饂飩粉
2025-08-19 12:43:53
7593文字
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ヒトリ・フタリ・サンニン

ブルーロック凪玲王夢小説ポリアモリー夢小説です。

絵心甚八の理論を凪と玲王が粉々に打ち砕いたその後の話という位置付けです。
※事後描写やボディタッチ描写があり、性行為も仄めかします。キャラクターは全員成人済想定。

「ただいま」
 玄関のドアが開く音と一緒に、誠士郎の声が聞こえてきた。
 私はリビングでソファに体を預けながら見ていたサブスク配信の映画を一時停止する。
 ほどなくして、玄関に通ずる廊下とを隔てるドアから誠士郎が現れる。
「おかえり」
 と言いながら私はローテーブルに広げたポテチをつまむ。
「何見てんの?」
 誠士郎は特に興味もなさそうに聞きながらポテチに手を伸ばしてきたので。その手の甲をぺちっと叩いて制する。
「手洗ってないでしょ」
……洗ったけど」
「今の間は絶対に洗ってない。帰ってきてからここまで来るのが早すぎ。手洗ってたらもっと時間かかるから」
……めんどくさ」
 誠士郎は不服そうに口を膨らませて、洗面台に引き返していく。
「凪、帰ってきたのか?」
 リビングの奥にある別の部屋から、ヘッドセットを付けた玲王が顔を覗かせた。でも誠士郎は洗面台に行ったばかりで、ちょうど入れ違いとなってしまっている。
「今手洗わせてる。会議中じゃなかったっけ?」
「ちょうど終わったとこ。そっちの方はどう?」
 玲王はヘッドセットを首に掛けると、私の右隣に座った。
 私は耳から御影コーポレーションが作った瞬間同時通訳イヤホンを外す。
「今のところ違和感ないよ。本当に吹替版見てるみたいな感じ」
「セリフが被ったりするところは?」
「ちゃんと訳せてる」
「ちなみに何見てんの?」
 一時停止している超薄型の壁掛けテレビには、人の顔を模ったチープなお面で顔を隠した男が映っている。
「『タイム・カット』って映画。20年前にタイムスリップした主人公が、その時代に殺された姉を助けようとする話」
「それ、助けたら主人公の方が存在できなくなるとか、そんな風になったりしないのか?」
「鋭いね。そういう話もしてた。実は見たことある?」
「いや、見てない」
 玲王は本当に頭の回転が早い。映画のあらすじを言えば、ある程度結末を当ててしまうこともある。以前、それなのにどうして映画を見るのか聞いたことがあったが、その時は「映画はストーリーだけじゃない。実際に見てみないとわからないこともある」と言っていた。
——ってか、晩飯前なのにポテチ食べてんのか」
 玲王は目ざとく——とは言え隠してるつもりはないけど——ローテーブルに広がったポテチに視線を落とした。
「いいの。別腹だから」
「お前の腹は一つだよ。本当に大丈夫か?」
 玲王の目線はローテーブルから私の足先を辿り、お腹の辺りで止まる。
「私が太ったら嫌?」
「違ぇよ。お前がお前の体のこと好きでいられて、健康を心配するほどにならなきゃ、好きにすればいい」
「ならまだ心配しなくていいよ」
 そう言っても、玲王の目線は私のお腹から離れない。その間も、玲王の右手は所在なさげにソファの座面を撫でている。
……触って、確かめてもいいか?」
 玲王が耳を赤くしながら、私の体に触れてもいいか聞いてくるのは、そういうことをしたい合図だった。
……いいよ」
 私の中のメーターが、"その気"の方に傾く。回転式の隠し扉の向こう側にいた性欲が、最初からそこにいたかのように吐息や目線に相乗りする。玲王が誘ってくるまでそんなつもりはまるでなかったのに、ずっと待ち焦がれていたと錯覚する。
 玲王の手がぎこちなく伸びて、服越しに私のお腹を撫でようとした時だった。
「あれ、玲王もいる」
 手洗いを終えた誠士郎が戻ってきていた。玲王は慌てて手を引っ込めたが、さすがにもうバレてる。
 誠士郎は大きな予備動作もなく軽々と私達を飛び越えて、テトリスの長い棒みたいに綺麗に私の左隣に収まった。
 玲王と誠士郎が、ちょうど私を左右から挟み込む。
「俺も触りたい」
「いいよ」
 誠士郎の手は、玲王と違って遠慮がない。まるで隙間に潜り込む猫のように誠士郎の手は私の服の内側に入り込んで、直に肌と触れ合う。
「凪、お前、いつも雰囲気とかさ」
「でも、玲王も結局するじゃん」
 呆れ顔の玲王は誠士郎にあっさり言い負かされる。
 玲王の手が入り込んでくる頃には、誠士郎の手はもう、私の胸の方に伸びている——

———

 三人とも中途半端に服がはだけたまま、ソファに川の字になって寝転がっている。誠士郎とキスをしてる間に、玲王がソファの背もたれを倒してベッドの状態にしてくれたのだ。
 川の字の真ん中に、私はいる。右隣が玲王で、左が誠士郎。
 服の中でブラジャーは上にずれているし、ショーツにも片足しか通っていない。部屋着のスエットパンツは早々に脱がされて誠士郎がどこかに投げてしまった。空調は快適な室温を提供してくれているけど、下半身がちょっとだけ肌寒い。
「ねえ、今日玲王と誠士郎キスした?」
「「あ」」
 二人が揃って間の抜けた返事をしたので、思わず笑ってしまう。
「また忘れちゃったんだ」
「二人でするときは忘れないんだけどな」
「え、じゃあ今しとく?」
「そんな気持ちでするもんじゃないだろ」
「どういう気持ちならいいの?」
「もっとこう、お互いのこと好きだなーって気持ちが高まった時にさ……
「俺は今も、玲王のこと好きだなーって気持ち、高まってるけど」
「っ——今もスマホ横持ちしてゲームしてた奴に言われても信じられるかっ」
「試してみる?」
 玲王が何かを言い返す前に、誠士郎は私と交差するように体を持ち上げていた。私の視界は誠士郎のガッシリした上半身で覆い尽くされる。あどけなさの残る顔とは裏腹に、その肉体は鍛え上げられたスポーツマンそのものだ。横に並んで寝転がっていると、そのことをいつも忘れてしまいそうになる。
 誠士郎の体に見惚れていると、右隣では玲王と誠士郎が唇を重ねていた。玲王は目を閉じてうっとりしているし、誠士郎も同じように他の感覚を閉じて、舌や唇に集中している。まるでジグソーパズルがぴったりと嵌まったかのように、二人の唇が重なっている状態が本来の姿であったかのようだ。ついさっきまで私も何度も二人としていたことだけど、自分が二人とどんなキスをしているのか、逆観的に見ることは叶わない。私の唇は腹を空かせた子供みたいになっている。
「キスって、三人じゃ上手くできないんだよね」
 二人の口付けが羨ましくて、思わず口をついて出てしまう。二人とも目を開けて、私を見つめ返してくる。
 以前三人で同時にキスしようとしたことがあるが、まるで自分が餌に群がる鯉になったような気がして、気持ちは萎えてしまった。
「昔のロボットアニメでさ、キミは私とあの子どっちとキスするの〜みたいな歌詞の主題歌があってね」
 キスを終えた誠士郎は私と玲王に覆い被さるように寝そべり、顔を玲王の胸に預けている。
「その歌詞の通りに男の主人公とヒロインの女の子二人の三角関係みたいになって、そのアニメの最終回で主人公が『お前たち二人が俺の翼だー!』ってセリフがあるの」
「なんかそれ聞いたことあるかも」
 誠士郎は相槌を打ってくれたけど、玲王は思い当たる節がないみたいだった。まあ私達が六歳くらいの頃に深夜に放送してたアニメだから、知らないのも無理はない。私はオタク気質なところがあるから、配信で見たけれど。
「それでその劇場版ではラストの展開がテレビ版と違ってて、二人のヒロインのうち明確に一人を選ぶようなラストになっちゃってて、なんかめっちゃショックだったんだよね」
 私はあのアニメのテレビ版の結末が好きだった。結論の先延ばしみたいな風に言われてたらしいし、どちらかといえばモノアモリーな価値観が根付いてる物語だったけど、三人で一つの形になれる可能性を感じた。
「じゃあ、お前にとって俺と凪は翼ってこと?」
「ううん、翼よりも、ずっと大切だよ」
「なら、安心した」
 玲王とキス。
「俺ともキスしてよ」
 私と玲王がイチャイチャするとすぐ誠士郎が駄々をこねるので、誠士郎ともキス。
 そうしてるうちに、私はあることを思い出した。
「あ、映画途中だった」
 テレビには契約しているサブスクの配信サービスがスクリーンセーバーのようにさまざまな映画のワンシーンを流している。
 時刻を確認すると、一時停止してから映画一本分くらいの時間が経過していた。
「俺はそろそろ次の打ち合わせだ」
 玲王が身を起こし、ほっぽり投げた服から自分の分を探して袖を通していく。玲王は起業して、御影コーポレーションの下請けやその他手広く事業を手掛けている。同時通訳イヤホンのデバッグや改良も、その一環だ。
 私も誠士郎も体を起こして、ソファの背もたれを持ち上げる。
「俺は、映画一緒に見ようかな」
 誠士郎はソファにだらしなく腰掛けた。そうでもしないと、身長差がありすぎて私の肩に頭を乗せられないからだ。
「最初から見る? まだ三〇分くらいしか見てないし」
「うん、よろしく」
「んじゃ、後でな」
 玲王が自室に戻っていくのを見届けてから、私と誠士郎は『タイム・カット』を最初から再生した。

———

「映画どうだった?」
 映画を見終わってしばらくして、玲王がまた自室から出てきた。
 誠士郎は疲れていたのか、完全に途中から寝落ちして、今も私の肩で寝息を立てている。
「面白かったけど、ちょっと切なくなっちゃうシーンもあった」
「どんなシーン?」
 玲王は誠士郎を起こさないように慎重に歩いてきて、私の隣に座る。また私が、二人に挟まれる格好だ。
「二〇年前にタイムスリップした主人公が、同性愛者に『二〇年後は同性婚も合法化されるよ』って励ますシーンがあってさ。日本が舞台だったら言えないセリフだなーって思ったら、ちょっとね」
「あー……それは、そうだな」
 玲王は苦笑する。私もつられて笑う。
 日本はまだ、同性婚が認められていない。
 私達三人の関係性は、同性婚が認められて、さらにその先にあるのだけど。
「映画自体は、面白かったんだけどね」
「時代を映す鏡とはよく言ったもんだな。ところで、こっちはどうだった?」
 玲王は耳の辺りをトントンと指で叩くジェスチャーをする。仕事的にはこちらの方が本題のはずなのに。
「話を理解するのには苦労しなかったけど、ちょっと口調が変かも? って思うところがあったから、タイムラインとセリフ書き起こしたやつ後でメールするね」
 私は既に外していた同時通訳イヤホンを玲王に返す。
「さんきゅ。やっぱりまだ改良の余地あるな」
「それって、AIみたいな機能で翻訳してるの?」
「そんなとこ。データセットは実際に翻訳家や通訳者を雇って、学習に協力してもらってる。そろそろ一般販売もしたいんだけど、話を通さなきゃいけないところが多すぎるわ」
 わざとらしくため息を吐く玲王だけど、悲嘆に暮れているようには見えなかった。
「でも玲王、楽しんでるでしょ」
「まあな。親父が宇宙を目指してる間に、俺は世界を獲ってやる」
「玲王のお父さんの会社って、宇宙進出目指してるんだっけ?」
「そ。まずは地球上での言語の壁を越えようってことで開発したのがこのイヤホン」
「で、その事業は玲王が買収したと」
「まあな。今でも昨日のことのように思い出すわ、あの親父のビックリした顔……
 瞼の裏にその光景が焼きついているかのように、玲王が目を閉じる。
 青い監獄(ブルーロック)で、玲王と誠士郎は二人でサッカーをすることの価値を証明したけど、戦いはまだ続いている。今は二人ともヨーロッパリーグのチームに所属していて、玲王はその傍ら会社の経営もしている。サッカーがオフシーズンだろうと、会社の経営にまとまった休みはない。
「玲王はビジネスマンとしても一流だねえ」
「やると決めたからには、サッカーも会社経営も中途半端にはできねえよ」
 満足げに笑う玲王を、私は少しだけいじめたくなる。
「ねえ、まだイーロン・マスクのこと好き?」
「なっ——お前!」
 玲王の耳がみるみるうちに赤くなっていく。
 玲王や誠士郎が参加したストライカー養成プロジェクトの青い監獄(ブルーロック)がサブスク配信サービスを始めた頃、事前のインタビューから作られた参加メンバーのプロフィール情報などが併せて公開された。その中で玲王は「好きな歴史上の人物は?」という質問にイーロン・マスクと回答していたのだ。
「あの回答、かなり前のめり気味だったよね」
「なんでそんなことまで覚えてるんだよ。証跡は全部消したはずなのに……
「あんな典型的なテック右翼になるなんて、玲王にも予測できなかったんだね」
……ああそーだよ。俺もまだ見通しが甘かった頃だ」
 玲王が恥ずかしさを誤魔化すようにふんぞり返る。
「ってか、ずっと俺をそのことでイジるつもりで今まで黙ってたワケ?」
「いやあ、機会なくって」
「んだよそれ……他に何かあるなら今のうちに言ってくれ」
「何の話?」
 気がつくと反対側で寝ていた誠士郎が、寝ぼけ眼を擦っている。
「玲王の恥ずかしい話」
……玲王は左の乳首の方が感じる」
——ほ?」
 誠士郎にも聞かせたくてうずうずしていた気持ちが、一瞬にして吹き飛んだ。
 素早く玲王を振り返ると、耳どころか顔まで赤くして口をぱくぱくさせている。
「へえ、利き足は右なのに」
「うっせえ! それにそんなん嘘に決まってんだろ」
「え、でも感じ方全然違うじゃん」
「誠士郎、ナイスアシスト」
 笑い過ぎて腹筋が痛くなってきた。
 誠士郎は口元がほんの少しだけ緩んでいるけど、これはかなり笑っている方だ。
「もうお前らなんか知らん!」
 玲王はこちらに背中を向けて丸まってしまう。いじけ方まで可愛いので、私はますますそそられてしまう。
「ごめんってば〜」
「ごめんってばー」
「相対的に凪の方が誠意が足りねえ」
 玲王がむすっとした顔で振り返る。
「何で俺だけ。同じ謝罪だったのに」
「真似しただけだろ。俺の前で誰かの真似するなら俺くらいちゃんと真似ろ」
「そんなん無理ゲーじゃん」
「だったら真似すんな」
 私は、二人のやりとりを間近で眺めているのも好きだ。特等席って感じがする。でも、ちゃんと手を伸ばせば届く距離に、二人がいる。
「はい。じゃあ二人とも私にキスして。それで喧嘩両成敗ね」
 私がパンと音を立てて手を合わせると、二人の視線が揃って私に向けられる。でも、その目線はどこか白々しい。
「何言ってんの?」
「事の発端はお前のせいだからな?」
「あれ、上手く収まらない……
 気がつけば言い争いをしていた二人はアイコンタクトで通じ合っている。
「凪、ここからは共闘だ」
「YES BOSS」
 玲王と誠士郎、二人の視線に射竦められた私の体は、不思議と期待に震えている。
——いいよ。さっきみたいに、まとめて相手したげる」
 そしてお互いの一部を分け合うようなキスを、交互に、何度も、重ねる——

———

 夜と朝の狭間。
 ふと目が覚めたので、二人が寝ている寝室からそっと抜け出して、リビングのソファに腰掛ける。
 両肩に、玲王と誠士郎の温もりが僅かに残っている。今まで蓋をしていた寂しさが、よく降った炭酸飲料のように溢れ出してくる。
 ヨーロッパリーグのオフシーズンが、もうすぐ終わる。厳密にはそれよりも少し早いタイミングで、プレシーズンのキャンプも開催される。
 玲王も誠士郎も、また海外に行ってしまう。
 その気になれば二人について行って、一緒に過ごすこともできる。でもそうしてしまうと、私は今の仕事を辞めて二人に養ってもらうだけの存在になってしまう。自動翻訳のイヤホンがあるので現地で話を聞くのは困らないけど、私から話をすることはできない。それに、今の仕事も好きだし、私の一部になっている。
 二人ともこまめに連絡をくれるし——誠士郎はたまに忘れるけど——シーズン中ずっと会えないわけではない。私の方から会いに行ったり、日本での試合のために一時帰国する時は必ず会いに来てくれる。
 それでも、ふとした瞬間に、自分が二人にとって重荷になっている瞬間があるのではと感じてしまう。毎年、オフシーズンが終わりに差し掛かる頃、その気持ちが鎖のように体にまとわりつく。
「寝ないの?」
 振り返ると、寝ぼけ眼を擦っている誠士郎が立っていた。同時に、表面張力か意地か何かで瞳の中に留まっていた涙が頬を伝った。
「また、寂しくなった?」
……うん」
 誠士郎が隣に腰掛ける。
「一緒に来てもいいけど、それは嫌なんだよね」
「うん。今の仕事辞めたくないし、二人にもっと迷惑かけることになるし」
「迷惑なんて思わないけど、君がそう思ってるなら、今のままでいいんじゃない。でも——
 誠士郎はそこで言葉を切った。そんな風に言い淀む誠士郎は、珍しい。
「でも——俺や玲王も、寂しいよ」
 誠士郎は、両手の親指でそれぞれ円を描くように回している。透明なスマホでゲームをしているかのようだった。
「俺も玲王も、全力でサッカーしても他のことする余裕あるけど、そこに君がいないと寂しい。玲王と二人ですることもあるけど、本当は君も含めた三人でするのが一番好き。キスする時も、君がそばにいてほしい。君とキスする時は、玲王がそばにいてほしい」
「誠士郎……
「三人がいいんだ。三人じゃないと。三人なら、俺の右手と左手を、君と玲王と繋げられるから——って、玲王が前に言ってたんだけど」
「いや、途中からそうなんじゃないかなって、ちょっと思ってた。でも、ありがと」
 溢れ出していた寂しさの一つ一つを、誠士郎と玲王が、拾い上げてくれたような気がした。心の中に火が灯るように、窓の向こうでも夜空を押し返して太陽が昇りつつあった。
「どういたしまして。ちなみに俺も、玲王と同じ気持ちだから」
「知ってる。ちなみに私もだよ」
 誠士郎の肩に頭を乗せるつもりでもたれかかろうとしたら、胸で受け止めてくれた。堅くて、温かい。自然と、相手の背中に手を回して抱き合う格好になる。
……玲王も呼ぶ?」
 誠士郎の提案に、顔を埋めたまま首を横に振る。
「後で玲王にも思いっきりハグするから、もう少し、このままがいい」
「わかった」

 私と誠士郎は、玲王に起こされるまでその姿勢のまま眠ってしまった。
 玲王はかなりやきもち焼いてたけど、同じくらい強くハグしたら、何とかなった。

 もうすぐ、オフシーズンが終わる。
 それまでの間、もっともっと、二人と愛し合おう。
 私達は、三人でいることで、形を保てるから。