望月 鏡翠
2025-08-14 01:45:34
1007文字
Public 日課
 

#1812 「役当て」「大兵」「アブラコウモリ」

#毎日最低800文字のSSを書く


 戦がなくなって久しい世になっても、将という肩書きは残っていた。国防の観点から、軍ももちろん存在していた。将という役割は、もっぱら国王にとって最も信用できるものの証として機能していた。
 武力を持たせるに足るくらいに信用があり、かつ忠誠心を認められた憧れの存在なのである。
 だからこそ、誰に将の肩書きを与えるのかは国内の力関係を変えてしまいうる、非常にデリケートな問題だった。
 役当てに悩んだ国王は、臣下に無理難題を出した。
 まるで求婚してくる貴公子たちを退けるかぐや姫が如くだ。私こそが将にふさわしいと名乗りをあげるのであれば、この試練を乗り越えてこれを証明してみなさいというのである。
 各人の努力に期待する形なので、誰が選ばれたとしてそこに恣意や政治的な意図を想像されることはない。そう考えたのである。誰が選ばれたとしてかまわないくらいに優秀な人間が揃っているということであり、それくらいに将軍という立場が形骸化しているということでもあった。
 しばらく出動する機会がなかった軍隊は、ようやく出かける機会を経て日々の訓練に張り合いが出たらしかった。
 候補者は、それぞれ自分の部隊を編成し、繰り出していった。
 しかしそんなことをしている場合ではなくなってしまったのだ。国王が出した問題は、かつて国庫から失われたという首飾りを探してくるというものであった。候補者は四人いた。
 しかしこの条件には、一つ問題があった。見つけたものが将になることができるというのなら、軍部の人間でなくても将になることができるようになってしまうのである。
 誰かもわからぬものが武力を握ることを防ぐためにも、心あるものが誰よりも早く首飾りを見つけなければならなくなった。元々の候補者たちは、競走関係から協力関係になった。
 手分けして手掛かりを探し、そして分担して首飾りがあると思しき場所を順に攻略していった。
 首飾りは盗まれた可能性もあったし、壊された可能性もあった。
 その可能性の一つが、山奥深くにある洞窟だった。
 暗闇の中でキイキイと耳障りな音を立てて飛び回るものは何かと思えば、不気味で悍ましいアブラコウモリどもだ。その奥に住む頭のおかしい老人が盗んでいったというのである。
 当時の警備がどうなっていたのかなど諸々を考えると可能性は低いが、あるかもしれないと言われねば確かめないわけにはいかないのだ。