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syanpon
2025-08-19 02:11:56
1975文字
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お互いさまだよ
現パロ
オトスバ
――
自分だけではないのだろう。
そういうことをたまに考える。
淡い焦燥感に苛まれ、酷く喉が渇く。
恋人のことが、オットーのことがスバルは大好きだった、恋をしていた。
腕に抱かれると安心する、頬を撫でる灰の髪は太陽の光を透かし星のようにさらさらと輝き、ゆれるたびに音もなく、花火のように光るそれが好きだった。
青空を閉じ込めたような瞳がスバルを映すのが好きだった。
あの瞳に見つめられると自分自身も特別な何かになったような気がするから。
いつも、一生懸命に恋をしていた。
「いつかの日、お前に捨てられるんじゃないかって思う時があるんだよ」
「は」
オットーはギュッと眉を寄せた。きゅうと口元をへの字に曲げ、突然地雷に飛び込んできた可愛くて愚かな恋人を逃すまいと抱き寄せた腕にぎゅうぎゅうに力を込める。
「痛い痛い痛いギブギブギブギブ」
「ああ、あんたがあまりにバカなこと言うからつい」
「え、ここで謝らない系? 嘘ナツキくんびっくり
……
あいたたたた!絡まってる! 絡まってる! おいこら足の長さの暴力だろ!」
バタバタと暴れる足を両の足で絡めとり拘束すれば動かせる箇所が頭と口だけになり短い黒髪がパタパタと踊った。が、しばらくしてその動きがぴたりと止まる。疲れたのだろう。ぐにゃりと体の力を抜き切った男はその甘えるような距離と裏腹に人でも殺しそうな目でオットーを睨んでいる。
「すみません。バカな事をこれ以上言う前にと思ってつい」
「こんなに申し訳ないと思ってなさそうな謝罪もなかなか見れないな」
ぐるりとスバルがオットーの膝の上で回り、向かい合わせの形に収まる。真っ黒な瞳がオットーを見つめてゆっくりと瞬いた。
「お前はさ、要領良くてさ、運動もできて人当たりも性格もいいじゃん。不運なのはまぁ置いておくとして」
「さらりとディス入れてきやがる」
「だからさ、俺がいなくても生きていけるわけよ。んで、多分どうなるかは知らないけど俺だって1人で生きていける」
話している内容は突っ込みたいことばかりだったがオットーの頬を撫で、目尻に触れるその指先が震えていなかったからほんの少しだけ口をつぐむことにした。細くてカサついた指が耳の後ろを通って髪の間に指が差し込まれる。
戯れるように額に唇が押し当てられた。髪に、頬に、鼻先に、目元に口付けが落とされたあと、こつりと額と額が合わさる。
まつ毛が絡まるほどの距離で、吐息がわかるほどの距離でゆるりとスバルが微笑む。
「でもさ、いなくなったらのことなんて想像できねぇの。ずっと前は夢に出てきたはずなのに。なぁオットー、お前だけは誰にもやらないよ。お前の優しさを他の誰が知ったとしても、欲しがったとしてもお前だけはくれてやらない。お前といてどうしようもなく渇いて、不安になることもあるけど全部捨ててやらない。だからいいよって言って、この我儘にいいよって言って」
「馬鹿な人。本当にバカな人。初めからずうっと僕はあんたのものですよ。あんたも、あんたが僕に抱いた感情全て僕のものであんたは僕のものだ。あんたがそれに気がつく前から僕はあんたが大切でした」
でも、どうせなら言葉にしてくださいよ。
オットーが甘えるようにねだればスバルは破顔した。
「はは! 好き、好きだよオットー! なあオットーは俺のこと好き? 俺はお前のことが大好きでずっと一緒にいたいと思っているよ」
「好きです、この世の何よりも好きです。好きと言う度にこの言葉が陳腐に思えてしまうくらいには。ねぇナツキさん、ギュッとしていいですか?」
言うが早いかオットーはスバルのことをぎゅうっと腕の中に閉じ込めた。
したくなってしまったからさっきスバルがしたように髪や額や鼻先に唇を寄せて笑う。
怒られるかな、なんて思いながら唇に唇を押し当てるとちょっとだけ固まったのちにペロリと舐められた。戯れのつもりで舌を入れて絡ませるとすぐに逃げられ、遊ぶように唇をかぷかぷと喰まれる。ちゅうと吸いつかれたあと、スバルの方からぎゅっと抱きしめられた。
慣れた温もりだ。これだけが、これだけがあればいいのに喉が渇く。
温度のある場所全てに触れて、感覚の宿る場所全てを感じたくて、全部混じってしまえばいいのに混ざり合ってしまうのも少し違う。
ほんの少し体を離して見つめ合えばまっすぐな黒瞳にオットーの姿が映り込む。真昼間の星が煌めいて夜の色に自惚れなしに愛が滲む姿をオットーは見た。
黒が弾けて、青がゆらめく。
一生懸命に恋をして、際限ない愛に包まれ、それでも足りないと愛をねだりながら昼間の一等星はからりと笑う。
「本当、お前、俺のこと好きだよな」
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