奏城
2025-08-17 18:52:26
3002文字
Public 与太話
 

【巫フレ】エルミーの災難

《前置き》
チンデビを知ってるかな?おもろギャグ漫画だよ。男性器に支配され狂っていく人々と、それに冷静さと情熱を持って争う主人公たちの話だよ。男女問わず男性器に狂わされていくのが非常に愉快なのでおすすめです。読んでみてね!
《前置き終わり》

女子に男性器を生やすタチの悪い通り魔に襲われたエルミー。
生理変化系統、回復治癒系統のアーツなら可能では?(※アークナイツ特別PV「リターニア:源石アーツA1.1」参照)
命弦で出来た身体であり、糸になったり身体を編み直すことが出来るなら、一番気に入ってる姿をしてるのがリッチだったりするのかなって。
ここに男性器に狂う人はいないけど、エルミーも巫フレも真面目に話すし考察しそうだなって思ったところから出来ました。出来心です。
エルマンガルドのことをフレモントは「エルマンガルド」、オットーは「エルミー」って呼びます。
ヘーアクンフツホルン=オットーなので、両方の記載があります。
発端になったのが上記《前振り》のオマージュでもあるのでご注意下さい。
※喧嘩出来るほど仲が良いと思っているし、リターニアの治安が悪い。気をつけて。

…………ほんっっっっっとうにありえませんの………………

 大きな帽子に隠されているが、メソメソとすすり鳴く声と、机に突っ伏す黒の薄布でおおわれた背中が深い哀切あいせつを見せていた。
 エルマンガルドの他、ここにいるのはフレモントと始源の角ヘーアクンフツホルン――。リターニアの皇帝は所用のため、ルートヴィヒ大学に顔を出していた。
 来てみれば知り合いの女性が潸々さめざめと泣いており、ただならぬ空気にはたと足を止めざるを得なかった。
 涙で濡れる目と合えば「助けてほしい」と懇願こんがんされた。
 そんな古くからの知り合いを、捨て置くことなど出来ようか。
 だが切実な空気に構うことなく、腕を組み哀れな教え子を鼻で一蹴いっしゅうするのはフレモントだった。

「フン。通りすがりに妙なアーツをかけられるとは、心底たるんでいる。今までどれだけのことをお前に教えてきたか。全く……、これっぽっちも役に立ててもらえないだなんて、これ程嘆かわしこともあるまい。長らくお前に付き合ってきた私の時間を返して欲しいものだな!」

 慰めから遠い皮肉の言葉を掛けると、ドンと強く机を叩く手が男性二人の視線を集めた。

「一体どこの誰が、すれ違い様に妙な身体にされるかもしれないと予測して生きているとおっしゃるの――? 先生にはそんなご経験がおありだったとでもいうのかしら?」

 涙の流れるまま上げられた顔は余裕のひとつもなく、あおと赤の瞳は虚《うつ》ろに見開かれている。リッチ特有の相反する色合いは深淵をのぞかせており、思わず二人は気圧された。
 思い詰めた眼差しは同じ色をした無慈悲な師へと注がれる。慰め代わりの言葉が火に油を注いだようで、エルマンガルドの手が戦慄わななき、もう一度机の上に叩きつけられた。

「だいたい、どうしてこんなグロテスクなものが私につかなければなりませんの!? このようなアーツが存在すること自体が許せませんわ――!!」

 わっ! と声を上げ、エルマンガルドは机に突っ伏した。
 エルマンガルドは深く傷付いている。
 これ程までに感情をあらわにした姿を、オットーは見たことがないわけではないが、おのが師にまで見せているのは珍しいことだろう。哀しみを見せるエルマンガルドに、両手を組み嘆息と共にフレモントは問題点を洗い出そうとした。

……ハァ。グロテスクかどうかはさておき、ただの性別の違う部位が付いただけだろう――
「付いただけ……? 先生は最初から男性体だから良いですわ。私はこの身体をずっと気に入っておりましたのよ……。一体何年この身体で生きてきたと思っておいでですの?」

 三度目机が叩かれるとエルマンガルド女史が立ち上がる。不幸と不遇ふぐうに怒れるエルマンガルドは師であるフレモントを見下ろす。

「この私の完璧だった身体に余計な男性器がついた――。これ程までに由々しきことなんかあるでしょうか?!」
「たかが男性器だ。そんなに大袈裟に騒ぐ必要があるか? そんなことを恥じらう年はとっくに過ぎているだろう」
「先生こそ、花も恥じらう乙女に対し失礼ではなくて?! あんまりな言い草ですわ……。辞書のデリカシーと書かれた項目を100万回読み込んだ方がよろしいですわ」
「必要ない。心の感受性の繊細さをいちいち気にしている暇があるなら、アーツの感受性を高めた方がずっと役に立つ。――お前も今まさにそう思っているだろうに。違うか?」
「二人とも落ち着け。……エルミーも急な出来事で驚いているのは理解するが、既に何か手を講じているのだろう? 何に困っているのかを話をしてくれないか」

 オットーは出来るだけ冷静に二人の間に割って入ると、エルマンガルドは脱力と共に席についた。
 古い知り合いしかいない場で、師弟が男性器を連呼する異様な空間に馴染める気がしない。巫術に長けた知人に掛けられた術に関心はあるが――――

……命弦で出来た身体ですもの。とりあえず余計な部分を排除して編み直してみたのですがどうしても生えてきて……。切断もしてみましたがダメでしたわ」
「切断……?」
「えぇ。切り落としても、どうしてかまた形が作られてしまいますの――。本当にしつこいし、最悪……

 ゾッと冷たいものが走り、思わず強張こわばる二人。

「もう! お二人とも、黙ってないで真剣に考えてくださいまし!! 本当に私、困っておりますのよ!」

 なかなかぬぐいきれない悪夢のようにように、脳裏にエルマンガルドが発した言葉が駆け回る。

――確かに、女性の身では災難であったな」
「えぇ、えぇ、そうなのです。私とても災難な目に遭いましてよ」
「たかが性器だ。過去に回復治癒系統の実験で指先に別の生物を生やした例があったが、――――まぁ、なんとかなるだろう」
「では一刻も早くこれをなんとかして下さいまし先生」

 弟子に掛けられたアーツの正体を探るべく、フレモントが立ち上がる。

くだんの術士の特徴を覚えているか? 無差別に行われるのであれば、早急に街へ法衛たちを向かわせた方が良いだろう」
「ありがとうございます、陛下……。こんな恥ずかしいこと、きっと他にも被害を訴えられず困っている被害者がいると思いますわ。何卒お願いします」

 同じく立ち上がったヘーアクンフツホルンの行先をはばむように、フレモントが片手を伸ばした。

「どこへ行くつもりだ、ヘーアクンフツホルン。先に面倒ごとから逃げるつもりじゃないだろうな?」
「今、面倒ごとと仰いました?」
「エルミーも言っていただろう。愚劣な輩がこの地にのさばっているのであれば、早急に排除すべきだと」
「自分の用も済んだからとっと帰ろうしているのが私にバレていないとでも? エルマンガルド、こいつに人情を期待するのはよせ。優しく振る舞って見せているが、さっさと帰ろうとしているのが顔に書いてあるだろう?」

 エルマンガルドに言葉をフレモントが掛けるが、遠慮なくかたわらに立つ師の服を掴み、恨めしい視線を帽子の下から向けている。
 皇帝となった今でも接し方がそれほど変わらぬ二人は、オットーの前でこじれを見せていく。

「確かにそうだが、」
「陛下?」
「ここには知識の殿堂たるフレモント教授がいるのだ。他の手など必要あるまい」
「ほう――、賢帝たるヘーアクンフツホルン陛下の過分な評価恐れ入る。だがそれがなんだ? こんな下らないアーツに時間を掛けるほど私も暇じゃない。帰るのも時間がかかることじゃないんだから、お前の名君振りでも存分にここで見せつけていけば良いだろう」

 不敵に笑うフレモントと、上背うわぜいのあるヘーアクンフツホルンの紫色の冷ややかな目が見下ろす。

「それともこの術に関してお手上げか? 始源の角などとあがめられている割に大したことないな」
――フッ。よもや珍しいこともあるものだ。リッチの王庭が人目をはばからず子羊相手に助力を必要とするとは……
「もう! お二人とも! 喧嘩する暇があるならさっさと知恵を出し合って下さいませんの?! 私が困っていると何度も申しているでしょう!」

 いくつになっても変わらぬ二人に対し、エルマンガルドの大声が部屋に響いた。