望月 鏡翠
2025-08-13 23:23:25
881文字
Public 日課
 

#1811 「針銀鉱」「南窓」「流星」

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 良質な流れ星を手に入れた。
 一見するとただの針銀鉱にしか見えなかったが、包まれた羊の毛の間から漏れ出てくるか細い囁き声を聞けば、確かに流れ星であることがわかった。
 この星の鉱物とは違った言葉で話している。
 それは羊飼いに拾われて、旅人の手を経てもたらされたもので、地上に落ちたあとはまだ柔らかい牧草と皮の手袋と、壊れないように慎重に包み込んだ羊の毛しか知らない純朴な流星だった。
 世界を知らぬままの星は、慎重にほぐしてから再結晶させてやれば、故郷のことを教えてくれる。
 まずは一度ドロドロに溶かしてしまう。
 形が崩れていく瞬間、大気圏で燃え尽きようとしているときのことを思い出したのだろう。星は不安そうな声を出した。
 怖がりすぎると、ショックで色々なことを忘れてしまうし変質してしまうから、優しく話しかけて宥めてやった。
 宇宙の言葉はわからない。だが、歌ってやると彼らは宥められる傾向にあるようだ。
 溶かしたあとは、一つの大きな結晶になるように時間をかけてゆっくりと結晶させていく。このときに急に固めると、幾つものなり損ないの結晶を孕んだ大きな一塊になってしまう。
 そうなるともう自我が分散して、流星は故郷のことを忘れてしまう。再び溶かしても未熟な自我の集合体になるだけだ。
 だから結晶させる瞬間が一番神経を使う。
 日当たりのいい南窓で、太陽と月の星の光をたっぷりと浴びせかけながら、育てていくのだ。そうやって宇宙にいたときのことを思い出させると、やがて育ってきた結晶の表面に、見知らぬ景色が浮かび上がる。
 それが流れ星の故郷の光景だ。
 何十年、あるいは何百年。宇宙を彷徨いながら徐々に体は削れたり、あるいは他の星がぶつかって一緒になったりする。
 それでも結晶の羅列は、ちゃんと生まれた場所を覚えているのだ。
 窓辺に置く間に投げかけられた光は、ひょっとするとこの流れ星の故郷なのかもしれない。
 一度も流れ星が飛ばない夜なんてないという。
 そうして駆けていく星の光は、一つ一つが遠き星のことと宇宙の孤独を知っているのだ。