すだ
2025-08-17 21:42:28
1578文字
Public 婿スバカグ
 

ツバメとカグヤとスバル

絆レベル3くらい。
婿スバルと舞手カグヤをツバメの姉御が見守る短いお話。
スバルは自覚なしにカグヤへの好意を垂れ流す。
メインストーリーのネタバレあり。(故郷関係)
#スバカグ

「ツバメさん、こんにちは!」
「こんにちは。カグヤちゃん、今日は随分軽装だね」
 今日のカグヤはいつものかっちりした格好ではなく、浴衣を着ていた。赤色が彼女の白銀色の髪とよく合っている。
「はい。実はカナタさんにせがまれて、海辺で追いかけっこをすることになりまして」
「あら、いいじゃないか。里の子たちも一緒なのかい?」
「はい」
「楽しんでおいで!」
「はい!」


「ツバメさん、荷物ここに置いておきますね……。どうかしました? 何だか嬉しそうですけど」
 荷物を運んできたスバルがツバメに話しかけてきた。
「いやね、カグヤちゃんが楽しそうに遊んでいるのが嬉しくてさ」
 幼い頃からいつか果たす使命を負って育ってきたカグヤとスバル。寂れた寒村で同年代の子供が少ない環境の中幼少期を過ごしたふたりにとって、心置きなく遊べた時間はどれほどあったのだろう。
 そんなカグヤが、今は里の子たちに混じって楽しそうに笑っている。姉貴分として本当に良かったと思うし、これからも幸せに生きて欲しいと願ってやまない。
 そして、ツバメの隣にいるこの青年も。
「スバルも遊んできていいんだよ?」
「ええ? オレは店番がありますから!」
「ふふ、そうかい? あら、追いかけっこから水遊びに変わったのかね? おやおやカナタさんったらあんなに水をかけたらカグヤちゃんがずぶ濡れになっちまうよ」
 カグヤたちのじゃれ合いが可愛らしくて、ついついスバルに実況してしまうツバメの元にクサツが駆け寄って来た。
「ツバメさーん! この間お願いしてた商品、届いたっスか?」
「ああ、はいはい。届いてるよ。ちょっと待っとくれ……
 クサツに渡す商品を取り出そうとツバメが屈みこむと、頭上から陽気なクサツの声が降ってきた。
「お、カグヤちゃんとカナタ様がいるっスね。いやー、やっぱり華のある方々は絵になりますねー。スバルくんは一緒にいなくていいんスか……
「クサツさん? どう……
 どうしたんだい、という言葉は最後まで発せなかった。唖然としたクサツの視線の先には、見たこともないスバルの姿があったからだ。
 何もかもが愛おしくてたまらないと、それは幸せそうに蕩け切った表情で、彼は幼馴染を目で追っていた。
「とんでもないものを見た気分っス……
「アハハ、初々しくて結構だねえ」
「え? 何かありました二人とも?」
「これで自覚がないんだから始末に追えないよ」
「うう……完璧に貰い事故っス……
「え? え?」
「何でもないよ。それよりあんなにずぶ濡れじゃカグヤちゃんもカナタさんも体が冷えちまうかもしれない。ほら、持っていってやりな」
 そう言って仕入れたばかりのタオルをふたり分渡してやると、スバルは素直に頷いた。
「はい、用が済んだらすぐ戻ってきますね」
「慌てなくていいからね」
 スバルは一礼して踵を返すと幼馴染の元へと走り出した。彼が近づいてきたことに気づいたカグヤが明るい表情を見せる。
 カナタにタオルを渡したスバルは、もうひとつのタオルで幼馴染の髪を拭き始めた。
 嬉しそうに微笑むと、カナタに何か言ったカグヤが同じように天の神の髪を拭き始める。
「今日も平和だねえ」
「そうっスねえ」
「クサツさん、入浴券を遊んでる子らの分、売っとくれ」
「ええ? いいんスか?」
「海水はベタつくから、遊んだ後はクサツ温泉に限るよ! いいものを見せてもらったからね」
 里の将来は明るいと思わせてくれるふたりの姿に心打たれたツバメである。柄にもなく大盤振る舞いをしてしまったが、後悔はない。
「じゃあ、俺にも半分出させて欲しいっス」
「そうかい? 悪いねえ」


 きっと後でスバルがタオルを洗濯している姿が見られるだろう。夏の里は本日も晴天なり。洗濯物が良く乾くはずだ。