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望月 鏡翠
2025-08-18 00:37:31
1057文字
Public
日課
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#1815 「特別」「甘酢」「長期」
#毎日最低800文字のSSを書く
本国から届いた指示書は、公共料金の支払い通知に混ざって見逃すところだった。本当なら全部講座引き換えにしてしまいたいのだが、銀行口座が開設できないからいちいちコンビニに持ち込んで、現金で支払っている。
大事な手紙コーナーに突っ込んであったからかろうじて気がついたが、見慣れた公共料金らしい封筒の見た目をしていなかったので、確認が遅れた。
「ねえ、ちょっとこれ大事な手紙なんじゃない?」
すっかり家政婦と化している少女が眼前で封筒をチラチラさせる。
「あ、ほんとだ。よくわかったね」
「だ〜ってさぁ、全然わからない字が書いてあるんだもん」
受けとろうとすると取り上げられた。ギリギリ指が届かないところにぶら下げられている。
「だらしないから、ちゃんと起きてください」
「わかったわかった」
こたつで横になった姿勢から起き上がる。ついでに冷蔵庫から冷えたビールを補充しておつまみも更に盛り直した。
薄桃色をした生姜の甘酢漬けはいつ食べても美味しい。これが通年食べられるなんて奇跡に等しい。今の生活を手放したくないと思いながら、封筒を開いた。
機密事項だが、覗き見の心配はしていなかった。この国の人間は私の故郷の文字を読むことも話すこともできない。学者の先生たちが寄り集まって調査したら、解き明かすこともできるのだろうが、そうならないように読んだら即廃棄を心がけている。
「なんて書いてあったの」
「任期延長」
本国に帰らずに住んでほっとした。一時派遣のはずだったのに随分と長期任務になった。今では地球での生活が身になじみ、本国での生活を忘れてしまうほどだ。
「任務ってなんなの? 何しにきてるの」
人を暇人みたいに言うじゃないか。
「地球特別派遣調査官だよ」
この星の生命が宇宙の一員として加わるに足る存在かどうかを調査し、宇宙人の存在を明かしたときに、そのことを受け入れることができるのかを判断するのだ。
異なる星と接触するときは段階を踏まなければ、それがきっかけで戦争が起こったり生物相が全く変化してしまったりする。
「それなのになんで猫を飼いながらこたつでゴロゴロしてるわけ?」
「猫だって地球の生命の一員だろう。それに人間に世話をさせて安全な環境を手に入れて暮らしている。人間より上位の、我々が接触するべき存在だよ」
ハチワレ猫の背中の毛並みを撫でながら、私は答えた。
この星の覇権生物が人間だなんて我々はまだ認めていないのだから、猫にだってゴキブリにだって発言権はあるんだぜ。
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