い、曖昧に微笑んだ。
「む?面白くなかったか。うちの兵や漂泊者には大ウケだったんだがな」
「興味深い話ではあったよ。ただ・・・その話、今汐には話さないで頂戴ね」
「当たり前だ。いくら俺とて、年頃の娘の前でキ○タマだなんだと言うつもりはない」
それなら妾の前でも言わないで、と長離は思ったが、口には出さなかった。彼も悪気があってやっているわけではないのだ。
むしろ、長離を楽しませたいという純粋な気持ちで話してくれたのだろう。結果的に余計なお世話ではあったが。
「哥舒臨、何か他の話はないの?」
「他?他か・・・」
哥舒臨はしばし考え込み、茶を飲んだ後、「あ」と小さく声を上げた。
「忌炎の槍が突然長ネギになった話はどうだ?」
「長ネギ?・・・へえ、それは興味深い」
長離は身を乗り出して机に肘をつき、組んだ手の上に軽く顎をのせた。
興味を示した長離に、哥舒臨は上機嫌で語り始める。今度こそ、彼女を笑わせてみせようじゃないか。