三毛田
2025-08-13 10:52:35
1060文字
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83 083. 空き地を駆け回った日

83日目
子供の頃の思い出

 小学校の帰り道。その日は学童保育が休みだったので、家に帰る日だった。
 でも、誰もいない家に帰るのが嫌で、寂しくて。
 通学路にある空き地――ブランコとベンチがあるだけで、公園とまではいかないけれど意外と立ち寄る子供は多い――で、俺、星、なの、丹恒の四人で時間を潰していた。
『蛇! 蛇がいた!』
 初めて見た鎌首もたげる蛇に興奮し、それを枝に巻きつけ、なのと星を追いかけ回した。
『穹。蛇が可哀想だからやめろ。それに、噛まれる可能性もある。噛まれて痛い思いをするのは嫌だろう?』
 倒木のベンチに座って教科書を読んでいた丹恒は、そう言って俺の手から枝を取り上げ。
 地面に下ろすと、蛇は慌てたように逃げていった。残念。
『それに、追いかけっこなら、道具を使うな。まず、三月と星に謝ること』
『えー』
『穹。さっきのは、やっちゃ駄目なことだ。苦手なものを押し付けられるのは、誰だって嫌だろう』
……丹恒も、嫌いなものを押し付けられるのは、嫌?』
『ああ。その人を嫌いになる』
『嫌いにならないでぇっ』
 丹恒に嫌われてしまうかもしれない。その恐怖に、泣きじゃくりながら、彼に抱きついた。
 そして、泣きながらなのと星に謝った。二人ともなんともいえない表情を浮かべていて。
 二人に許してもらうことよりも、丹恒に嫌われることのほうが、俺にとっては一大事。
『あんた、本当丹恒のことになると昔からおかしくなってたよね』
 それから散々星に揶揄われたけれど、仕方ないだろう。
 彼は男だけれど、俺の初恋なんだから。
 博識なところはもちろん、手のつけられないクソガキな俺に、やっていいこと悪いことを丁寧に教えてくれて。
 丹恒がいなかったら、もしかしたらグレていたかもしれない。
 それくらい、彼が俺の人生の転換期なのだ。
「丹恒、好き」
「そうか」
 柔らかな黒髪に髪を埋め、深呼吸する。
 同じシャンプーを使っているはずなのに、甘い香り。
「丹恒。あんた、よく面倒見れるよね」
「何のことだ」
「あんたの匂い嗅いでるクソガキ。あまりのクソガキっぷりに、あのカフカも手を焼いてたのに」
「何年前の話だよ。今は品行方正、丹恒先生には従順のイケメン美少女だぞ」
 胸に手を伸ばそうとしたら、さすがに怒られた。チクショウ。
「愛の力だよ、愛。丹恒に嫌われたら生きていけないもの」
「重い」
 ドン引きしている二人の声が重なる。失礼だな。
「みんな、おやつ貰ってきたから食べよう! どうかした?」
 なのの不思議そうな声。