shiroyakei
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筋トレ

20250809 第5回オロイフワンライ

 のびのびリゾートから帰宅して数日。
 
 イファはいつもの忙しない日常に戻ろうとしていた。
 朝は早めに起きて、自身の診療所で面倒をみている竜たちの体調チェック、そしてその竜たちとカクークの朝食の準備。ついでに自身の朝食を作って、それを胃に流し込みながらその日のスケジュールチェックと、前日に書いたカルテの見直し。
 大体午前中はナタ各地を飛び回っての見回り兼巡回。午後に各部族をまわって経過観察の回診。
 そして帰宅してからその日に診察した竜のカルテの記入と、過去に自分で記入したカルテの見直し。イファはベットから起き上がるのは日が登ってすぐのことが多いのに、ベットに入るのは日が変わってからというのが当たり前だった。

 もう目覚まし無しでのんびりと起きる朝は終わったし、バカンスのような仕事が終わった今、自身のことは二の次だ。
 休暇中に溜まった仕事はいくらでもあるのだ。さあ頑張るぞ、とイファは意気込んでいたにも関わらず、その意気込みは空振りに終わった。
 イファの普段の過剰な働き方をすぐ近くで見ていた彼の後輩や教え子たちが、彼の負担を少しでも減らそうと動いていたのだ。彼の診療所にいた竜たちは一匹残らず彼の後輩のもとで順調に回復していたし、フィールドワークを行おうと思えば先日花翼の集の飛行部隊に合格したばかりの教え子が奮闘していたのでイファは邪魔しないことにした。

 今のナタは平和そのものだ。もう数日ゆっくり休んではどうか、今は彼らの成長のために見守っていてほしい。君のことだ、旅先でも十分には気は休めていないだろう? 今ぐらいはゆっくり休みなさい。という族長ムトタの命が直々に来たとなれば、イファはリゾートへ持ち出した自身とカクークの荷物のアンパッキングぐらいしかすることがなくなってしまったのだ。

「イファ、珍しいな。この時間に家にいるなんて」  
 玄関のノックも軽く、勝手知ったる様子で入ってきたオロルンはイファが自宅にいることにたいそう驚いた。フォンテーヌ旅行から帰ってきたその足で回診に行っていたような男が、リゾートから帰宅した翌日にこうしてのんびりと自宅で過ごしているとはオロルンは思っていなかったのだ。
「俺もそう思うよ、オロルン。って、お前も昼時にうちにくるなんて珍しいじゃないか。昨日こっちに帰ってきたばっかだってのに、まさかまた寝てないのか? ホテルにいたときは昼夜逆転してなかったじゃないか」
「普通に昨日の夜に寝て、今朝起きたよ。ここにきたのはイファ、君の下着が僕のカバンに入っていたからだ」
「うお、まじかよきょうだい。届けてくれたのかありがとな」
「洗濯とかはしていないぞ、昨日の今日だからな」
「別にいいよ」
 丁寧に紙袋に入った下着を受け取ると、イファは洗濯物をまとめている一角に紙袋ごとそれを置いた。
「きょうだい、まじかよ!」  
 ケラケラと笑うように飛ぶカクークに、こら、とイファは嗜めるように言葉を吐いた。それを見たオロルンはある提案を口にする。

「イファ。君は今時間があるようだし、イアンサのトレーニングを今から受けに行ってみないか」
「は? 今から?」





……身体のいろんなとこが痛い
「イファ。君が普段からイアンサのトレーニングから逃げていなければそんなことにはならなかったと思う」
「ああ、俺も旅行の直後じゃなきゃもう少しまともだったと思うんだがな

 結局、イファはオロルンのめちゃくちゃな提案を断れなかった。昼食を食べに行くついでに特別レッスンをつけてもらおう。というオロルンの提案に渋々ながらも乗ってしまったイファは、豊穣の邦の大量の昼食を食べ終わった後待っていましたとばかりに速攻でスタートしたイアンサの筋肉トレーニングにすぐに後悔することになった。
 イファはトレーニングにはなんとかついてはいけるものの、彼は普段肉体的に過度に負担をかけないのだ。
 それは花翼の集いにあるイファの自宅に戻ってからも続いているようで、身体のいろんなところから悲鳴が上がっている。腕はパンパンに膨れているように痛いし、走り込みで酷使した太腿はまだ熱い血液がどくどくと流れて巡回している。度を越えているだろうという回数の腹筋でいじめられた腹は震えているし、それを支える腰だって泣いているように悲鳴を上げている。

 最初から最後までイファと全くおなじメニューをこなしていたはずのオロルンは、桃色のかわいらしいマグカップを片手に飄々としている。モデルとなったイファの同僚の小竜は、早々にトレーニングに取り掛かる二人を置いてライノ竜と遊びに行った。おかげで遊び疲れて帰宅してすぐに彼は寝床に直行した。

「イファ、たのしかったな」
「トレーニングがか? それともバカンスがか?」
「両方だな」
 そういうとオロルンはイファをいたわるように腰に手をまわした。ちゅ、と軽くついばむようなオロルンからのキスを受けて、イファは微笑んで返した。
「俺はお前と違って英雄でも戦士でもないからな、今こうして後先考えず動けているのは嬉しいよ」
「そうか。じゃあまた腰が痛くならないためにも、トレーニングに一緒に行こう」
「っておい待て。あの時俺が腰痛かったの誰のせいだと思ってるんだ。俺が筋力ないわけじゃないからな。……下着だってあの時脱いだやつがお前の荷物に紛れてたんだろ
「それはごめん」
「おー、じゃあ今日はとびっきり優しくしてくれよ」