まきわ
2025-08-17 13:49:28
4284文字
Public クロリン
 

ひとなつの

現パロクロリン
同じ高校に通う2人が夏休みにジュライに向かう話です
汗の日用に書こうと思ったけどそんなに汗と関係なくなったから供養(?
現パロだけど世界観が我ながらわけわかめ

柔らかく吹きつける風の音に乗るように、自転車の車輪が回る音が二つ鳴っている。
夏の濃くて真っ青な空から強い日差しが降り注いでリィンの全身から汗が吹き出続けている。
額から落ちた一滴が目に入りそうで片腕を上げて拭った時、前方に小さな売店のようなものが見えた。
「リィンー!」
同じ事を考えたのか後ろを走るクロウに呼ばれて、半分だけ振り返って頷いて返した。
二人は海沿いの、砂浜と道路を仕切る堤防に沿って走っていたので通りを渡って売店の前に自転車を止めた。
「うええっ止まると更に汗が吹きでてくんな」
「だなさすがに迷惑だろうから少し拭いてから入ろう」
荷台に積んでいた小さなバッグからタオルを取り出して簡単に頭と上半身を拭うと二人は売店に入った。
こじんまりとした雑貨店という感じで、奥のレジ台で小さなおばあさんが舟をこいでいる。
中はちょうどいい具合に涼しくて、二人は飲み物と軽食を物色しながらしばし涼んでから会計をして外に出た。
自転車ごと通りの反対側に渡ると堤防に腰掛けて二人は一気に飲み物を煽った。
「ふぃ~~~~っ、生き返るぜ~!」
「はぁちゃんと水分取らないとだめだな。汗で搾り取られて行く感じがする」
「そんな速度出してねぇんだけどなぁ。あーでも海風きもち~っ」
思い切り腕をあげて伸びをしているクロウに小さく笑う。
うんそうだな」
リィンは風を感じながら改めて堤防の向こうの海を見つめた。
クロウとリィンは高校の夏休みを利用して、クロウの故郷であるジュライを訪ねることにした。
その際若気の至りというか、近くの大きな都市まで列車でいって、そこから海沿いを自転車で走ってジュライまで行こう!ということになったのだ。
さすがにたくさんの荷物は持っていけないからお泊りに必要な荷物は先に宅配便で送っておいた。
今頃クロウのお祖父さんが受け取ってくれているだろう。
「ずっと見ながら走ってるけどどこまでも続いててほんとすごいな、海。キラキラしてるし、すごく綺麗だ」
「だろ~?」
何故かクロウが得意げに胸を張る。
でもやはり故郷の象徴のようなものが褒められれば嬉しいものだと思うし、リィンもクロウが誇る西の海をこの目で見られたのは嬉しかった。
「うへーそれにしても汗がやべーな」
クロウはTシャツの裾を持ち上げて顔を拭った。
必然的によく鍛えられた腹が露わになってリィンは少し慌てた。
同性なのに、何故かクロウの体は見ると少し顔が熱くなる。
綺麗だなと思うからなのか、なんだか胸がどぎまぎするのだ。
「くっ、クロウ、はしたないぞ。だ、誰か見るかもしれないし」
「別に男の腹くらい誰が見たっていいだろー。それにいつ誰に見られてもいいようにきっちり鍛えてるしな!」
「そんな理由で鍛えてたのか?ならうちの道場に来ればいい。もっときっちり精神まで鍛え上がるぞ」
「じょーだん。お前朝5時とかに起きて鍛錬してんじゃん。ムリムリ」
「まったく
お世辞抜きできちんと鍛錬すればクロウならあっさり自分を超えていくだろうと思っていた。
それは悔しいけれど、それに追いついてお互い高め合えればきっとどこまでだって行けるのに。
けれどこんな風だからこそクロウだという気もしている。
そんな物思いに浸りながら海を見つめ、飲み物をまた一気に煽った。
顔を上げたからか額から頬へ、そして首元へ汗がぱたぱたっと流れていく。
悪いものが流れ出ていく気がして嫌な感じではない。
ほとんど飲み切ってから、リィンはふぅっと大きく息をついた。
……うまそ」
クロウが小さく呟いた気配がして視線を向けるとなんだか剣呑な目で舌なめずりしているのと目が合った。
なんだ、飲みたかったのか?もうないぞ」
「んや、だいじょーぶ」
クロウは頭を振って額のバンダナを引き下ろして顔を拭った。
なんだか顔を隠された気がするのは気のせいだろうか。
「さーてとっ。止まってるといつまでも着かねぇしそろそろ行こうぜ」
三口くらいで平らげたパンのゴミを荷物の中に押し込んでクロウは立ち上がった。
「そうだな、走ってた方が風が当たって涼しい気もするし」
止まっているとそれこそじりじり焼かれて汗だけが流れていく。
クロウはシャツの裾をばさばさっと振って苦笑混じりに笑った。
「こりゃ着いたらまずはソッコー風呂だな」
「だなお祖父さんには申し訳ないけど」
二人は自転車に跨ると再び海沿いを走り出した。
空の蒼と海の碧に挟まれて、風と蝉の鳴く声がどこか静かに聞こえてくる。
南風も火照った体には涼しくて気持ちよく、気心の知れた親友とどこまでも走っていくのは心地よかった。
水平線の向こうに小さく船影が見えて、リィンは高揚に任せて大きく手を振った。

二人がクロウの実家に到着したのは夕暮れがもうだいぶ夜に近付いた頃だった。
街はまだオレンジ色が強いけれど、空は三分の一ほどが紫色に近くなっている。
「はーっ、やべぇ、ようやく着いた
クロウは自転車を降りるとぐったりと屈みこんだ。
リィンも地面に立つと大きく伸びをした。
漕いでる形に体が固まってしまったようでぎしぎし言っている。
「さすがに、無謀だったと思ってるか?」
「いーや」
クロウは顔を上げてにやりと笑った。
「最初っから無謀だと思ってたぜ」
それでも付き合ってくれた相棒に感謝の眼差しを向けると、クロウも立ち上がって大きく体を伸ばした。
ぱたぱたっと汗がしたたり落ちる。
途中途中で水分補給はしたが、もう精も根も搾り取られた気がする。
よしっ。シャワー浴びちまおうぜ。じーちゃーんただいまーっ」
言うなり玄関を開けて飛び込んでいく。
リィンも深呼吸をすると荷物を持って玄関に踏み込んだ。
「おお、お疲れさん」
「ご無沙汰してます遅くなってすみません」
折り目正しく頭を下げるとクロウの祖父はクロウとそっくりの顔で笑った。
「なに、なんなら思ってたより早かったわい。久しぶりじゃの、去年文化祭に遊びに行った時以来か」
「ええ、今回はお世話になります」
「挨拶もいいけどよ、玄関水浸しにする前に風呂入っていいか?」
今にも汗で貼りついたシャツを脱ぎそうなクロウに眉を寄せて老人は家の奥を示した。
「その有様じゃ晩飯にもできんしの。幸いうちの風呂はそこそこ広い。二人揃って浴びてくるといいじゃろ」
「お邪魔します」
「ほれ、こっち」
祖父に頭を下げながらクロウに引っ張られて浴室に向かう。
廊下を進んだ家の奥にある浴室は、確かに一般的な規模よりやや広めだった。
クロウは躊躇いなく汗に濡れたシャツを脱ぎ去って洗濯機に放り込むと、リィンのシャツに手を掛けた。
「じ、自分で脱げるって」
「んじゃズボン脱がしてやろうか」
「いいから!自分のに集中してくれ」
そそくさと脱がされない内にシャツを脱ぐ。
別に異性に囲まれながらとかでなければ裸になるのが恥ずかしい性質ではないのだが、なんだかクロウに脱がされるというのは妙な感覚を伴う。
それに汗に濡れた服を触らせるのもなんだか恥ずかしかった。
やや心臓が高鳴るのを不思議に思いながらちらりとクロウを見ると彼はもうほぼ裸になっていた。
(う、うう)
端正で程よく筋肉のついたスタイルの良い体つきに、いわゆるイケメンだと言っても恐らく10人中10人否定しないだろう顔が乗っていて、そのせいかやっぱりなんだかドキドキしてしまう。
それを振り払うように自分の服も全て脱ぎ去って洗濯機に入れさせてもらう。
そして揃って風呂場に飛び込んだ。
クロウが蛇口をひねるとぬるま湯のシャワーが二人の汗を流していく。
体が火照りきっているからぬるま湯が水のように感じる。
「ふう気持ちいいな疲れも流れ出ていく感じがする」
「くくっ、多分さっぱりして座り込んだら二度と立てなくなるぜ」
シャワーはさすがに一つなので、二人は背中をくっつけて降りそそぐお湯に収まるよう押し合うようにして立っていた。
だからクロウが喋ると背中から振動が伝わってくる。
自分の声も背中からクロウの中に沁み込んでいっているのかと思うとまた胸が高く鳴った。
ざっと汗を流し終えるとクロウは半ば無理やりリィンを椅子に座らせてリィンの髪を洗い始めた。
遠慮したが聞かないので、諦めてされるがままになる。
クロウの大きな手は程よい力加減で髪と頭皮を洗っていって、リィンはこのまま眠ってしまいたいような気分になった。
ぼんやりした心地でクロウの指を堪能していると、唐突にざぁっとシャワーが降ってきた。
「わぷっ」
非難の視線を向けようと振り返ろうとしたら、それを遮るようにクロウが肩の上に両腕を乗せてのしかかってきた。
「ちょっ
「な、リィン」
ひそめた声が耳のすぐ傍でした。
すぐ後ろにクロウの顔があるのだと思ってリィンは動けなくなった。
「こっちにいる間にさ、ちょっとだけオトナの階段上ってみねーか?」
悪戯の相談を持ち掛けるような声音で言われてリィンはぴくりと体を震わせた。
クロウは出会って以来色んな遊びをリィンに教えてくれた。
お調子者だが大人びて頼り甲斐のある部分も確かにあって、リィンよりも「大人」だと感じる事も多々あった。
だが「大人の階段」とはどういうことだろう。
それを問おうと口を開いたが、
「いいよ」
口から出たのは承諾の言葉だった。
クロウは満足そうに笑うとリィンの髪を鼻歌混じりに綺麗に流してくれた。

クロウの祖父は豪勢な土地の料理で歓待してくれ、最後の力を振り絞って片づけを手伝うと後はもう何をする気力もなくなって布団に倒れ込んだ。
クロウの部屋に並べて敷いた布団に転がると、疲れているはずなのになんだかかえって目が冴えてリィンはただ天井を見つめてぼんやりしていた。
なぁリィン」
声を掛けられて顔を横に向けるとクロウもこちらを見ていた。
「こっちで寝る?」
にや、と笑って掛け布団を持ち上げてみせる。
それは変だ、と思ったのにリィンはのそのそと自分の布団を這い出るとクロウの横に収まった。
クロウは悪戯が成功したような顔をしてリィンと向き合った。
……今日は疲れちまったから、明日、な」
大人の階段のことを言っているのだと気付いて心臓が跳ねる。
うん」
明日、自分がどう変わってしまうのか。
どきどきして眠れないかもしれないと思ったけれど、クロウの体温を感じている内にいつの間にか眠りに落ちていた