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冬牙
2025-08-16 20:47:04
2335文字
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【スバイカ】入水
⚠不穏注意
⚠若干死ネタの香り
⚠退廃的な思想あり
※自分ワールド全開の自己満足なので説明不足の国になってます
それでもよろしければ読み進めてください
浅い眠りの中で見る夢は、いつもどこか鮮明で生々しい。
そんな虚ろな夢の中でさえ、今日もスバルのことを考えていた。
ただ空を見つめている時、さわやかな風や空気を感じている時、
思い浮かぶのはただ一人だけ。
ああ、なぜ貴方はこうも私を狂わせるのだろう。
貴方が私に「好きです」と言ったあの日から。
どうやら意識していたのは私も同じだったようです。
想いが重なるというのは、こんなにも嬉しいものなのですね。
それを教えてくれた貴方を、どうして憎むことができましょう。
貴方が他者へ向ける笑顔さえも、私は愛おしいのですよ。
虚ろな浅い眠りの夢の中、
目を開けると目の前には、一寸先が闇に包まれた廊下が真っ直ぐに続いている。
私はどこに続くかわからぬそれを、ただひたすらに、ゆっくりと歩み進めていた。
だからこそ、この胸は苦しくてたまらないのです。
貴方を想うばかりに情けなくなってしまった私を、貴方は愛してくれるでしょうか。
そんなことを考えては消してを繰り返し、今日この日まで生きてきたわけですが、
ついに師の未練すら貴方に取り払われてしまいました。
今の私に、あと何が残っているというのでしょう。
あるとするならば、それは貴方への想いだけ。
私は私が醜く見えてなりません。
貴方の傍にいることすら苦しく感じるほどなのです。
この苦しみから、早く解放されたい__
そうして進んだ先の見えない長く薄暗い廊下を進んだ先、
私の目の前に現れたのは、重厚で大きな扉。
まるで私の心を映したようだ。
扉の先がどこへ続いていようと、所詮は一時の夢の中、
こんな私をどこへ導いてくれるというのです。
懐かしい師の元ですか。これから起こるなにもかもを忘れて、
ただ幸福に満たされていたあの頃へ戻れるとでもいうのですか。
師の背中を追い、無邪気で哀れだった、あの頃の私に
……
。
思えば、あの頃から私はずっと愚かでしたね。
貴方のおかげで少しは成長できたと思っていたのですが、
どうやらそれは間違いだったようです。
今でも私はこんなにも愚かで、醜い。
ゆっくりと扉を開ける。
ほら、ごらんなさい。やはりそうだったでしょう。
私の心が一切の穢れなく澄んでいるのであれば、
扉を開けた先に広がる景色が、こうはならなかったでしょうから。
見渡す限りに広がる静寂と、朝靄に似た深い霧。
底の見えない薄く淀んだ水たまり。
これが今の私の心そのものなのでしょう。
ならばいっそのこと、この中へ身を沈めてしまうのも悪くないかもしれません。
……
などと考える私は、やはり哀れでしょうか。
なにも言わず貴方の前から消えてなくなりたいなど、
貴方が悲しむとわかっているはずなのに。
貴方が私のためだけに嘆き悲しむ様を望まずにはいられないのです。
貴方が愛しい、貴方に会いたい。たとえ夢の中だったとしても。
一時も離れたくない
……
。
おや、こんな状況下でそう願ってやまない私の目の前に愛しい人の姿を現すなど、
夢だとしても相当タチが悪いですね。
それに
……
なぜ私に手を差し伸べるのですか。
それじゃあまるで、私の想いを受け止めてくれているみたいじゃあないですか。
私のすべてを受け入れ、共に歩もうとしているみたいじゃあないですか。
先の未来のことなど、何もわからないというのに。
貴方にそうされてしまったら、私はどうすればいいのかわかりません。
貴方を想うあまり、気がおかしくなってしまいそうです。
それなのに、貴方はそうやってまた、私に微笑みかけるのですね。
ならば、せめて夢の中だけでも共に。
貴方の知らないところで、貴方と共に生を終わらせるのも悪くありません。
共に参りましょう。
千代に八千代に、優しい貴方の手を取って。
薄く淀んだ水の中を進んでいく。少しずつ体が水に浸かっていく。
進むたびに指先から体温が徐々に無くなっていくのを感じる。
触れている貴方の手がどんどん冷たくなっていく。
そんな感覚さえも愛おしい私は、もうとっくにおかしくなっているのでしょう。
だというのに、貴方はまた何も言わず優しく私に微笑みかけてくる。
どうして。私は今から貴方を殺そうとしているのですよ。
……
それとも、貴方も私と同じ結末を望んでいるとでもいうのですか。
言葉のない訴えに、貴方が頷いたように見えた。
ああ。やはりこれは、私の願望夢なのでしょう。
今この瞬間が、泣きそうなくらい幸せでたまらないのですから。
頭の先まで水に浸かり息ができないことも、
底の見えない水の中にただ沈んでいくのも、
なにも怖くない。貴方と手を繋いでいるから。
ああ、意識が途切れる_____。
__________
「ようやくお目覚めですか」
目が覚めると真っ先に視界に映ったのは、私の顔を覗き込む愛おしい人の姿だった。
寝顔を見られていたのか。少し気恥しい。
「
……
夢を、見ていました」
その言葉に返事はない。ただふわりと微笑み、愛しい人は私のすぐ隣に腰を下ろす。
スバルはそのまま私を優しく抱きよせ、静かに髪を撫でた。
夢と同じ優しい手、たしかな温もり。
心地がよくて、思わず目を細める。
私の髪に口づけをするその仕草が愛おしい。
なにもかも。
私に触れる手も、語りかける声も、太陽のような優しくまっすぐな瞳も。
なにもかもが愛おしくて、泣きそうになる。
隠すようにそっと腕を背中に回して、肩に顔を埋めた。
スバルが私の耳元で甘く囁く。
「水の中、気持ちよかったですね」
「え
……
?」
愛しい人はまた静かに私に微笑みかける。
身を寄せた貴方の体が、まだ少し湿気っているような気がした。
-終わり
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