shizuku0797
2025-08-16 22:25:21
2424文字
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夏の暑さにも負けズ


ジワジワと太陽が地面に反射してコンクリートの舗道を熱くする。ジャングルであれば土であればきっと熱を吸収してくれただろうし、上を覆う木々が日陰になってくれたかもしれない。
しかし、ここは綺麗に整備された街で日陰のなるようなものはあいにくお店に入らない限り見当たらない。ならば太陽が張り切って街を照らし続ける。

「暑ィ

舌をだらんと伸ばしながらよろよろ歩くチョッパーは一歩踏み出すごとに汗がポタポタと流れて、地面にじわっと落ちて行く。

「やっぱり暑いのおれ苦手だあ

太陽の日照りだけなら幾度も航海中に経験しているが、今は太陽よりもコンクリートの照り返す暑さのほうが体に堪えるようで。
それでも何度も水分と塩飴を舐めて熱中症にならないようにと自己管理しているが、暑いものは暑い。

「そんな暑い暑い言ってりゃ余計暑くなるんじゃねェか?」

その隣を歩くのはチョッパーの代わりにいくつかの買い物袋を持つゾロ。
彼も多少汗が浮かんでいるもののチョッパーの比ではなく、顔色ひとつ変えずにチョッパーのペースに合わせて歩みを進めている。

ゾロにそう言われてチョッパーはこれ以上「暑い」と言わないように、ぎゅっと口を結んで手で押さえた。

が、それも3秒ともたなくて。

「やっぱり暑ィ

口を押さえてもジメジメとした熱気も、ジリジリと照りつく日差しも和らぐはずもないので、チョッパーはまたすぐに肩をだらんとさせてぼそっと呟いた。
暑いものはどうしたって暑い。

「ゾロは暑くないのか?」

「これくらいでへばってたら修行不足だ」

「そうか、すごいなゾロは

「それにお前みたいに着ぐるみ着てねェしな」

「着ぐるみじゃねェよ!」

なんてゾロが冗談めいて返せばすかさずチョッパーの鋭いツッコミが勢いよく飛んできたのでゾロはくくっと笑いながら「なんだまだ元気じゃねェか」と楽しそうに返す。
それとこれとは話が別だと言わんばかりにチョッパーは口を尖らせた。

そんなチョッパーを見ながらふとゾロはこの先の街並みで何かを見つけて、顎に手を当てて少し考える素振りを見せてから、

「チョッパーお前、そこで休んでろ」

と、突拍子もなくゾロは少し向こうにある木陰を指差した。

「えっ、なんだよ急に」

「いいから、そこにいろ」

「ゾロが迷子にならないように見張るのが今日のおれの役目なんだぞ!」

「この距離で迷子になるか。ちょっと待っとけ」

一向に譲らない態度でゾロはそう言うと先ほどまでの歩くスペースよりも速く、ズンズンとどこかへと行ってしまった。
チョッパーも追いかけようとしたのだが、何やらゾロはそのままお店へと入って行くのが見えたので、ならば帰って来れるかと、そのままふらふらと木陰に避難する。

「はー、ここはそんなに暑くねえな」

大きな木の下には長いベンチがあって、幸いにも誰も座っていなかったのでチョッパーはちょこんと腰掛けてひと息つく。

「それにしてもゾロのやつ店に何の用事があったんだ?酒か?」

でもなんで急に酒?とゾロの急な行動に疑問符を浮かべていると、なぜか後ろから「チョッパー」と名前を呼ばれたのでクルリと振り返る。

と、同時に頬にひんやりと冷たいものが当たって「冷て」と思わず声が漏れた。

「これ食って体冷やせ」

そう言ってゾロがくれたのは、チューブ型の長細い容器に入ったオレンジジュースを凍らせたアイス。

「どうしたんだこれ?」

「そこの店に売ってた」

ゾロが先ほど入っていた店を指差すのでチョッパーがあらためてひょこりとそちらを見れば「氷」と書かれた暖簾がたしかに吊るしてあった。

「冷たいもん食えば少しはマシだろ」

「ゾロォ〜!ありがとう!!」

まさかゾロからそんな救いの手が差し伸べられるとは思わなくてチョッパーは堪らず目を潤ませながらアイスを受け取る。
ゾロはその様子を見届けると、彼の隣にどかりと座るとふうと一息つく。

「あれ?ゾロは食べないのか?」

「おれは別にいいよ」

お前のほうが重症だろ、と言うゾロだが、それでも立ち止まったせいか、チョッパーに負けず劣らずといったくらい先ほどよりも汗をかいていて無意識に額の汗を拭っていた。
その姿をチョッパーは見逃さなかった。

「立ち止まると汗が出るのは皮膚表面への血液供給が増加して、体温を下げようとしている証拠なんだ」

「ん?ああ?」

急に何を言い出すんだとゾロは怪訝な顔をしながら相槌を打つ。

「やっぱりゾロの体もちゃんと暑いって思ってるんだぞ」

だからと、チョッパーはチューブアイスのちょうど真ん中辺りが少しくびれていて、そこの部分を勢いよくパキンと折って半分をゾロに差し出した。

「これ食べて体冷やそう!」

なんて聞き覚えのある言葉を言うものだから、ゾロは小さく笑う。医学のことはまったくわからないが、チョッパーの目は真剣そのものだったので、それ以上拒否する気にはなれなかった。

「わかったよ、ありがとう」

ゾロもチョッパーから氷アイスを受け取って2人で木陰のベンチに座りながらジューッとアイスを吸う。キンと冷えた氷アイスは体の芯にまで届くほど冷たくて、暑さでモヤモヤしていたチョッパーの頭をすっきりとクリアにさせていく。

「なあ、ゾロ」

黙ってアイスを吸っていたゾロに、チョッパーは声をかけると「どうした」と、ちゅぽんと小気味いい音を立ててチューブから口を離したゾロの声が返ってきた。

「おれ、暑いのは苦手だけどこういう感じの夏は好きだぞ!」

さっきまで「暑い」と項垂れていた船医の姿はどこへやら。

そんなことを言うと機嫌が治ったチョッパーがまた怒って体温が上がってしまいそうだったので「そうだな」とだけゾロは返す。

その後の2人の帰り道の足取りはとても軽かったそうだ。