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三毛田
2025-08-16 16:27:05
1086文字
Public
1000字4
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86 086. キスと嘘と
86日目
キスしたのを嘘で隠す
「
……
うっそ」
あの丹恒先生が、俺の隣でこんな無防備に眠っているなんて。
服の上からでもわかる、盛り上がってある胸は、ゆっくりと上下しており。
こちらを信頼して、完全にリラックスしているのが見て取れる。
眠りが浅いとか、悪夢をよく見るとか。
人の気配がすると起きてしまうとか。そんな事を言って俺を遠ざけていた人が、隣で眠っている。
嬉しいと思うと同時に、子ども向けの本の物語を思い出してしまう。
「キスしたら起きるかな?」
起こさぬようそっと顔を近づけていく。
それはただの好奇心。
嘘。
彼のことが好きだから、触れたくて仕方ないんだ。
ああ。とうとう触れてしまった。
「ん
……
きゅ、う?」
「ごめん。起こした?」
「今、意識が浮上したところだ」
起き上がろうとしたので、そっと距離を取る。
「お前は何をしていた」
「丹恒の寝顔を見てました」
「見たって、つまらないだろう」
「ううん。そんなことない」
手を伸ばすと、一瞬身構えて。でも、俺が害をなさないとわかると力が抜けていき。
指先で目元をなぞった後、唇をそっと撫でると。
「あ、む」
「ぇ」
俺の指を食べた。
まだ寝ぼけているのか? って思ったけど、丹恒先生だぜ? 寝起きはいいんだよ。
いつも俺より早く起きて、アーカイブの整理をしたり、パムや姫子、ヨウおじちゃんの手伝いをしている。
そんな人が、寝ぼけて人の指を食べるか?
「ち、違ったか?」
一人混乱していると、慌てたように俺の手をウェットティッシュで拭いていって。
まあ、うん。
そうだよな。俺が洗いに行けばいいんだけど、半分放心状態だったからすぐに動けなかったし。
「丹恒でも、指を舐めるんだ」
「そ、それはっ」
「それは?」
言葉を口にしたはいいものの、どう告げたらいいのかわからないというように焦っている様子。
「うん。悪気がなかったのなら、気にしてないから」
どうせなら、指を舐めればよかったかも。でも、それを実行したらさすがの丹恒も引くかな?
「それ、ならいい」
あからさまにほっとされると、ちょっと意地悪なことを言いたくなってしまう。
けど、それを口にしてしまえば彼は逃げてしまうかもしれない。
「起きたなら、ご飯食べに行こうか」
「あ、ああ」
戸惑いを浮かべたまま、俺と一緒にラウンジへ。
顔を見ていたのは本当でもあり、嘘でもある。
キスをしていた。それを告げないのは、嘘になるだろうか。
「穹」
「ん?」
「本当に、何もしていないのか」
「してないよ」
「
……
そうか」
嘘ついた。
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