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ふみかぜ@壁打ち
2025-08-17 12:30:58
2605文字
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【Δドロ前提】学生時代のΔド+Δズサが夏休みに駄弁るだけ
タイトルの部分だけ書いたSS/オチなし、唐突に終わります/1X年後にΔドラロナになる前提/ΔドとΔズサの同級生設定など、無から生じた幻覚しかないです
それは、新横浜で吸血鬼集団の大侵攻が起こるより、干支一周と半分余り昔のこと。
「あー、あっつ
……
まったく何で私が一人で
……
」
何処もかしこも蝉の大合唱が鳴り響く伊奈架町のあぜ道を、一人の男子高校生がぶつくさ言いながら歩いていた。同年代の少年たちと比べて痩せた身体を、黒い日傘で覆い隠して進む姿は、まるで日光を恐れる吸血鬼のようである。(実際、彼の血の半分は吸血鬼から受け継いだものであった)
「いや暑すぎだろ、昨日まで二四℃ぐらいだったのに五℃ぐらい上がってるんじゃないか? 異常だ異常」
十数年後の未来ではもっと過酷な猛暑に苛まれることなどつゆ知らず、少年が二九℃の気温へ何度目かの悪態を吐いた時だった。
「
――
おっと! そこにいるのはもしや、夏休み前のテストで学年トップに輝いた、ワルドさんちのドラルク君じゃないか?」
「
……
げっ」
背後から聞こえた声に一層顔をしかめた少年
――
ドラルクが振り返ると、そこには彼が微妙に苦手とする同級生の姿があった。
「カズサ君か
……
はぁ、今日はとことんツイてないな」
「おいおい、友人相手につれないなぁ」
ドラルクの露骨な反応など大して気にしていない様子で、カズサが大股に歩いて距離を詰めてくる。買い物帰りだったのか、左手にぶら下げたビニル袋から野菜やらペットボトルやらが顔を覗かせていた。
「折角、暑さで参ってそうなクラスメートを助けてやろうと、駄菓子屋のオババさんがオマケしてくれたジュースを分けてやろうと思ってたのに」
「いらん。どうせ汁粉ソーダとかいうオチだろう?」
「惜しいな! 正解はセンブリ汁粉ブレンドサイダーだ」
「なおいらんわ! どうして作ってしまったんだそんなもん!」
思いっきり叫んだ後、肩で息をしながらドラルクは同級生を胡乱げに見る。
「やれやれ、まさか休みの真っ只中にカズサ君と顔を合わせる羽目になるとは
……
てっきり、夏休み中は新横浜に行って退治人の修行でもしているかと」
「ははっ、親からは好きにしていいと言われたんだがな」
そう言って肩を竦めたカズサが、ほんの少しだけ表情に真面目さを滲ませる。
「親父が仕事に出ている中、俺まで家をずっと空けてちゃ悪いだろ。妹の夜泣きも始まったしな」
「あー
……
」
思いのほか真っ当な発言に意表を突かれ、ドラルクはただ相槌を打つことしかできなかった。遡ること昨年度の三月、彼から妹が産まれたのだとさらっと明かされたことを思い出す。
「ヒナイチ君、だったか。今いくつぐらいなのかね?」
「つい先週で五ヶ月ってとこだな。いやぁ、あいつは中々見所があるぞ? この前なんか俺がビスケットを見せびらかしながら食べていたら、悔しかったのかガラガラをぶん投げて顔面ど真ん中に的中させてきた」
「赤子相手に何やっとるんだ貴様は。妹が可愛くないのか?」
「もちろん可愛くて仕方がないさ。退治人の素質も感じられて、期待も十分だ」
「はぁ、そうかね
……
」
兄となっても芯がブレていない様子の悪友に、ドラルクは呆れとも感心ともつかないため息を吐いた。生まれて一年も経たない赤子すら勘定に入れて、将来何をしでかすつもりなのやら。
「ところで、今日は珍しく一人なんだな。あの利口なアルマジロ君は別行動か?」
「あー、本当は一緒におじい
……
祖父の別荘を掃除する予定だったのだが」
そこで嫌なものが脳裏に映像として浮かび、盛大に舌打ちをする。
「今朝になって急にクソヒゲ
……
陰険根暗おじ野郎がジョンを連れていくのを禁ずるとか言いやがりましてねぇ⁈ 何の権利あって命令しとんじゃ無駄キューティクルヒゲ、ジョンは私のパートナーだぞ⁈」
「なるほど、それでさっきから不機嫌な訳か」
うんうんと頷いたカズサが、はて、と呟き首を傾げる。
「前々から思っていたんだが、ジョン君って何者なんだ? チョコもニンニクラーメンもモリモリ食べてるが」
「は? ジョンはアルマジロのジョン以外の何者でもないが」
「
……
ふぅん?」
何も疑う余地のない分かりきった答えを返せば、どうしてか妙に意味深な笑みを浮かべる同級生。それを追求する隙を隠すように、カズサは空いた手をひらひらと振った。
「ま、今は深く探らないでおこう。あんまり道草食ってたら、買った野菜が傷んじまう」
「とっとと帰れバカタレ。夏場はいかに早く冷蔵庫に入れるかが勝負だぞ」
「はは、助言痛み入る。それじゃまたな、ドラルク君」
「はいはい、新学期にまた
……
」
最後まで己のペースを崩さなかった悪友は、爽やかに笑って颯爽と去って行った。この日差しの中、よくもまぁ悠々と歩いていられること。教室でいかに昼行灯ムーブをしてようと、流石に吸血鬼退治人志望のフィジカルは伊達ではないってことか。
「はぁ
……
私も早く行こう」
どっと疲れた気分になったドラルクは、水筒の麦茶をごくごくと飲んでから、目的地へ向かって歩くペースを少しばかり速める。
……
ジョンは大丈夫だろうか。今回は涙目でオロオロしていた父の顔を立てるために引き下がり、お友達の家へ遊びに行かせたが、可愛がられるあまりにおやつを食べ過ぎたりしないだろうか。帰ってきた時のおムニ具合によっては、ホットケーキは暫くおから製にした方がよさそうだ。
そんなことを考えている間に周囲の景色が雑木林に変わり、蝉のコーラスがより喧しくなる。この林道の先に目的地
――
祖父が遺したどう見ても西洋の城としか思えない別荘が建っているはずだ。
一族の大黒柱であった祖父が他界して、一年。
ほんの僅かに、しかし確実にヒビが入ってしまった一族の結束を思うと、今やドラルクは冗談でも動画配信で食っていくと大っぴらに言えなくなってしまった。また、遠縁の遠縁
――
ほぼ他人のような親類の一部の目が厳しくなったことにも気づいてしまっている。だから、賢く可愛い至高の丸たるジョンの秘めたるパワーをヒゲが警戒するのも分からなくはない
……
が、やっぱり許せん。帰ったら奴の椅子という椅子にブーブークッション仕込んでやろう。
一つ決意したところでドラルクは城の入り口に立った。祖父から受け継いだ鍵で錠を外し、歯を食い縛って重厚な扉を押し開ける。
平坦で正道な、窮屈で退屈な未来を引っくり返す何かが見つからないだろうか。僅かにそんな、大それた期待を込めて。
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