2025-08-18 22:07:46
1350文字
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雨燦々と

8/17インテの無配でした。
☀️くんのユニ魔に関する、ほんのり🐍☀️なSS

「オアシス・メイカー!」
 冷たい水が降る。
 口に含めばまろやかで、ほんのりと甘い、甘露のような雫。それがまるで土砂降りの雨のように勢いよく降り注いで、みるみるうちに体を濡らす。
「カーリーム?」
「あっ」
 同じくずぶ濡れになったカリムが、やっちまった、という顔で振り向く。
「部屋でユニーク魔法を使うなと言っただろう!」
「バルコニーだからいいかなと思ったんだけどさぁ」
「部屋の中まで! 濡れてるだろうが!」
「すまん!」
 手を合わせるカリムの横で、こちらも水浸しの魔法の絨毯がぴょんぴょん楽しそうに跳ねていた。お前はあとでしっっっっかり乾かしてやるからな。
 寝る前に確認したいことができてカリムの部屋を訪れたら、カリムが絨毯を洗おうとしていた。止める間もなくユニーク魔法を発動させ、みんな揃って濡れ鼠だ。
「まったく。お前のユニーク魔法は加減が効かないんだから、室内で使うんじゃない」
「オレが魔力の細かい操作ができないからだよ。練習していれば出来るようになるはずなんだ」
 でも、出来ていないじゃないか。言いかけた言葉を飲み込む。練習、していたのか。
……練習するなら、いくら濡らしてもいい外でやれ」
「それもそうだな。よし、今から行くか!」
「え? あっおい」
「ジャミルも来いよ!」
 俺が断ったら、こいつは一人で行くんだろう。
 ふわりと浮かんだ絨毯の上から差し出された手を、ため息をつきながら握った。

 東のオアシスは干上がっていた。カリムが折に触れてユニーク魔法で水を満たすが、日が経てば干上がってしまう。
「熱砂の憩い、終わらぬ宴」
 それでもカリムは、そこに水を注ぐ。何度でも。
「歌え、踊れ! オアシス・メイカー!」
 オアシス・メイカーで生み出された澄んだ水が降り注ぎ、みるみるうちに枯れたオアシスを満たす。
「おい。魔力の操作の練習をするんじゃなかったのか?」
「あっ、そうだった! とりあえず満杯にしなきゃって思っちまった」
「はあ……ほら、ゴブレットを持ってきたから。これ一杯分の水を出せ」
「おう!」
 手に持ったゴブレットを示してみせれば、カリムが再び詠唱を始める。それを聞きながら、俺はオアシスの水面を眺めた。
 カリムはこれからも俺の言いつけを守らず屋内でユニーク魔法を使うし、俺に断りなく絨毯でどこかへ行ってしまうし、意味もなくユニーク魔法を使って水を出すのだろう。そして何度でも、渇いたオアシスを満たす。また空っぽになるとわかっていながら。
 それでいい。俺もカリムも、すぐに何かが劇的に変わるわけじゃない。
 それでも少しずつ、変わっていくのだろう。そう確信しているから、楽に呼吸ができる。明日を呪わずに生きていける。
「オアシス・メイカー!」
 ばしゃあ、と頭上から水が降ってきて、俺は再びずぶ濡れになった。
「カーリーム?」
「うわっ! 悪ぃジャミル!」
 何度でも、カリムは水を注ぐ。何度乾いてしまったとしても。
「っはは、まったく。カリム」
「ん?」
「お前のユニーク魔法は、綺麗だな」
 目をぱちくりと瞬かせたあと、カリムは目を細めて微笑んだ。
「ありがとう!」
 その表情がひどく美しく見えたことは、決して言ってやらない。