三毛田
2025-08-18 20:22:31
1064文字
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88 088. 助走をつけて

88日目
君に飛びつく

 意外と自慢できることだが、俺は運動神経がいい。
 陸上競技も、球技も、器械運動も。何だかんだで卒なくこなす。
 ちなみに、短距離も長距離もどちらも得意。
「たんこ〜せんせ。一緒に帰ろう」
 助走をつけて背中に飛び乗り、耳元で囁く。
 体幹のしっかりしている彼は、ふらつくことなく俺を背中で受けとめてくれる。が、確実といっていいほどこの後にはお説教だ。
「穹。飛びついたら危ないだろう」
「他に人がいないことを確認しました。それに、お前なら俺が走ってきてることくらい、わかっていただろ?」
 そうでなければ、わざわざ道の真ん中で立ち止まっていたりしない。
 彼、丹恒は小学生の頃からの幼馴染だ。
 同じクラスで、休み時間に一人だけ本を読んでいた。でも、外で遊ばはいと体に良くないと遊びに誘って。
 そしたら、本を読むことも大切だと、科学の本から始まりいろいろ読まされ。
 お互いに譲れないものはあるけれど、引き際をしっかりと見極められる。そんな共通点に気づいてから仲良くなった。
 大切な親友で、大好きな人。
 親しい女性陣が何かと厳しいので、丹恒の甘やかしながなかったら早々に心が折れて、引きこもりになっていたかもしれない。
『あんたが引きこもり? 無い無い。行動力と好奇心の権化のあんたが引きこもりとか、絶対無理。丹恒が引きこもりになるなら分かるけど』
 俺がグチグチ言ったら、双子の星に呆れたように言われた。しかも、断言。
 まあ、確かに丹恒なら部屋に必要なものと本の山があれば、いくらでも引きこもるだろう。
 それくらい知識欲の塊なのだ、彼は。
「それはそうだが。他の人には、やるなよ。今の勢いだと、受け止めれずに怪我をする」
「はーい」
「このまま歩いていいのか」
「ううん。手を繋いで歩きたい。いい?」
「お前の好きにしろ」
 背中から降りて、いそいそと隣へ。そっと手を差し出すと、ためらわずに握ってくれる。
「えっ、えへへ」
 嬉しくて、だけどちょっぴり恥ずかしくて変な声が。
「自分から言い出しておきながらなんだその反応は」
 呆れたようにこちらを見るけれど、目元は優しい。
 流石俺の丹恒先生。俺を甘やかすのが上手だ。
「丹恒、今日の夕飯は?」
「昨日の夜に作った角煮と味付き卵を、丼にして食べる」
「うわ~! 美味しそう」
「家が隣だったら、突撃したのに」
「残念だったな」
「今度泊まりに行ったら、作って! ううん。一緒に作ろう!」
「ああ、構わない」
 俺の提案に嬉しそうな表情。
「キス、いい?」